お土産選び!
可愛らしい魚やイルカ、アシカのショーを堪能した私はお昼の出来事などさっぱり忘れて楽しんでいた。
陸の奢りでペンギンがモチーフのケーキを食べて、私は更にご機嫌になる。
「君が楽しそうで何よりだよ」
余程笑顔だったのだろう。私の顔を見た陸は頬杖をついてそう言った。
「陸は楽しくない?」
「いいや、楽しいさ。嬉しそうにアシカに手を振ってる君を見て、もっと楽しくなった」
小さい子に混じって、はしゃいでいたのをばっちり見られていたらしい。
私は顔を真っ赤にして、誤魔化す為に残りのケーキを頬張った。
クスクス笑う陸が恨めしい。しかし、ここで意地を張ってもつまらないだけだ。
さっさと気持ちを切り替えて、店を出た私達は隣にあるお土産コーナーへと足を運んだ。
棚に並ぶのは人気のお菓子や普段使いに良いペンやコップ、可愛いキーホルダーもあった。
「俺は灰藤達に渡すお菓子を見てるから、杏香も好きなの見てきたら?」
「わかった。じゃあ、あっち見てくるね」
そう告げて奥にある文具の棚を見た。せっかく来たのだ。奏悟達にも何かお土産を買っていきたい。
うーん、お母さんと自分用にお菓子を買うとして、皆は何が良いんだろう。あ、眞紘もお菓子の方が良いかな。いつもお菓子食べてるし。日持ちのしそうなクッキーとかにしよう。
……一成もお菓子が良いのかなー。イルカのイラストがあるペンやノートを持っていても嫌がるだろうし……。
やっぱり男の子だもんね、格好いいのがいいよね。と、なると奏悟もお菓子とかの方が良いのかな。
じゃあ、李紅には……。
彼女の嬉しそうな表情を思い浮かべながら商品を眺める。ふと目に入ったそれを私は手に取った。
小さなペンギンのぬいぐるみが付いたキーホルダーだ。派手では無い分、色んな物に付けられるだろう。
鞄とかに良さそう!
ペンギンのきゅるんとした瞳が可愛くて私はこれを買うことにした。
可愛いなぁ、私も欲しいから自分用にもう一個買っちゃおうかな。
色違いのペンギンをもう一つ手に取り、私はお菓子コーナーへと戻った。
「お、もう選んだのか?」
「うん」
私に気付いた陸が此方に寄ってくる。彼の持つ買い物カゴには幾つかのお菓子が既に入っていた。
「可愛いペンギンだな」
私の持っていた存在に陸が気付き、褒めてくれた。
「そうでしょう。学園の友達に渡そうと思って」
「へぇ、そいつは良い。その娘もきっと喜ぶさ」
陸の言葉に無言で頷き返す。
李紅の喜ぶ姿を想像しつつ、私はお菓子を選んで、精算を済ませると陸と共にお土産コーナーを後にした。
「それじゃあ、そろそろ帰るとするか」
荷物持つぜと、スマートに紙袋を奪っていった陸は空いている手で私の手を握ってきた。
……奏悟といい、陸といい。何故、男共はこうも自然に手を繋いでくるのか。
慣れてしまった私は荷物を持ってくれたお礼を言って、ゆっくりと風景を楽しみながら歩いた。