27.サキュバスの視せる夢。
「ここは……どこでしょうか?」
伯爵令嬢アリエスがふと気がつくと乳白色の霧に包まれた、幻想的な場所にいた。
辺りを見渡していると、霧の向こうから人影が近づいてくる。
果たして、その人物はアリエスがよく知っているクラスメイトであった。
「モアーズさんではないですか。ごきげんよう」
霧の中から現れたのはモアーズという名のクラスメイトの少女。
その姿は一見普通の人間に見えるが、その美しさと色気が尋常でないことから、この世界の住民ならば直ぐに彼女はサキュバスという種族であると見抜いてしまうことだろう。
アリエスの透き通るような肌とは対照的な褐色の肌とくるくるとナチュラルにカールする銀色のショートカーリーヘアの彼女。
彼女の褐色の肌はバターを塗ったかのようにどこまでも滑らかそうで美味しそうだ。
特に、ショートパンツからむき出しの生足は堪らない。
アリエスは自分も女性なのにも関わらず、なぜかゴクリと生唾を飲み込んでしまった。
「アリエス様、ごきけんよう」
優しげに、にこり、とあいさつを返してくれるモアーズ。
そのまま、アリエスの向かいに腰掛ける。
(――あら、私は座っていたのでしたっけ……?)
思考がまとまらない。
何かに考えることを邪魔されているかのような、そんな感覚がある。
(――もしかして、何者かから魔法による攻撃を受けている?)
困惑しながらも、それを顔に出さないようにするアリエス。
目の前のモアーズに、アリエスも微笑み返す……。
◇
「……なるほど。アリエス様は転生者でいらっしゃいましたか」
ドキッ
モアーズがアリエスの誰にも話したことの無い秘密を口にした為、アリエスの心臓が波を打った。
「何のことかしら。私、存じませんわ」
平静を装うアリエス。
モアーズはそのまま優しく微笑んでいる。
「ボク、不思議だったんです。ボクの――サキュバスの《魅惑》が女性に、どうして効果があるんだろうって」
「こ……効果?」
モアーズはいったい何のことを言っているのだろう。
でも、とても胸がドキドキしている。
モアーズがテーブルに両肘をついて、手を組み、あごをのせる。
豊かな胸がテーブルの上にのる。
(――このテーブルはいつからここにあったのかしら……?)
アリエスに微笑みかけるモアーズ。
魅惑的な目から、胸から、褐色の肌から、美味しそうな唇から、目がそらせない――――。
「アリエス様は、ボクと同じ、日本からの男性の転生者だったんですね」
(――えっ?)
秘密を言い当てられたアリエスは、思わず思考を停止させる。
目の前に座るモアーズはアリエスにただただ優しく微笑み続けている――――
第二部開始しました。
気まぐれ更新予定です(汗)




