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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

雪解けの恋

作者: 天然水

こにゃにゃちわ!どうも天然水と申します。短編小説は二作目の投稿ということで、生暖かい目で見てやってください。

 僕には好きな人がいる。幼馴染の遠藤一真だ。

 一真は頭も良くて運動もできるし、顔も性格も良いから学校の人気者。でも、僕は何もかも普通で、俺のこの思いは絶対に叶わないって、自分が一番わかっている。だから、僕は一真のただの幼馴染として傍に居ようと思っていた。

「転勤?」

 朝食の時間に、母さんから告げられた。

「そうなのよ。お父さん、転勤することが決まってね、北海道なんだって」

「北海道!?」

「お母さん、お父さんに付いて行くけど、優は如何する?」

 北海道…あまりにも遠すぎる場所に、僕はめまいを感じた。北海道に言ったら一真と会えなくなるかもしれない。ふと、其れでもいいんじゃないかと思った。

 離れれば、この気持ちだって冷めて、忘れられるかもしれない。

「…僕も、ついて行くよ」

 何より、この気持ちを抱えたまま一真の傍に居る事が辛かった。

「いつ引っ越すの?」

「五日後」

「五日後!?」

「そうなのよ。お父さん私達に転勤の事ずっと黙っていてね。急な話で、本当にごめん」

 余りにも急過ぎる話に、僕は暫くの間呆然としてしまった。

「引っ越すって本当なの!?」

 三日後、土曜日なのもあって家でごろごろしていると、一真が慌てた様子で俺の部屋に入ってきた。

「え、あ…うん」

「…優もいっちゃうの…?」

 僕が頷くと、一真は蒼い顔を更に青くしてへたり込んでしまう。

「一真!?」

「そんな…だって、うそ…」

 一真の様子が可笑しいことに気付き、どうしたのかと肩に手を置こうとした時、その手を掴まれた。

「嫌だ」

「え?」

 一真が顔を上げ、僕を見る。その顔色は元に戻っていたが、目つきは鋭かった。

「嫌だって…」

「絶対に嫌だ。だって、俺、何も出来ていない」

「は?さっきから何を」

 いっているんだ、と続く筈だった言葉は口から出てくることはなかった。何故なら、一真に抱きしめられたから。

 …ん?抱きしめられた?

「え、なにこれ」

「行かないで」

「え」

 一真は僕を抱きしめる力を緩めると、体を離す。一真の顔は、初めて見る顔だった。

「だって、俺、優にまだ好きだって伝えていない!!」

「…」

 思わぬ告白に固まっていると、一真は自分が何を言ったのかを理解し、顔を真っ赤にさせた。

「あ、いや、その、違くて…いや、違くは無いんだけど!!!」

 一真は深呼吸をすると、真面目な顔をした。

「俺は、田中優が、ずっと好きです。優に初めて会った時から、ずっと」

 これは、夢だろうか。

 だって、一真が、僕を好きだなんて…そんなの…。

「嘘だ…」

「嘘じゃないよ。優」

 一真は優しく笑うと、顔を近づけ、僕にキスをした。

「…イヤ?」

 一真の問いかけに、僕は顔を赤くして首を横に振る。嫌な訳ない。だって、ずっと望んでいたんだから。夢見ていたのだから。

「優、そんな顔されたら、抑えきれないんだけど」

「そんな顔って…どんな顔だよ」

「男を煽るような顔。そんな顔されたら、男は皆、優にメロメロになっちゃうよ」

「ば、馬鹿!!そんなわけないだろ!」

 一真の冗談に顔を赤くしてそう言うと、またキスをされた。

「そんなことあるよ。だって、俺メロメロだもん」

 一真は何度も、角度を変えながらキスをしてきた。

「優、行かないで…」

 一真の小さな呟きに、願いに、僕は頷きたかったけれど、頷く事が出来なかった。

「ごめん…実は、昨日の内に荷造りが終わっていて…」

「知っている。家の中空っぽだったもん」

「うん。それに、父さんこの家の売却住ませちゃっているし…」

「え!?」

「だから、ここに残るのは出来ない」

「…」

 僕は一真にそっと抱きつく。もう少し、もう少し早く一真の気持ちに気付けたら、僕が気持ちを伝えていたら…そしたら、離れ離れにはならなかったのかもしれない。

「優…離れていても、俺は優をずっと好きでいるよ。」

「僕も、離れていても、一真をずっと好きでいる。」

 体を離すと、一真とキスをして、押し倒された。

 その後のことは言えないけれど、一つ言えることは、その…気持ちよかった…かな///


 北海道に引っ越してから早くも五年が経った。僕は成人を迎えて、もう22歳になった。北海道に来る前に、一真と毎日連絡を取り合おうと約束をして、五年経った今でも続いている。

