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趣味は呪具作り。


 「呪具?」

 妖が呪具とな。

 私は益々首を傾げる。奏悟は咳払いすると、机に置いてあった小さな箱のような物を手に取った。

 見た目はただの木製の箱だが、内側には細かい模様が描かれていて所々に色が塗ってある。奏悟が持ったままのそれをよく見ると、模様だと思っていたものは小さな字だった。小さな字が隙間なく箱を埋め尽くしている。

 「これは本格的なものではなく、俺が個人的に創作してるものだよ。大体は自身の妖力を上げる物が多いけど……これなんかはまだ未完成だけど、人形の紙と対象者の身体の一部を入れて蓋をする。そして箱の中の小さな結界で閉じ込めて、封印するんだ」

 「封印してどうするの」

 「まだ、その先は練ってないんだよね。人形の紙に対象者の力を馴染ませてそこから力を取り込んで自分のものにするっていうのもありだし、箱に入れる身体の一部によっては楽に対象を殺せるかもしれないよね。でもまだ未完成だから触っただけで術が発動してしまって死ぬかもしれないね」

 「え」

 さらりと出た不穏な言葉に私は固まった。そんな私の様子を見て奏悟は薄らと微笑んだ。

 「なんてね。冗談だよ」

 声は笑っているが細められた瞳は笑っていない。

 なんだこれ。

 薄寒さを感じた私は鳥肌が立った。

 「奏悟、その辺にしとかないと杏香に本当に嫌われるぞ」

 私達の雰囲気なんて何でもないと、一成がのんびりと声を掛けてきた。そのおかげか、張り詰めていた緊張が解れる。溜めていた息を吐き、奏悟を見ると先程の冷たい笑みではなく困ったような笑みを浮かべる彼がいた。

 「うーん、こうでも言わなきゃ、杏香、触っちゃいそうだし」

 「その可能性は否定しない」

 「え、え」

 「ごめんね、怖がらせちゃったね。別に誰かを殺そうとか思ってないし、するつもりもないから。今の俺の技量じゃそんな高度な物作れないし……でも、危ないのは本当だから、不用意に触ったりしないでね」

 戸惑う私の頭を撫でながら奏悟が「怯えちゃって、可愛いねぇ」なんて言って笑っている。

 錆びついたように顔を一成に向けて説明を求めると、彼は可哀想なものを見る目をして答えてくれた。

 「小さい子供が悪さしないように怖ーい昔話や噂話で戒めることが多いだろう? あれと同じで、杏香が興味本位で呪具を触って怪我しないように怖がらせたんだよ。俺は呪具のことは知ってたから大丈夫だけど、杏香は知らないだろう」

 一成の言葉に私は頷いた。ゲームでは呪具のことは出てこなかった……はずだ。曖昧になりつつある自身の記憶を疑うが、今は過去(ゲーム)に拘っている場合ではない。

 「危ないなら初めから言ってくれれば良かったのよ」

 「違いねぇ」

 思わず出た文句に一成が同意する。奏悟は悪びれた様子もなく、ただ頭を撫でるだけだった。いい加減にしてくれと睨み上げたら、にっこりと笑い返された。

 「可愛い、可愛い」

 「変態!」

 羞恥と苛立ちで奏悟に腹パンをした私は悪くないと思う。ほら、一成も無言で頷きながら拍手を送ってくれている。

 私は間違っていない。奏悟が泣きながら蹲っているけど、私は悪くない!

 

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