体育の時間です。
校舎を回って終わった気でいたが、まだ午後からの授業が残っている。急いで弁当箱をしまってロッカーを漁ると体操服の入った袋が奥にあった。汗臭くないからきっと未使用だろう。そう思いたい。
何はともあれ体操服が見つかったのだ。これで体育は受けられる。が、その前に座学がある。
その準備だ!
私はロッカーの扉を閉めるとすぐさま席に戻った。
席に着いた生徒達は教師が来るまでの間わいわいと盛り上がる。その中で何人かの女子生徒がボロボロの姿で大人しくしていた。ボロボロの彼女達はあの猛者達である。
奏悟め、いったい何したんだ。授業を受けているから元気なんだろうけど、お願いだから変なことはやめてくれ。
念を送ってみたが彼に届いたかはわからない。そんなことをしている内に教師が来て授業が始まった。
授業は特に問題なく終わり、号令が終わった途端に生徒達はそれぞれの体操服とシューズを持って体育館の方へと向かった。私もまた同じように荷物を持って向かう。
奏悟は私の存在に気付き、荷物を持っているのを確認すると、隣にいた男子生徒に誘われて先に行ってしまった。どうやら同性の友人がいるらしい。当たり前か。幾ら身内にしか興味のない彼でも人付き合いはあるよね。一人納得して皆の流れについて行く。
そのまま更衣室で着替えてシューズに履き替えついて行く。
体育館に入ると女子達は自然とグループになり話に花を咲かせる。流石に彼女達に混ざれないので、目立たない距離でボケっとバスケットゴールを眺めていた。
くっ、寂しくないもの。でも早く授業始まってくれ。あと二人一組とかなりませんように。
願いが通じたのかチャイムが鳴り教師がやって来る。
「はーい、お前等並べー。今日は立花先生がお休みなので、女子も一緒にやりまーす」
痩身の若い男性が笛を鳴らす。どうやらこの人が先生で、普段は男女わかれて二人の教師がついているようだ。
女子と一緒に体育を受けられると知って、一部の男子からは歓喜の声があがる。一方、女子からは嫌ぁーという声と先生今日もカッコいいよーという声があがった。
私はと言えばどこに並べばいいのか、うろうろしていた。最終的にチラッチラッと来る視線と、名前順から見て私のところだろう空き場所を見つけて並ぶことが出来た。
不審者に思われてなければいいんだけど。早く慣れたいものだ。
生徒全員並んだのを確認した先生はピピッと笛を吹いた。