 一真に会えない間、あの日の事を思い出しながら、または一真と電話越しに自慰をして体のうずきを押さえていた。

 そして今日、僕は一真に内緒で地元に戻ってきた。一真を驚かせようと家に行くと、家には誰もいないみたいで車もないしインターフォンを押しても誰も出てこなかった。家の前で待っているのじゃつまらないから、夕方まで大通りをブラブラしようと、懐かしい、けれど大分変ってしまった大通りを興奮気味で見ていた。

 ふと、前に一真の姿を見つけた。僕は嬉しくて一真に駆け寄ろうとしたけれど、直ぐ隣に知らない男の人がいて、一真は嬉しそうにその人と手を繋いで歩いていた。其の姿は、とても幸せそうだった。

 一真の、そんな姿は見た事がなかった。

 一真と男の人は僕に気付く事無く人ごみにまぎれて何処かへと行ってしまった。僕は、頭の中が真っ白になって、その場から動けなかった。

 気が付くと、僕は飛行機に乗っていた。どうやってここまで来たのか覚えていない。ふと、脳裏に一真と男の人の姿が浮かび上がる。頭を振って忘れようとしても、あの光景は消えては浮かんでと繰り返していた。

 家に帰ると、父さんも母さんも居なかった。父さんは仕事で、母さんは買い物か何かに出掛けているのだろう。

 部屋に戻ると、またあの光景が浮かんで、今度は涙まで出てきた。拭っても零れる涙が床に落ちてシミを作るのを見て、僕はついに大声で泣いた。ただ悲しかった。ただショックだった。

 暫く泣き続けて、涙も止まった頃、僕は携帯を手に取ると一真にメールを送った。

『一真、今日何してた?』

 メールを送ると、すぐに返信が来た。

『今日はずっと家に居たよ』

 ガンッと頭をトンカチで殴られたような衝撃がした。

 嘘を吐かれた。

『別れよう』

 その一言を打ってメールを送信し、携帯の電源を切った時、自分はなにをしているんだろうと思った。

 そりゃそうだ。お互いの想いが通じ合ったのは引っ越す数日前で、五年も離れていたんだ。飽きて当然だ。気持ちが覚めて当然だ。僕だけが、浮かれて、縋りついていたんだ。

 折角止まった涙が再びあふれて来て、僕は携帯を振りかざして投げようとしたけれど、そんな事をしても無意味だと分かっているから、腕を降ろして、強い喪失感にさいなまれていた。

 翌日からは、自分でもびっくりするほど普通だった。普通に会社に出勤し、普通に仕事をして、普通に仕事を終えて帰った。いや、帰ろうとした。

 家へ帰る途中、僕の前に五年前よりも更に凛々しくなった一真が現れた。一真は怒っているみたいで、僕は初めて見る一真の顔に恐怖心を抱き、思わず後ずさりをしてしまった。

「か、一真…?」

 一真は何も言わず、僕に近付いて腕を掴むと、無理やり引っ張られ連れて行かれる。

「ちょ、痛い!!」

 僕がなにを言っても一真は止まってくれず、辿りついた先はホテルだった。こんな所にホテルがあったんだ…と現実逃避をしていると、一真はホテルの中に入り、ホテルの一室に連れ込まれると、ベッドに放り投げられた。

「何をするのさ!?」

 僕がそう言うと、一真は「どういう事」と怒りを含んだ声で僕に聞く。

「え?そんなの僕が」

「これ、どういうことだよ」

 聞きたいよ、と言う前に、一真は携帯を出してメールを僕に見せた。メールは、僕が送った『別れよう』というメールだった。

 僕は、本当の事を言うかどうか迷ったが、別れたのだから言う必要はないと判断して、嘘を吐いた。

「別に…好きじゃなくなっただけ」

 嘘。本当は今でも好きだ。でも、最初に裏切ったのは一真だ。でも、まさかこの為だけに北海道にはるばる来たの?…そんなわけないか。

「嘘をつくな!!!」

 一真にベッドに押し倒され無理やりキスをされる。抵抗しようとしても一真の力が強くて全く歯が立たない。一真は僕の服を無理矢理脱がせると、一真のそれを僕の後ろに当てた。

