絶憎哀愛
最近急に冷え込んで引きこもりやすくなって書く手が止まりませんw
絶憎哀愛、お読み下さい。
「え……本、田……?ち、違……!!お、俺は…!!!」
黒曜命は目を見開いて手を震わせながらナイフを抜き、ヘナヘナと座り込んだ。
同時に理沙が力なく倒れる。
その途端、起こっていることの全てを理解してとてつもない絶望に襲われた。
「理沙ぁぁああああ!!!!!!いやぁぁぁぁあああああ!!!!!!」
「救急車を早く!!!」
先生が急いで救急へ電話している。
倒れた理沙に駆け寄り、必死で起こして抱きかかえた。
「理沙っ!!理沙ぁ!!!」
小揺りすると理沙は半目で返事をしてくれて、少し安堵した。
まだ息はあるようだけど、かなりの出血量が私の制服を赤黒く染めていく。
一刻も早く病院へ行かないとこのままだと……!!!
「私はっ……だいじょぶ、だからっ……!!」
「これ以上喋らないで!!!血が!!」
「華淋を、守れたんなら……それで、いい……の」
ふにゃりと笑ってみせる理沙。
その姿を見た瞬間、言葉にならない感情が涙となり、首を左右に振って否定することしかできなかった。
目の前には自分のした事の重大さと、罪と、計画外のアクシデントで恐怖し震え、呆けている黒曜命がいた。
それを目にした途端、一瞬で感情が暴走した。
「……ない」
理沙を抱きかかえる力が強くなる。
「……せない」
いつも隠して押さえていた自分の中の何かの力の枷が外れる。
「……るせない」
その力に反応した周りの化け物達は、寄ってたかってその感情に便乗し、私に力を注ぐ。
『カリン、怒ってる、すごい』
『あいつ、カリンの大事なリサ傷つけた、許さない!!!!』
『カリンに力、分けないと!!』
『カリン、いっぱい力、分ける!』
「許せないっ……!!!!!」
“絶望”から“憎悪”へと。
「ひっ……!!!!ば、化け物……!!!」
どうやら私の“何か”を感じ取れるぐらいに不思議な力が可視化していて、それに怖気づいている様だった。
でもそんなのどうでもいい。
化け物……??
私はちゃんと人間なのに……!!
どうして、化け物なんて言うの??
さっきまで殺そうとしていた人が、私を化け物だと吼えて。
……人を、私を殺そうとする貴方の方が化け物じゃない!!!
そんな人間なんていらない!
この世から消えてほしい……!!
消えて…!!!
「……黒曜命なんて消えてしまえ!!!!!」
そう口に出した瞬間、集まった不思議な力はバスケットボールほどの大きさの光の塊となり、黒曜命の目の前で大爆発を起こした。
辺りは物凄い爆風が起こり、鞄や帽子、小物類は遥か彼方へ飛ばされたが、人的被害は特になかった。
不思議な力の球が起こした強烈な大爆発で、黒曜命は一言も声を発することもできないまま、その姿は跡形もなく……
死に、消え去っていた。
「……っ!!!」
消えたのにも関わらず、その気は収まらないまま彼のいた場所を睨み続け、食いしばり、流れ落ちる涙を止めることはできなかった。
「か、りん……」
ふと、自分の手元から理沙のか細い声が聞こえる。
先生が救急車を呼んでから約15分程度。もうそろそろついていい頃合いなのにまだ到着していない。
気のせいか、手は冷たいのに手汗があるように感じる。
「理沙……!大丈夫!?もう少しで救急車来るから!!」
「もう、いいよ……。私、多分、……死ぬかな、これ。分か、るの」
「嫌!そんなこと言わないで!!死なないで!!!!生きてよ理沙!!!」
必死に現実を避けようとする私に理沙は涙をゆっくり伝わせながら力なく首を左右に振った。
「ねぇ、聞いて……華淋」
意識が朦朧とする中で右手を私の頬に添え、そしてまっすぐに私を見つめて微笑んだ。
「華淋は、私とは違う…景色が、見え、ていて……所謂、この世に…存在し、ないモノってや…つ?本当、は、気付いてたん、だよ……?それで、私も、見て、みたいっ……て、思ってた、んだ」
「理沙っ……!!じゃあどうしてっ…!!私、理沙が居なかったら生きていけないよ!!」
「大丈夫…だよ、華淋なら、きっと」
「嫌!私も理沙と一緒に死ぬわ!!!」
理沙がいない日々なんて、生き苦しすぎて死んだ方がマシに決まっているのだから……
「………そう言って、くれるの、は、嬉しいけ.ど、華淋は……もっと…自由に、私に縛ら、れないで、生、きてほしい…」
少し目を逸らして照れながら笑いかける。
「華淋の、置かれて、居る状…態は、し、んどいかもしれないっ…けれど、この世、界には…色んな人が、いて、色んなことが、日々起、こるの」
空も見ながらどこか遠い目をしている。
「そう、世界は…広いん、だよっ!悪い人、よりも…良い、人の方が、きっ…と多いと、思うし、きっと、なんでも…できる。」
いつもの明るい笑顔で私の手を握る。
「私の分っ…まで、幸せに、なってねっ…!」
ニカッと笑って涙が一筋……美しくも切なく落ちていった。
「そんな……こと言わないでっ……私にとってこんな辛い世界、どうやってっ…!幸せになるなんて無理だよっ……!」
そう嘆いていると、理沙はくすりと笑った。
「辛すぎるなら、逃げても……いいんだよ?」
え……?今、理沙はなんて…………?
あまりにも意外な言葉が出てきて目を丸くした。
「言った、でしょ?華淋は…もっと、自由でいいっ…て。学校も、家も、どこにいても、辛いっ…なら、華淋の…事を、誰も知らな、い所まで、行っちゃえっ…!」
つまり、それって家出って事……だよね??
「……っ!?」
言い終わると同時に大きく咳き込み、大量の吐血が出て、呼吸がだいぶ浅く荒々しくなっていった。
「これ以上は本当に喋らないでっ!理沙の気持ち、ちゃんと伝わったからっ!!!」
「そっか…よか、った……。でもっ最後にっ……!!これだけっ!!!!」
「な、なに!なんでも言って!なんでもするよ!!」
最後の力を振り絞って、力なく震えた両手を両頬に添えて……まっすぐに瞳を見つめて……
「華淋…………………
大好き……だよ」
満足したような満面の笑みを浮かべたまま、あれだけ話せていたのに、理沙の意識は電池が切れた様に一瞬で落ちた。
「理沙??理沙!?ねぇ!!!しっかりして!!
理沙!!!!理沙ぁああああ!!!!」
先生や他の生徒でごった返していたのにも関わらず、校庭にただ響いたのは理沙を呼ぶ私の悲痛な叫び声だけだった。
後半の大事な所書く時に緊張しすぎて息止めながら書いていたみたいでめっちゃ疲れましたw
閲覧ありがとうございます!