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あまりよろしくない雰囲気ですね。


 一方、私はといえば、突然の一成の様子に目が点となる。

 「どうしたの一成」

 思わず尋ねると、奏悟は苦笑を浮かべた。

 「同級生に上級生と一緒に登校しているのを見られたくないんじゃない? それか、同級生の前で猫を被った自分を俺達に見られたくないとか」

 その答えになるほどと納得する。

 思春期真っ盛りの一成にも色々思うことはあるらしい。

 「俺達も早めに行って杏香の宿題を終わらせようか」

 「!!」

 その言葉に私はまた忘れていたと、一成と同じくスピードを上げて学園を目指したのだった。

 いつもより早く着いた教室には誰もいない。私は急いで机の中を漁って奏悟の言っていた宿題を取り出した。

 「頑張れ〜」

 奏悟が向かいの席に跨るようにして座り、手元を覗き込んでくる。

 「ちょ、邪魔しないでよね」

 「邪魔してないよ。応援だよ。あ、そこの問題は引っ掛けだから」

 「ええっ?」

 たまに茶々を入れてくる奏悟に文句を言いながらも私は何とか宿題を終わらせることが出来た。

 「やったー」

 「お疲れ〜」

 喜んでいると徐々に廊下が騒がしくなる。登校してきた生徒達がやってきたのだろう。

 隣のクラスの教室のドアを開ける音が聞こえる。その内、うちのクラスにも誰かがやってくる。そう思っていれば、早速、教室のドアが空いた。

 「……あら?」

 入ってきたのは美少女で、友人となった李紅だった。彼女は私達がいることに驚いたようで、足を止めるとすぐに微笑んで挨拶をしてくれた。

 「おはようございます。お早いのですね」

 「おはよう、宿題忘れちゃったから」

 えへへと誤魔化すように笑えば、李紅はあらあらと口元を隠して笑う。しかし、それもすぐのことで、ふと笑みを掻き消すと視線を横へと滑らせた。

 「おはようございます、佐藤さん」

 「ああ、おはよう」

 何故だろう、二人の間に流れる空気が冷たい気がする。

 息を潜めて二人を見るが、数秒もしないうちに李紅はさっさと自席へと着いた。

 その後、特に何か起きるわけでなく、授業も進み、やがてお昼休みとなった。お昼といえば、奏悟の母親から渡されたお弁当である。料理は美味しかったし、お弁当も美味しいだろうと予想はつく。

 早く食べたい。

 しかし、残念なことにお弁当箱の柄が奏悟と一緒なのだ。しかも型は男性が使うような大きめのもの。これが勘のいい者なら、もしかして……? となるだろう。とどめにお弁当の中身を見られれば同じことが判明して、確信するだろう。この二人は同じ弁当を食べるほど仲の良い関係だと。

 クラスメイト達は私と奏悟がただの幼馴染だという関係性を徐々に認識してきているが、急に同じお弁当を食べていると知れば、その認識は覆される。それはいけない。平穏の為にも、なんとしても避けなければならない。

 そこで、私と奏悟は人気のない教室で食べようと席を立った。その時だった。

 「あの、杏香さん。よろしければ、お昼ご一緒にいただいてもいいかしら?」

 手を合わせながら、恥ずかしそうに李紅が申し出てきた。

 

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