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作戦を練る。


 「うーん」

 どうしたものかと唸っていると奏悟が言いにくそうに口を開いた。

 「杏香は一度、一成の父親と会っているんだよね」

 「うん、そう」

 「俺は男だから行っても警戒されると思う。一成は勿論ダメだし、ここは面識があって女の子の杏香が適任だと思う……非常に不本意だけど」

 「どういう意味よ、それ。喧嘩売ってる?」

 思わず半目になって睨みつけると奏悟は慌てて否定した。

 「違う違う! 杏香を危ない目に合わせるかもしれないと思うと、自分で言っといて賛成出来ないというか……でも現状、これしか良い案がないからどうしようも出来ないというか……」

 奏悟の中では葛藤が起きているらしい。まあ、それもそうだろう。彼が提案したのは要は一成の父親に私が色仕掛けとまではいかないがそれらしい行動をして油断させ札を貼ってくるというものなのだから。

 しかし、挨拶時でさえ喋らなかったガードの固い男だ。果たして上手くいくのだろうか。

 私の心配が顔に出ていたのだろう。翁がふぉっふぉっと笑った。

 「今の化粧というのは整形級と言われるのじゃろう? 彼奴の好みそうな顔に化粧をすれば引っ掛かるじゃろうて」

 「ええー……」

 そんな上手くいくのかとか、誰がその整形級のメイクをするのかとか、色んな不満を込めて翁を見たがあっさりと躱されてしまった。

 結局、一成の母親の顔を参考にメイクはお母さんに習うことにして、私は来たる日に備えて奏悟と翁と一緒に入念に計画をチェックした。

 そして最後に。

 それまでずっと黙って、茶菓子にも手をつけていなかった一成に確認した。

 「一成、本当にいいね?」

 「……ああ」

 一成は顔を上げて私達を見た。

 「杏香」

 「何?」

 「俺の父親だからって遠慮することはねぇ。もし襲われそうになったら股間を蹴り上げろ」

 「わ、わかった」

 実の息子からの許可を得て、私達は津雲仁義を捕らえる計画を改めて確認した。


 まず、翁の力により、津雲仁義が一人になる時刻と場所を未来視する。その視た結果から、私は彼のいる場所まで行き、待機しなくてはならない。

 そして彼にわざとぶつかり、接触を試みるのだ。

 もし彼が私のことを覚えていれば話しかけやすいが、覚えていなければ私から彼をナンパしなければならない。断られても、最悪、人目のない場所まで誘導出来ればい。勘付かれないように札を貼ることさえ出来れば、私の役目は終わりだ。

 私達の住む町と天馬の会社の距離は遠いので、帰りは私もまた翁から貰った札を使って異空間へと行くことになる。奏悟と一成、翁とはそこで落ち合う予定だ。


 最後まで奏悟が一緒に着いていくと言っていたが妖の気配が濃く、気付かれてしまうと翁から容赦なく却下されていた。

 そして翁の視た未来によれば、二日後の夜に残業で一人帰るところが狙い目らしい。

 それまでに私はメイクの技術力を上げなければならないが、やるしかないだろう。

 

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