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女王様な猫。


 放課後、李紅は急いで帰らないといけないと言って先に帰ってしまった。残された奏悟と一緒に帰ろうと校舎を出て歩いていると、ブロック塀の上から猫の鳴き声が聞こえた。

 にゃおおん。

 「ん? お、珍しい」

 「あっ! あの時の猫!」

 塀の上にいたのは、学園にいたハチワレだった。二つの尾をゆらゆらと揺らし、小瑠璃はシャーッと威嚇する。

 「猫って言うんじゃないわよ!」

 普通の人なら喋る猫に驚くが、ここにいるのは私と妖である奏悟しかいない。彼は驚く素振りも見せず、小瑠璃を眺めているだけだった。

 「猫又が表に出てくるなんて珍しいな」

 「ふん、お前は覚の小僧か。お前に用はない。去れ」

 「随分と上からな猫又だな……」

 妖から見てもこの子の性格は問題があるらしい。

 どうしたものかなと思いながら、奏悟に今日の出来事を話した。

 「教材を持っていく時に外廊下を歩いてたら出会ってさ。なんかよくわからないこと言って、私を下僕にするとか言ってきたんだよね。授業が始まるし、無視して行ったんだけど……ついて来ちゃったみたい」

 「へぇ」

 「聞き捨てならないわね、娘。それだと私が寂しくてついて来たみたいじゃない」

 「違うの?」

 「違うわよ! 私を無視するとどんな恐ろしい目に遭うか、わからせに来たのよ!」

 フーッと息巻いて、耳をイカのように低くする姿に困惑する。

 悪かったとはいえ無視しただけでここまで恨まれるとは思わなかった。

 えぇ……と困惑する私の横で奏悟は「猫又に好かれたねぇ」とのんびりしていた。

 「恐ろしい目に遭わせると言っても所詮は猫又だからねぇ」

 「はぁ!? あんた私を馬鹿にしてるわけ!?」

 「事実だから」

 「たった十そこらしか生きてない小僧が!」

 「知識はあっても猫の身体じゃあねぇ」

 「どうやら餓鬼にはこのぷにぷにの肉球の良さがわからないようね!」

 「うーん、常にはいらないかなぁ」

 「きぃーっ!!」

 身体中の毛を逆立てる小瑠璃に対し、わざとなのか無自覚なのか奏悟が煽っていく。ハラハラとそれを見守る私だが、急に小瑠璃がこちらを見てきた。

 「埒があかないわ! 娘、もう一度機会をあげる。私の下僕になりなさい!」

 「いや、無理です」

 速攻でお断りしたら、ついにキレた小瑠璃が飛びかかってきた。

 「なんで断るのよー!!」

 伸びる肢体を見て、このまま行けば顔面に当たるだろうと頭の隅で考える。しかし、突然のことで身体は動かず、ただ小瑠璃が迫ってくるのを眺めるしかなかった。

 飛び出た爪が突き刺さる。そう覚悟した時、横にいた奏悟がスッと腕を伸ばしてきた。

 「!!」

 二の腕を掴まれて引き寄せられる。身体が半歩ずれたことにより、襲いかかる爪から逃れることが出来た。

 標的を失った小瑠璃は見事着地を決め、恨めしげにこちらを見上げてくる。

 「避けるなんて卑怯じゃない!」

 「いや、避けるだろ」

 「あんたは黙ってなさい! もうっ、もうっ、なんで下僕になってくれないのよ。私の下僕になれば、毎日私の身体を撫でることが出来るのよ。私にご飯をあげることが出来るし、一緒に寝ることだって出来る。わ、私の身体の匂いを嗅ぐことだって許されるのよ!?」

 言葉だけ聞くと変態行為だが、その行動に私はふと思い当たった。

 

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