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ひとりぼっちの晩ご飯。


 「陽が落ちれば、そこから先は妖の領域だ」

 奏悟の言葉に私は息を呑んだ。思わず彼を見ると、奏悟もまた外を見ていた。視線に気付いて彼がこちらを向く。奏悟は微笑むとわざとらしく肩を竦めた。

 「……なんてね。昔ならともかく常に明るい今じゃ居場所なんて無いさ。それより、今日はもう帰ろうか。それとも部活動見ていく?」

 「……帰る」

 一瞬、心臓が跳ねたと思ったら次の瞬間には酷い脱力感が襲ってきた。一体、なんだというのか。もう部活を見る元気なんてない。

 ぐったりと帰る宣言した私は鞄を持って、とぼとぼと教室を出た。後ろから奏悟の来る気配を感じながら、靴に履き替える。フラフラする私を見兼ねて奏悟が手を差し出してきた。特に話すことなく、その手に自身の手を重ねる。

 他人に見られるリスクよりも疲労が優って、そんなことどうでもよかった。

 「……余程、疲れたんだね。今日は宿題も出てないし、ゆっくり休みなよ」

 「うん」

 通りの側にあるグラウンドでは運動部が走り込みやボールを投げたりしている。遠ざかる彼等の掛け声を聞きながら、奏悟に手を引かれて私は帰る。家に着いた頃にはすっかり陽が落ちて暗くなっていた。

 「今日は俺もこのまま帰るから、ちゃんと戸締りするんだよ」

 「うん。ありがとう」

 「……早く寝なよ。また明日ね」

 去り際にしれっと頭を撫でていった気がするが、今の私にそれを気にする余裕はなかった。ごそごそと鍵を取り出して玄関を開ける。

 柚月さんの靴はなく、家の中はとても静かだった。灯りをつけて部屋に入ると、台所にメモが一枚置いてある。その内容は、冷蔵庫に夕飯があるからレンジで温めて食べてねというものだった。

 「……ふぅ、疲れたな」

 少し早いけどご飯にしようと、夕飯を温める。一人きりのご飯はなんだか味気なくてテレビをつけた。番組の切替時期らしく、特番をやっていた。バラエティー色の強い内容だったが、途中のミニコーナーでアイドルが出演しているのを見て、今映っている人が昨日の歌手だと気付いた。爽やか系かと思っていたが、彼の歌う曲は男の色気漂う歌詞で人気があるのも頷ける素晴らしい歌だった。

 本当、イケメンは目の保養になる。

 しばらく堪能した後、食べ終わった食器を洗い、お風呂へと直行した。

 今日は疲れた。上がったら寝よう。

 柚月さんはいつ帰ってくるのだろうか。

 

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