体育館と更衣室。
「冗談はこれくらいにして、食べ終わったら更衣室の場所とか実際に回ってみようか」
どこからが冗談? と言いたくなるのを抑えて私は最後の一口を食べて急いで弁当をしまう。因みに奏悟はとっくに食べ終わっていて待っていた。
弁当箱を戻す暇はないので教室には戻らずに持ったまま廊下を歩く。窓からは低い大きな建物が、今いる校舎と屋根付きの細道で繋がっているのが見える。私の視線に気付いた奏悟もまた同じ建物を見ながら言った。
「まずは更衣室と体育館だね。今見えてるのが体育館。今日は体育館であるからシューズ持って履き替えてから入ってね」
「シューズ? というか、私の体操服って」
「んー……あるとしたら教室のロッカーかな。なければ先生に言って見学してもいいし、下に体操服のズボン履いていればブラウスとズボンだけでも出られると思うよ。何人かそれで体育出てた人いるし」
話を聞く限り、どうやら規則は緩いようだ。
廊下を曲がると先程見た体育館へと繋がる道が現れる。そのまま私達は体育館へと向かった。
「教室の横の廊下にシューズ入れた袋がぶら下がっていたでしょう? あれが体育館で履く用だから、自分の出席番号にぶら下がってるシューズ持って行ってね」
「わかった」
奏悟の言うように、教室を出た廊下の端に名前の書かれた袋が一列にぶら下がっていたのを思い出す。
なるほど、あれはシューズだったのか。
体育館に着くと、中に入る前に左右の横に通り道があった。奏悟は中に入らず、その横の道を指し示す。
「さて……まずは更衣室だね。男女で左右わかれているから間違えないように。全学年共通で使うから忘れ物とか注意してね」
「オッケー」
横道はどうやら更衣室に繋がるらしい。女子の方をそろっと覗いて見たら木製の棚があるシンプルな作りだった。
若干の薄暗さを感じるが、掃除された綺麗な場所だと思う。ふむふむと確認して奏悟のもとへ帰ると、すぐに次の説明に入った。
「体育館がこっちなんだけど、入る直前でシューズに履き替えてね。脱いだスリッパは出入口の横に並べて。細かいことは皆の動き見てれば大体はわかると思う。よし……時間もないし次行こうか」
私が頷いたのを確認すると奏悟を先頭に再び道を通って校舎に戻る。
玄関口付近を通り少し行くと職員室の札が立て掛けられている場所に出た。