「か、一真、止めて…っ、お願い!!」

「止めない」

 グッと押し込められ、ならされていないのに入れられたため、尋常でない痛みが襲った。

「あああああああああああっ!!!!!」

 あの時とは全く違う、優しくも気持ち良くもない、痛いだけの行為は、ただ恐怖しか湧かなくて、必死に止めてって言っても一真は止めてくれなかった。自慰をしていたおかげで、一真のそれはすんなりと入った。でも、やっぱり痛かった。

 気が付くと、僕はベッドで寝ていた。どうやら、気絶してしまったみたいだ。

逃げるのは今しかない、そう思った。腰だけじゃなくて全身が痛いけど、一真への恐怖心が体を動かし、ベッドから立ち上がろうとして倒れ込んでしまう。

「優!!」

 一真が戻ってきたみたいで、僕の所へ駆け寄ると抱き起こして呉れた。けれど、昨晩の行為を思い出し、一真の手を振り払った。

「どうして、どうしてあんなことをしたのさ!!!」

 僕がそう言うと、一真は僕の腕を掴んで真顔で言う。

「優が俺に嘘をつくから」

 その言葉で、僕の中で何かが切れた。

「先に嘘を吐いたのは一真だろ!?俺に飽きたならそう言えよ!!どうして、どうしてこんなことするんだよ!!嫌いだ!!一真なんか嫌いだ!!!!」

 怒りのあまりに涙があふれて来て、一真は僕の腕を離すと、抱きしめた。

「…ごめん。俺、優を傷つけたんだな…。ごめん。なぁ、教えてくれ。俺は優にどんな嘘を吐いたんだ」

 僕は一瞬言うのをためらったが、一真はきっと、僕が言うまで離さないだろうなと思い、観念して本当の事を話した。

「僕が一真にメールを打った日、僕は一真に会いに地元に戻って来ていたんだ。けど、家に誰もいなくて、大通りを歩いていたら、一真と知らない男の人が手を繋いで、幸せそうにしていて…メールで何してたって聞いたら、一真、ずっと家に居たって…っ」

 僕が正直に話すと、一真は焦ったように「それは誤解だよ!」と言って体を離した。

「誤解…?」

「そうだよ!あの日一緒に居たのは、何十年かぶりに家に帰ってきた父さんだよ!」

「…お父さん?」

「うん。父さんと会うのは久しぶりだから凄いはしゃいでいたんだけど…そっか。それが原因か…はぁ…」

 一真は深い溜息をついて顔を両手で覆った。

「こんな事になるんだったら父さんなんか放っておいて家に居れば良かった。そしたら優を傷つけずに済んだし…あわよくばあんな事やこんな事だってできたかもだし…」

思わぬ展開に頭が付いて行かない。

「…つまり、僕の勘違い?」

 そう理解した途端死んでしまいたいほど恥ずかしくなった。

「死にたい…」

「え!?其れは困るよ!てか、俺…優に酷いことを…」

 一真は僕に強姦まがいの事をしたのを思い出して顔を青くする。

「ごめん!!謝って済む事じゃないと思うけど、ごめん!!だから嫌いにならないで!!!」

 必死に謝る一真の姿に、なんだか笑えてきて、一真に悪いと思いつつも笑ってしまった。

「あはは!あははははっ」

「ゆ、優…?」

「…昨日は、本当に痛かった。けど、誤解だって分かって良かった」

「俺は、優以外には絶対になびかない。優以上に魅力的な人はいないから」

「一真……浮気、しない?」

 僕は、少しの不安と期待を込めて問うと、一真は笑って「勿論!」と言ってくれた。しばらく見詰め会った後、どちらともなく顔を近づけてキスをすると、今度はあの日と同じように優しく、気持ちよくて愛の溢れた行為をした。


こんな駄作をご観覧いただき、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] この短さで起承転結がしっかりあって面白かったです。ありがとうございました。
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