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覚と、
杏香が先に出て外で待っている中、柚月は奏悟に対して険しい表情を向けていた。
「幻揺の爺なんぞと杏香を会わせてどうするつもりだい」
「……柚月さんも杏香の様子がおかしいことに気付いてますよね。翁なら何かわかるかもしれません」
「あんな得体の知れない爺、私は反対だよ」
ポコポコと怒りを表す柚月に、奏悟はただ淡々とした様子で応えた。
「ですが誰よりも知識があるのは翁だけです。柚月さんもそれをわかっているから、表立って止めなかったのでしょう?」
その言葉に柚月は苦虫を噛み潰したような顔をした。
暫く視線を彷徨わせるが、じっと見詰める奏悟に耐えかねて溜息を吐いた。
「……様子がいつもと変だなと思ってたのは確かだが、あの子が自分から言うだろうと放置していたんだ……言い訳だね、致し方ない。何かわかったら教えてくれるかい?」
「勿論です」
柚月は眉尻を下げて微笑んだ。
「帰りが遅くなるなら山犬の連中に送ってもらいな。あの子を頼んだよ」
「はい」
奏悟は律儀に頭を下げると、玄関の扉を開けた。