23.決戦!(4)
前回の出来事: お互いに接近戦を望み、剣を持つ。
――人類社会が宇宙に進出し、大きく三つの陣営に分かれた今の時代を、後世の人々は『三国時代』と呼ぶだろう。
現代、ウァーン共和国、イェーヘン連邦、アィーヒ帝国の主要三国は、戦争や紛争でお互いに不要な殺戮や民間人の殺傷を防ぐ為、お互いを強力に監視しあう協定を結んでいた。
その協定を三国協定と呼ぶが、この協定には強制力があり、協定違反した国と違反の当事者には、どこからかともなく違反の証拠が示され、強い権限で罰が与えられると言われていた。
三国協定の下には複数の細かい条約が定められている。
その内、宇宙空間での戦闘方法について決められている条約の1つに『大量破壊兵器及び殺戮兵器禁止条約』という条約がある。
この条約により、宇宙空間での巨竜機人同士の戦いは、この条約に抵触しない素手や剣、弓や単発のライフル等を持って行なわれる――。
~戦闘モード×3 残り15秒~
アリエスは接近戦をアピールする為に、一度手にした剣をアイテムボックスに収納する。
直接、双子エルフの顔は見えないが、おそらく困惑しているに違いない。
無手のまま、巨大ロボットは『巨竜機人』に突っ込んでいく。
~戦闘モード×3 残り10秒~
アリエスの視界の隅で非常にゆっくりとしたカウントダウンが始まっている。
それは、現実世界では、たったの残り10秒である――が。
「『次元縮地』! ン゛ァっっン♡」
――オリジナル技の名称はアリエスが前世知識により付けている。
『縮地』とは、アリエスの前世に於いては、中国の仙術、又は日本の古武術等の、一気に距離を縮める移動技の名称である。
アリエスは『次元八艘飛び』と区別されるべきであると主張して別の名で呼んでいるが、巨大ロボットとしては、その違いはまだ理解できないところにある。
アリエスは近距離での移動技『次元縮地』を繰り出し一気に距離を詰め、流れるように次の技に移行する。
「『次元抜刀術』!」
アイテムボックスから取り出した時のスピードと、取り出す直前まで剣の軌道を敵に認識させない技である『次元抜刀術』。
敵の『光の剣』に己の『黒の剣』を力任せに叩きつける。
「これで決まりですわ」
勝ちを確信した様子のアリエス。
――『恒星剣』はかつて宇宙に存在した『恒星ジュリス』を神の鍛冶師が圧縮・錬成して一本の剣に仕上げたといわれる『神剣』。
剣身に注いだ魔力量に比例し、剣の質量が増していき、最高質量は星1個分に及ぶという。
巨大ロボットの膨大な瞬間魔力を込めた『恒星剣』で、相手の持つ武器を力任せにへし折り、そのまま敵本体まで叩き斬る、又は叩き潰す――アリエスは短い初回講習の訓練中に、恐ろしい戦い方を編み出していた。
アリエスはこの技で初回講習の近接戦闘を、接近戦に持ち込めば間違いなく無双してきたし、神代のチート技を止めるものは、現宇宙には存在しないといえるだろう。
近接戦闘にさえ持ち込めば、一撃必殺。
そう確信している。
即ち、近接戦闘で自身の剣を止められる姿はイメージ出来ていなかった。
しかし、その剣は止められる。
「なっ、どうして!?」
『恒星剣』ではなく、巨大ロボットの腕に、植物の蔦が巻き、剣が振り下ろせないまま。
この瞬間、アリエスのプランは破綻する。
「し、植物魔法!? ドラグヌフ、抗魔法はどうしたのです!?」
「分析開始――完了。隠蔽魔法ト、多重ノ抗々魔法ノ存在ヲ確認」
「植物魔法に隠蔽魔法と多重抗々魔法の合わせ掛け……そんな繊細さが求められる高度な技を巨竜機人戦に?」
~戦闘モード×3 残り0秒~




