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日本の選択

久しぶりです。

どう組み込めばいいのか、迷っているので、こちらに載せます。

本編の予定です。

長らくお待たせして申し訳ありません。マイペースでいきます。




『臨時ニュースです。日本政府は先程、突如として現れた浮遊物体に対して、公式の声明を発表するとのことです』


 テレビでは、連日に渡って空に浮かぶ浮遊物、一般的に「浮遊城」と呼ばれるものの話題で持ち切りだった。それはニュースであれ、特番と称したバラエティであっても同じだった。

 そんな中、皆が落ち着きを取り戻し、ニュースばかりの日常に飽きはじめた十数日後のある日、その知らせは伝えられた。


『国民の皆さんに、現在までの調査で分かった事をお伝えします』


 その人は日本の首相――ではなく、日本の象徴たる『天皇陛下』その人だった。

 普通なら、その人物が、政治に関わるような声明を出すなど考えられない。過去の大戦後、国政に関する権能を放棄し、多くの国民にとって象徴という立場に収まり、国事にのみ姿を拝見したり、言葉を賜る事がある程度しか、認識がないだろうお方。


 テレビカメラを意識した歩みで、心なしか手を震わせながら、手に持ったスピーチの原稿を、用意された台の上に置く。


『ただし、これからお伝えする事は、突拍子もない事であり、前例のない事であり、この世界に多大な影響をもたらす事です』


 長い前置き、背景に流れる音楽は、瞬きのようなシャッターを切る音だけ。この場にいる全員、国民だけでなく、海の向こうに存在する全ての国に対しても、初めて公表するという暴挙に出た『日本国/Japan』が取った行動。


『我々は、異なる人類とのファーストコンタクトを実現しました――』



 



 沈黙。


『これが、喜ばしい事なのか、私は答えを出せておりません。皆さんも記憶に新しい、先の「災害」は、ある意味、彼らとのファーストコンタクトが失敗した故に起きた、悲しい事故である事も、政府の調査で判明しております――』




 何人かが、質問したそうに声を上げようとするが、カメラの前にいる人物が視線でそれを制し、静寂とも取れる雰囲気が、会場を支配する。


『日本国政府は、彼らとの「地球的な価値観における」交渉などは、一切しておりません。彼らと「歩みよる事が可能な価値観」を、本当の意味で共有できるかも、現段階では分かっておりません――』



 動揺と、誰かの呟きが聞こえた気がするが、それは大した問題ではなかった。


『――日本国政府は、とある決断を下しました。これによって、周囲の国や、後の歴史において私たちが、肯定されるのか、それとも否定されるのか、正直なところ判断が出来ません』



 全国放送される中で、誰もがその発言に注目していた。

 驚くべき事に、あらかじめ根回しされたことで、ネット配信も同時に行われており、全世界へ遅延の少ないリアルタイムでの発信が行われていた。


 一息、陛下が深呼吸をする。


『我が国は、異世界人類とのファーストコンタクトの結果、一定の条件下で彼らを「難民」として受け入れ、共生する道を歩む事に決めました。私からは以上です。質問などあるかと思いますが、この後に内閣総理大臣より詳細の説明がありますので――』




 


 誰かは思った。異なる人類とはなんだ? 日本が危険じゃないのか? 本当に大丈夫なの? なんで日本がそんな事しなきゃいけないの? と。

 仮に、そんな奴らが暴れまわったらどうするか? とか、外国がどんな反応をするのか? という疑問もあった。その上、日本が突如として現れた危険な存在を、抑えられるのか? という疑問も。


 十日ほど前に、国連に対して謎物体の対処を依頼する声明を出しており、政治や軍事に詳しい者は、それと真逆とも取れる日本の行動を、迷走しているように感じる人もいた。


『そういうのは、アメリカとかロシアとか中国に任せればいいんじゃないの?』という考えを、SNSで発信する者もたくさんいた。



 ――お互いに効果的な抑止力を持たない関係は、いつかは破綻する。

 大国の軍事アナリストたちは、様々な疑問こそあれ、そういう共通認識を示すものが多かった。



 抑止力とは、個人・団体を問わず、相手に『暴力』という選択肢を諦めさせる力である。ここで定義する暴力とは、現実に破壊を伴う現象だけでなく、言葉などの攻撃も含んでいる。

 例えば、相手が弁護士だと知って、根拠のない暴言を吐く人はほとんどいないし、警察官の目に見える所で、ヤクザだって犯罪行為を堂々と行わないように。


 しかし、現代日本において、日本人は『抑止力』について、思考停止する癖がある。慈善事業の感覚でそんな事を言い出したのか? という疑問を持つ者もいた。抑止力の代名詞として語る場合には欠かせない『軍隊』や『核兵器』が分かりやすい例だろう。


 日本人は、実体はともかく『軍隊』や『核兵器』は持ってはいけないと考える癖がある。自衛隊があり、原子力発電所やロケット技術を持っていようと、思考的に切り離されるよう、教育がなされているような感覚である。

 それはきっと、性善説を信じれば、とても正しい。

 それなら何故、既に所持する国が、軍隊にしろ核兵器にしても、手放さないのかを考えない。特に核兵器など、厳しい制裁を乗り越えてさえ、所持しようと目指す国が後を絶たないのか、学校では教えてくれない。


 人道的に説くならば、核兵器なんかは『大量破壊兵器』であり、その後も放射能汚染によって、百年あるいは千年(場合によっては1万年以上)に渡り、生物に深刻なダメージを与え続ける土地になると聞けば、ああ、誰もが「それは駄目だ」と言いたくなる気持ちも分かる。


 

 では、なぜそんな兵器を作り、所持し、配備するのか。

 簡単な話で、人間は武器を持たない相手の事を『格下』に見る本能があり、特に集団が大きくなる程に『ある程度の暴力が許されると考えてしまう性質』があるからに他ならない。


 全人類がそうだとは言わない。

 しかし、歴史が全てを証明するように、弱者に対して残虐な行いを許容する過去が、何千年も続いているのが人間である。

 その末裔たる自分たちが、そんな遺伝子を受け継いでいない訳がない。



 本当に、日本はそんな事すら忘れてしまったのか?


 否。


 日本は彼らを難民として受け入れると同時に、彼らに一つの技術提供を願った。




 簡単に言えば『魔法を教えてくれ』と――。 



長い間、創作意欲が低下してましたが、嫌な事がたくさんあって描きたくなりました。

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