表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/176

図書室の前に!


 「あ……」

 金縛りから解けたように、ぎこちなく息が漏れる。奏悟は私を一瞥すると、李紅へと視線を移した。こちらから奏悟が何をしているのかわからないが、李紅はこちらを見るのをやめた。

 「……彼女が危害を加えるとは思わないけど、用心に越したことはないからね。あまり彼女には近付かない方がいい」

 そう静かに言うと奏悟は片手をあげて、じゃ後で、と、自分の席へと戻っていった。

 奏悟の言う通り、現時点で恋人関係ではないから関わり合うこともないだろう。しかし、既に李紅が奏悟のことを好きでいるのなら私の存在は目障りだ。

 「……」

 李紅の本心はわからない。

 ここは様子見かな。先程の李紅の瞳を思い出しつつ、私は溜息を吐いた。

 午後からの授業が憂鬱になってしまったな。

 チャイムを聞きながら、私は教科書を取り出すのだった。


 帰りのホームルームを終わらせて、生徒達はそれぞれ教室を出て行く。李紅も他の生徒と同じように鞄を持って出て行った。それを見届けてから私も席を立つ。

 「さて、本の借り方だったね。図書室行こうか」

 先に準備の出来ていた奏悟が声をかけてくる。

 「あ、待って。お手洗いに行ってくる」

 「わかった」

 「先に行ってて、すぐ行くから」

 奏悟に先に行くよう促すと、きょとんと目を瞬かせていた。

 「待つよ?」

 奏悟にとっては当たり前の選択なのだろうが、流石にトイレに行っている間、待ってもらうのは申し訳ない。

 「大丈夫だから、行ってて」

 今度は奏悟の返事を聞かずに教室を出た。

 きっと先に図書室に行くだろう。お願いだから、そうであってくれ。

 そんなことを願いつつ、教室を出て近くの女子トイレに入る。用を済まして手を洗っていると、誰かが入ってきた。

 丁度、鏡にその人が映ったのでちらりと見てみると、なんと李紅だった。私は思わず息を呑む。彼女に気付かれるかと身構えたが、こちらに気付く様子もなく個室へと入っていった。鍵がかかった音を聞いて、私は急いで手を拭いてトイレから出た。

 先に教室を出たから、もう居ないと思って油断していた。

 まさかここで鉢合わせるとは思わなかったわ。

 私は逸る気持ちを抑えて図書室へと向かった。教えてもらった道順を思い出し、辿り着いた図書室には生徒が数人いて、机に教科書やノートを広げてペンを走らせている。自主学習目的の彼等とは別に、隅の方では静かに本を読んでいる奏悟がいた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