シンプルが最強!
部屋へ向かうと、同じく制服に着替えた一成と奏悟が先に座って待っていた。昨日はなかったテーブルが出されていて、その上に朝食が並んでいる。一先ず、一成達に朝の挨拶を済ませ、昨日と同じ並びで座ることにした。
「豪華だねぇ」
私は朝食を眺めてそう言った。テーブルには、野菜たっぷりのサラダにスープ、カリカリのベーコンに目玉焼きとこんがり焼けたパン。冷たい牛乳とデザートの果物にヨーグルトまである。
シンプルな朝食メニューだが、これが一番美味しいのを私は知っている。
早く食べたいなぁと思っていると、奏悟が苦笑した。
「いつもはもっと量が少ないよ。二人が泊まりに来たから、母さんが張り切っているのさ」
「張り切るのは当たり前よ。一成ちゃんと杏香ちゃんなんだから!」
そう言って、スパァンと扉を開けて入ってきたのは奏悟の母親だった。その奥にはビシッとスーツ姿を決めた彼の父親がいる。
「母さん、もうちょっと静かに入りなよ」
息子が苦言を呈しても何処吹く風で、彼女は私と一成に視線を向けた。
「おはよう、二人ともよく眠れたかしら」
「あ、はい。おはようございます」
「おはようございます。布団がふかふかでよく眠れました」
「それなら良かったわぁ」
昨日と同じ位置に二人が座る。奏悟の父親がこちらを見て、ふと笑みを零した。
「二人とも、おはよう」
「おはようございます」
「おはようございます」
挨拶を返していると、母親が手を叩いた。
「そうそう! 二人にもお弁当作ったから持って行きなさい。食べ終わった空のお弁当箱は奏悟に渡してくれたらいいから」
「えっ、そんな悪いです」
突然のことに遠慮すると彼女はにこにこと笑って手を振る。一成にとってはいつものことなのか、「ありがとうございます」とお礼を述べていた。
「良いのよ〜! いつもこの子と仲良くやってくれてるお礼みたいなものだから! いっぱい食べて勉強頑張るのよ!」
ガッツポーズを送る母親の横で、困った様子で父親が口を挟んだ。
「母さん、そろそろ食べ始めなきゃ、皆、遅刻するぞ」
「あらやだ、そうね。それじゃあ、いただきましょうか」
その言葉を待ってましたと、それぞれが手を合わせて朝食を摂ることにした。
朝御飯は非常に美味しくて満たされた。その後、荷物を纏め、身支度を整え、お弁当を渡される。お泊まりセットは佐藤家に置いて、帰りに取りに行くこととなった。
「それじゃ、行ってきます」
「はいはい、気をつけてね」
「行ってきます」
「行ってきます」
「はぁ〜い、行ってらっしゃい」
にっこりと手を振って見送ってくれる姿に、私も一成も手を振り返す。佐藤家を出て、暫く三人で他愛もない会話をしながら行くと、チラホラと他の生徒の姿が見えてきた。
「……俺、先に行くわ」
ぼそりと一成がそう言って足早に歩いていく。奏悟は気にする様子もなく、ただ「車に気をつけてなー」と返しただけだった。