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自覚した心。


 飼い猫の衝撃発言で私は言葉どころか思考も止まった。

 「あら……この言い方は良くなかったかしら。まぁ、つまりは人で言うところの恋する乙女と同じようなものだと思いなさい。貴女、気付いてないようだったけど、その雄のこと話す度にはつ……いえ、乙女のように顔を赤らめていたのよ…………て、大丈夫かしらぁ〜?」

 目の前で私の生存を確認する小瑠璃の声が聞こえるが、今の私はそれどころじゃない。


 好き?

 私が?

 陸を?

 好き??


 「嘘よ……」

 思わず出た言葉は弱々しかった。

 「嘘じゃないわ。自覚していなかったのなら、戸惑っても無理はないけど」

 「でも、待って、そんなことあり得ないって」

 「ふぅん? なら、その雄が他の雌に取られていいの?」

 その言葉を聞いて脳裏に浮かんだのは会食の時のことだった。

 陸に胸を押し当てていた女を見て感じた苛立ち。その男の隣に立つのはお前ではないと思った。


 陸は渡さない……!


 私のものですらないし、陸に対して失礼だが、それでも心の奥底では思ってしまった。

 陸とキスした時、嫌な気持ちにはならなかった。一成の父親の時は触られただけで気持ち悪かったのに。


 好き……なのかな。

 好き。

 私は陸のことが、好き。


 そう思うと不思議と受け入れることが出来た。

 「そっか……好きなんだ……」

 「そうよぅ」

 「あ……でも……私は別の人格に変わってしまうから」

 「それがなんだって言うのよ。恋することは悪いことじゃないわ。けど、後悔しないようにしなさい」

 小瑠璃は喉を鳴らして頭を擦り付けてきた。

 「例え今の下僕と真反対の性格になっても、下僕は下僕よ! 下僕が困っていたら助けるのも主人の役目! 何でも言いなさい!」

 「……ありがとう、コーリ」

 温もりが優しくて思わず涙ぐんでしまう。

 一頻り擦っていた小瑠璃は満足したようで離れていく。

 ふと息を吐き出すとこれから先、どうしようかと色々なことが駆け巡る。

 とりあえず私の将来は置いといて、今は一成のことだ。結局、父親からお金を得ることが出来なかったので、彼の生活は苦しいままだ。

 それをふとぼやくと、小瑠璃が首を傾げた。

 「なぁに? お金が入りようなの?」

 「うーん、まぁ、そうだね。一成の母親からお金が送られることもあるみたいだけど、毎月じゃないし、額も少ないみたいで」

 「ふぅん……それなら今度、私のもとに連れてきなさい」

 「え?」

 「普段なら絶対しないけど、下僕の大切な幼馴染なら私の加護をあげてもいいわ」

 「加護って……」

 何だったっけと思っていると、小瑠璃は私の懐目掛けて飛び込んできた。

 反射的にその身体を受け止めると、前足を肩に乗せてくる。

 「忘れたのかしら。私は幸福を呼び込む者として修行したのよ」

 そう言うと、小瑠璃の顔が近付いて互いの鼻先がちょんと触れる。


 そう言えば、運気上昇でお金が沢山手に入るんだっけ。


 バイト代とは別に、恋人役をしたことの臨時収入もあったし、効果はあるのかもしれない。

 

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