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喧嘩する程、仲が良い?


 更衣室を出ると李紅と奏悟が待ってくれていた。

 「奏悟も待っててくれたの? ありがとう」

 「杏香を待つのは当然だからね」

 「私は先に着替えに行きましたけど、佐藤さんってば杏香と松本先生のやりとりをこっそり見てましたのよ。コソコソしないでもっと堂々としてらしたらいいのに」

 「氷華、うるさい」

 「あら、私はアドバイスをしただけですわ」

 どうやら奏悟も心配してこっそり見守ってくれていたようだ。そのことにお礼を言って三人で教室に戻る。

 険悪な雰囲気になるかと思いきや、李紅と奏悟は互いの琴線に触れないよう言葉を選んでいるようで、毒吐きながらも揶揄を交えて返したりと仲が良いのか悪いのかよくわからないやりとりをしていた。

 被弾したくないので私は大人しく黙っていたが、もし話していいのなら「君達、実は仲良しなんじゃね?」と喋っていたことだろう。ゲームでは恋人同士だったし、本当は相性がいいのだ。

 初めは李紅に目を付けられると思って避けていたが、今では仲良しだし、このままこの二人が付き合ったとして何ら問題はないだろう。

 ……付き合うのかなー。

 そんなことを考えながら教室につき、残りの授業を受ける。

 帰りのホームルームでは相変わらず先生のやる気の無さ全開で締め括られた。そして部活のある生徒は足早に去り、帰宅部の生徒は思い思いの時間を過ごす。

 いつもならすぐに退出する先生は私を見て小さく手招きする。すぐに停学処分の件だなと察しがついて私は先生の元へと向かった。

 先生の前へ行くとボサボサに伸ばした顎髭を撫でながら「大変だと思うが、何かあったら言えよ」とぶっきらぼうに言うと軽く手を振って出ていった。先生らしいと言えばらしい言い方である。

 後方で見守ってくれていた奏悟と李紅に大丈夫だよと手を振り戻る。李紅は鞄を手に取ると席を立った。

 「本当は一緒に帰りたいのですが、これから用事がありまして……先に帰らせていただきますわ」

 「そっか……残念」

 「明日は一緒に帰りましょうね」

 「うん、うん」

 にっこり笑う李紅に頷き返すと隣にいた奏悟が「俺も居るからな」とボソッと呟いていた。

 大丈夫だって、奏悟のことも忘れてないよ。だからそんなやさぐれないでって。

 李紅には見えない背後で奏悟の背中を軽く叩く。奏悟の機嫌を取りつつ、帰る李紅を見送って、私も鞄を持った。

 「帰る前に図書室寄っていい? 新しい本借りたいの」

 「いいよ。人が少なければ宿題して帰ろうか」

 「オッケー」

 二人並んで教室を出る。すでに外からは運動部の掛け声が聞こえていた。授業が終わり、まったりとした時間が流れる。

 果たして私好みの小説はあるだろうかと期待しながら、私達はのんびりと進んだ。

 

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