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神頼み!


 さて、私の心が荒む原因に終止符を打ったのは、このクラスの担任の教師である。

 「席に着けー。朝礼すんぞ」

 顎髭を生やした中肉中背の男性が出席簿片手に教室に入る。瞬間、鋼メンタルの猛者達が蜘蛛の子を散らしたように去って自席に着いた。やはり猛者でも教師に目をつけられるのは嫌らしい。

 席が一つだけ空いているが、誰か休みなのだろうか。

 先生は特に気にすることなく、号令の挨拶をし、出席確認した後は今後の予定を話していく。

 ふむ、聞く限り直近のイベント等は無いようだ。暫くは学園での状況整理に費やせる。

 連絡事項が終わればそれ以上話すことはなく先生は号令を出して退出した。あっさりな性格の先生だな。

 そして厄介者が居なくなったと猛者達が再びイケメンに群がっていた。塩な奏悟の何が彼女達を突き動かすのだろう。

 猛者達すごい。

 私は黒板の横にある小さな縦長の黒板を見た。そこには今日の時間割が書かれている。

 うっ、数学がある。大丈夫かな。

 一限目が始まるまで私は教科書やノートを読み漁った。予習大事。

 杏香は普段から置き勉していたようで、大体の教科書とノートが机の中に入っていた。そして、きちんとノートをとるタイプらしく、重要な箇所は色付けされている。計算式や図式も綺麗に書かれていて、果たしてこの完璧なノートに私は同じように続きを書けるのか不安になった。

 しかし、その前に勉強が出来るかどうかだ。

 どうか授業中当たりませんように……!

 もはや努力を諦め神頼みの域に入った私は、開始のチャイムが鳴ると息を殺して存在を消した。

 私は空気。私はいない。だから見逃してくださいお願いします。



 必死の願いが通じたのか、一限目は無事に終わった。しかし、乗り切ったぜと安堵する暇なく次の授業の予習に入る。

 奏悟?

 あの人なら猛者達に囲まれて身動きが取れないよ!

 まさか彼がここまで人気とは思わなかった。いや、イケメンだし攻略キャラなのでモテモテなのは予想してたけども。

 わからなければ都度訊けばいいと考えていたが、どうやら一人で乗り越えなければならないようだ。幸い、数学の内容も今予習している内容も難しいものではない。

 当てられて答えられるかは別として、一人でも問題無さそうなので私は黙々と教科書を捲った。

 因みに、教室に着いてから私に話しかけてくれた人は一人もいない。

 くっ、私も友達一人くらい欲しい……!

 でも今は勉強だ!

 現実とは常に悲しいものである。

 脱ぼっちの為にも私は四限目まで頑張ったのだった。

 

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