表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

3021年

作者: なおじ

Diamond Earth


3021年地球は人類によって光り輝く星となっていた。


石油などの資源が尽きる事を恐れ、長年争い奪い合ってきたが

戦争の虚しさにようやく気づいたのだ。


戦車は耕運機に変わり干ばつした荒地を耕した。


石油を原料としたプラスティック製品は3Dプリンターにより

穀物のデンプンを固めたものに変わった。


思いやりのかけらもない核兵器やミサイルもロケットに変わって

『再び月へ』のスローガンのもと世界各国協力し宇宙開発が進んでいた。


人類にとって水分と塩分は必要だが、どれだけ人類が塩分を摂取しても

海水は真水にはならないし海は干上がらない。


資源はそれほど無くならない事にも気がついたので人類は協力し合えたのだ。


2000年代初期に流行したウイルスは環境改善と微生物の研究が進み人類は生き延びた。

当初はウイルスに感染しない子供の唾液から採取した乳酸菌を培養しウイルスに打ち勝ったのだ。


人類にとって名誉より共有が必要だった。


2000年代後期はメタンと水素を合成した人工ダイヤモンド産業が盛んであった。


都心はダイヤモンドの建造物が密集し、ダイヤモンドの移動式道路がびっしりと張り巡らされていた。


また海に浮かぶダイヤモンドアイランドや屋根に使われるダイヤモンドパネルによって太陽光を吸収しエネルギーに変換していた。


原子力発電は便利であったが人類の不安と恐怖を煽り続けた結果、地球上から消滅し太陽光を軸とした自然エネルギー発電が必須となっていたのだ。


一般家庭においてもインターネット上にある様々なデーターをダウンロードしては

3Dプリンターによってダイヤモンドの物体を作ることも可能であった。


乗り物にもダイヤモンドパネルが搭載され水素を分解しながら自由自在に空中を駆け巡っていた。


こうして地球はキラキラと光り輝く惑星となっていたのだ。



Planet Searcher


パーシャルは操縦レバーの上に両足を組み外の景色を見た。


暗闇、暗闇、暗闇


退屈であった。


まれに小さな粒のような光を発見してはレーダーを確認したが反応はなかった。


かれこれ長い時間、月日、年を経て宇宙空間を彷徨っていのだ。


当初はただ惑星を見つけるだけ、見つければ報告しに帰るだけ、今回は少々長旅にはなるが一攫千金、後は任せてゆっくり余生を楽しもうと思っていた。


しかしここまで暗闇が続くとは思ってもみなかった。


このまま暗闇の中で余生とやらと付き合うのかと憂鬱な気持ちになっていた。


前を見ても、右を見ても、左を見ても、上を見ても景色は暗闇。


「くそっ」とつぶやき

自動操縦から手動に切り替えてマックスまでスピードを上げた。


船体は猛スピードで暗闇を突き抜ける。


ごく稀に惑星とも言えない小石が船体をかすめ船内にコーンと音が響いたが

スピードを上げようが暗闇は暗闇であった。


自動操縦に切り替えてリクライニングを全開に倒し両手枕で天井を見つめた。


黒い透明パネル


けらけら笑って惑星が見つかったときの喜びや、家族の笑顔など考え

少しは前向きな気持ちになっていたが


今引き返すと保温機能付き瞬間湯沸かし機のような

すぐに怒りネチネチとしつこくいびる上席の事も考えてしまった。


大きなため息をつき右の窓に目をやるとうっすら自分の顔が写って

なんとなく情けない気持ちになった。


「余裕ですよ」発射前あんなに威切らなければよかった。


同じく暗闇、外は暗闇、うっすら顔。


窓を見つめてあれこれ考えているうちに幼少期の記憶も蘇り

うっすら映った自分の顔が、あの時の母親の残念そうな顔に変わった。


そんな被害妄想を繰り返していると自分自身の劣等感が溢れだし

ついには気が奮って笑いさえも込み上げてきた。


いったいこの暗闇の中で何をしているのだろうか?

ケタケタと笑った。


そもそもこのエリアに惑星なんて存在するのか?

窓に指を刺し顔面を押さえて笑った。


もしかするとこのまま暗闇で余生を終えてしまうのか?

腹を抱かえて笑った。


もう笑う事しか残されていなかった。


しばらくケタケタと笑っていたが真顔になり目を見開いた。


ぼんやりと光る空間を発見したのだ。


「光ありきは惑星ありき」


フロントパネルの望遠レベルを上げてじっくり空間を見つめると

光と影の混じり合う巨大惑星がうっすらと二つ見えた。


更には驚いた事に巨大惑星の背後から、キラキラと光る小さな惑星がゆっくりと現れたのだ。のっぺりとした未生物の巨大惑星はこれまで見てきたが、あの様に輝く惑星は初めて見る。


非常に美しかった。


中央のレーダーを確認すると惑星サーチと表示されていたが、惑星名は全て空白になっていた。


ようやく未確認の惑星を発見できたのだ。


興奮を抑え平常心を保ち、冷静に低速モードに切り替えて

光の方へ経路を設定した。


すごい星に間違いない。



Space Synergy


「おい!プラーク!起きろ!」


プラークは助手席で深い眠りについている。


パーシャルはプラークを揺らして背もたれに何度か叩きつけると

プラークはむくっと起き上がり、両腕を上げ大きなあくびをした。


口角からよだれが溢れ出しシワというシワの溝を伝って

ポトポトと床に垂れ落ちた。


しばらくしてから伸びきった両腕をゆっくり降ろし、そっぽをむけてまた眠りについてしまった。


パーシャルはアシストグリップを強く握って重力装置を解除するとプラークはふわっと浮き上がり、鼾をかきながらゆっくり回転した。


後を追うようによだれも渦を描いた。


重力装置を元に戻すとドスンと助手席に落下し、後を追うようによだれもペトペトと頭上に落下した。


プラークは気怠そうに頭をぬぐってチラッと上を見た。


またもや大きなあくびをし、長く伸びた鋭い爪で目頭にびっしりとこびりついた目ヤニをガリガリそぎ落とすと目ヤニは床に転げ落ち緊急停止ペダルの奥に消えた。


パーシャルはしばらく様子を見ていたがはっと我にかえり


「おいみろ!あの星を!」と窓へ指を刺した。


プラークは窓に目を向け、ぼーっと外を見つめた。


それから中央のレーダーを確認し目を細めて背筋を正した。


近距離スコープを装着しもう一度レーダーを確認した。


スコープをゆっくり外して、また窓に目をやった。


半開きの口のまま


「なんや、あの星は?」とつぶやいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