13.魔力スキャン。
前回の出来事: 巨大ロボットの操縦席に閉じ込められた。
「え? 私、開じこめられてしまいましたの――――?」
「***** ***********」
「えっ、えっ、何ですの?」
閉じ込められたことで軽くパニックに陥っているところに、突然何者かに未知なる言語で話しかけられてしまい、より焦ってしまうアリエス。
それは、巨大ロボットから出ている自動音声の様だが、アリエスにとって初めての言語だった。
「%%%%% %%%%%%%%%%%」
「あっ、全然、分からないですわっ」
先ほどとは違う言語のようだが、これも理解不能だ。
こういう時、転生者であるのに、『言語理解』のスキル持ちでない自分を恨んでしまう。
「#%V+&A% $%B&N%#&X$%Y#」
「すみません、ごめんなさい、分かりませんっっ」
だんだんと申し訳なくなってくるアリエス。
「座席ニ着席シテ、搭乗者ノ認証ヲ行ナッテクダサイ」
「あっ、分かりました。『座席に着席して認証』すれば良いのですね」
どうやら、こちらの理解できる言葉を探っていたようだ。
(それにしても、『宇宙標準語』から調べればいいですのに。――というか、私の返事から、分からなかったのでしょうか……?)
アリエスは高性能な様でポンコツ感のある自動音声の人工知能に少し不満を覚えながらも、『認証』の為に操縦者用のシートに腰掛ける。
少し捲れかけたスカートから覗く剥き出しの大腿部、腰の下辺り、背中全体、肘掛けに這わした両腕などから感じる、高級感のあるスルリとした感触。
何ともいえない、少し冷たくて、少し温かい感触。
ツルっとして、サラっとしている、体温の低い生物に腰掛けている様な、とても不思議な感覚。
アリエスの扁桃体――大脳の内側にある「快」「不快」を感じる部分――脳の一部分が、この座席を「とても座り心地がよい高級シート」と無意識的に認識していく。
(この感触、とても良いですわ。この座席にも、とてもお金が掛かっているのでしょうね……)
気持ちが高揚した事で、また自然と頬を染めるアリエス。
「――ところで、認証とは、どうすればよいのでしょうか?」
「搭乗者登録ガ行ナワレテイルカ、魔力スキャンヲ行ナイマス」
「なるほど」
魔力を伴った走査線がアリエスの体の上を走る。
吸血鬼族の体が特別に魔力に敏感なのだろうか。
「く、くふふ、……く、くすぐったいですわ」
くすぐったさをアリエスが訴えるが、魔力スキャンの走査線は、なぜかより一層、より満遍なく、あたかも撫で回すかのように、より丹念に、激しさを増して行われていく。
「ひゃっ、……はぁっ……」