チーム分けは大事です!
眞紘との一件があった後、彼女との距離は零に戻った訳だが、すぐに元通りとなった。いや寧ろ前よりも仲が良くなったのかもしれない。
「はぁい、杏香ちゃん、あーんして?」
「いやいや、自分で食べれるから」
「んもぅ、冷たいんだからぁ! えい!」
「むぐぅ!」
眞紘は自分用のお菓子を私に食べさせようとすることが増えた。拒否すれば隙をついて口に突っ込んでくるので最近は大人しくいただいているが、こうも頻繁にされてはそろそろ太りそうで困る。
「あらあら、眞紘ったら。随分と杏香さんに懐きましたわねぇ」
「はわわっ、もしや李紅さまヤキモチ焼いちゃった? 眞紘、李紅さまが一番だよ??」
「はいはい。程々になさいね」
「李紅さまが冷たい! でも好きぃ〜!」
戯れる女子二人を見つつ、奏悟はこっそりと私に聞いてきた。
「神崎と随分仲が良くなったね?」
「んーまぁ。色々と話し合って、ね」
「ふぅん」
何か言いたげな視線を寄越してきたが、あの日の眞紘とのやりとりは誰にも言うつもりはない。それを悟ったのか、奏悟はそれ以上言ってくることはなかった。
購買で買ったジュースを飲みつつ未だに戯れる二人を見ていると、奏悟がふと声を上げた。
「そういえば、今度の球技大会、出る競技決めた?」
「何の種目があったんだっけ」
「バスケと卓球とバレーボール」
「卓球がいいなー」
「卓球は多分希望者が多いよ。皆、楽したいから」
「ええー」
そんな会話をしていたら聞いていたらしい李紅達も混ざってきた。
「でしたら、バスケかバレーで出ませんか?」
「いいなぁ。クラス別じゃなかったら眞紘も一緒になりたかったぁ」
「氷華と一緒のチームだと優勝間違いなしだな」
「あら、佐藤さんだって、貴方がいれば男子の部優勝は確実ですわよ」
「……いいなぁ、二人とも運動神経よくて」
李紅からのお誘いは何とも魅力的だが私が同じチームだと足を引っ張るだけだろうとやんわりとお断りした。それでも李紅は私の分もフォローすると言ってくれたが、余計に申し訳なくなり、やはり断った。
「やっぱり卓球かなぁ」
ぼんやりと希望を口にするが、やれるかどうかはわからない。もし駄目だったら一緒にチーム組みましょうと言う李紅の笑顔が今だけは恐ろしいものに見えて仕方がなかった。
そうして、気怠げな担任の進行のもと、球技大会のチーム分けはなんとか卓球を捥ぎ取ることが出来た。教卓から自席に戻る際に見た李紅の表情はなんとも不満げなものだったが、致し方ない。
これも運命なのだと私はにっこりと笑った。覚の力を使い奏悟の協力を得たチーム決めだが、運命と言ったら運命なのだ。不正じゃない。
「卓球は男女混合なんだね」
「そう。だから一緒に出れるよ」
頷く奏悟もまた同じく卓球チームだった。楽したい同盟を組んだ結果、こうなったのだ。
本当は李紅も誘おうかと思ったが、本人が意外とやる気を見せていて、しかも彼女の運動神経を知っている運動部の女子達が是非うちのチームに来てくれと懇願していたので奏悟と共に大人しく見守っていたのだ。結果、李紅はバスケットボールのチームになった。
その日の放課後、李紅に文句を言われたのは言うまでもない。
ごめんて、そんなに怒っても可愛いだけだから。絶対、応援しに行くからと言えば李紅は大人しくなった。
かわいい。