14.提案。
前回の出来事: 魔力スキャンされまくった。
長い時間を掛けての魔力スキャンが終わり、やっと解放されたアリエスは、息も絶え絶え、半分涙目、なぜか着衣が乱れている。
「や、やっと終わったのですね」
「魔力スキャンガ完了シマシタ」
「――確認シマシタ、搭乗者データベースニ一致スルデータガアリマセンデシタ」
「ロックノ解除ガデキマセンデシタ」
「あ、やっぱり、だめですのね。やはり……搭乗者登録なんてされているはずないと分かってましたわ」
「因みに、新規で搭乗者登録する方法はあるのですか?」
「管理者権限ヲ持ッテイル人物ニ依頼シテクダサイ」
「なるほど、お手上げかもしれませんね……」
ギブアップして、この無機質な男性の音声の持ち主(恐らく巨大ロボットのAI)に操縦席の出入口を開けてもらい、この巨大ロボットから降ろしてもらおうと考え始めたアリエスだったが、そこで男性AIが提案してきた事とは――――――。
「……貴女ハ吸血鬼族ナノデ、ワタシノ血液ヲ吸ッテ下僕ニシテシマエバイイノデハナイデショウカ」
「ふぇあっ!?」
(血を吸って、下僕にするですって?)
巨大ロボットの血液を吸って下僕にするという、アリエス自身が思いつきもしなかった解決法を提案される。
「私ノ血液ハ竜血カラ生成サレテイルノデ、ソンナニ不味クハナイト思イマス」
「ふぇえっ!?」
竜血の『竜』とは、この世界においてかつて最強を誇っていたが、現在は絶滅したと言われている、あの伝説の竜の事だろうか。
(生き物由来だから、飲んでも大丈夫……? それに機械でも下僕にできるんだ。吸血鬼族って……)
「久々ノ搭乗者候補様デス。ドウゾ、私ヲ貴方ノ手下ニシテクダサイ。座席ノ背モタレ部分、頭部ノ下アタリ、ソウ、ソノアタリ、首筋ニ相当スル辺リノ皮膚ガ薄クテ、血液ガ吸イ易イト思イマスヨ」
アリエスは、無機質な男性AIの音声に従って、鱗がとても薄くなっている部分を探り、歯を立てようとしていた。
「私の牙で、穴を開けてしまったら、貴方のオイルが漏れっぱなしになってしまいませんの?」
「スグニ自動修復サレマスノデ、ゴ安心クダサイ。」
「そ、そんな機能が? ――そうなのですか。とても高機能ですのね」
アリエスは、代替行為ではない、吸血鬼人生初の『本当の吸血行為』を、巨大ロボットに対して行なおうとしていた。
……実は吸血鬼族にとって、『吸血』とは、食事を取ると同時に、性的な意味合いをもつ行為でもある――という事実をアナタはご存知であろうか。
アリエスはその事実を誰からも教育されていない。
何も知らない無垢な吸血鬼族の少女(14)が、巨大ロボットに唆されて、『初めての吸血』を行なおうとしている。
(――何だろう、体が熱くなって来た……)
頬を真っ赤に染め、自らの座る座席に向き合うアリエス。
「ゴクリ」
無機質な男性AIの音声が何故か喉を鳴らした。
吸血鬼族の少女は、幸か不幸かそれらの事実を知らず気付かず、コックピットの座席の首筋付近に、白魚のような指を這わせ、穴を開けてしまう場所を探りながら、少女のものとは思えない色香を放ち始めた唇を、寄せていく――――