■27-1 一発
短め。 本日2回目投稿です。
俺は今、水星の極に居る。
後ろには太陽。前方には暗闇。敵は見えないが、はるか遠くに居るのだろう。
水星側が展開している衛星があるようで、敵の位置は丸裸の状態で眼前のモニターに展開されている。
これもまたフィグが用意してくれたものだ。助かる。
俺と握手した奴はレオニダスと名乗った。
あのスパルタ教育の語源となった国の王の名前だ。頼もしいにも程がある。
その彼が俺と同じく太陽を背にして話し始めた。
「ホモ・サピエンス……言いにくいので旧人類と呼ぼうか。奴等はEPR通信を傍受している節があってね、君達の通信も伝わっている可能性がある。が、暗号化のおかげか、通信が行われていることまでしか分かっていないようだ。それでもやり取りがあれば動きがある、それで旧人類はこちらの動きを予測しているため、君たちは旧人類如きに苦戦していた」
「ごとき、とはどう言う事だ?」
「君達、ホモ・プロディジウムだよ。まさしく戦闘民族だ。我々水星人は、君達と互角の戦いを強いられ、最終的に休戦となったのだ。それに比べれば、ハッ。 我々にとって旧人類如き、敵ではない」
そう言ってレオニダスは肩をすくめた。
戦闘民族、と言う言葉にショックを受けた。何も言葉が出せないで居ると、レオニダスは話を続ける。
「EPR通信でこちらの動きが分かるかもしれない、ねえ。なら、避けきれない攻撃をするまでだ」
「避けきれない、か。確かに起死回生の一発だな」
「ヒデキ、疑似ダイソン球のダイソンリングとはいえ、普段は全くと言っていいほど稼働していない。これから必要最低限の運転をご覧いただこう。全力運転は無しだ。我々水星人と地球人は同胞、人だ。無論、慈悲の心をもっている。敵艦隊の全滅はさせず、旗艦のみ撃墜させよう」
そう言ってレオニダスは宣言した。
「司令室より主砲管制室へ。旗艦データを送る。出力、太陽全球215秒to1秒、標的は敵旗艦。距離約1100光秒、現地点および回避予測候補上位200の位置へそれぞれ5ミリ秒照射。1220より射撃開始。逆算しカウントダウンを開始せよ。」
“了解、カウント180開始。発射事前許可求ム”
「許可する。停止命令が無ければ発射せよ。これをもって総司令認可とす。」
“了解、主砲「ラプソティ」発射許可受領”
数分たった所で、急に夜になった。
あわてて後ろを振り返るが、真っ暗な夜空……宇宙しか見えない。
いや、太陽があった場所が真っ黒に塗りつぶされている。
魔力は電気の言いかえだと今もどこかで思っていたが、認識を改める必要があるのかもしれない。
これは紛れもなく、魔法だ。
いかようにしてリングの及ばない球面にまで効果を及ぼしているのか想像もつかない。
待っている間に、どれ位の威力が出るのか計算しておこう。
……一晩に感じるほどの3分35秒だった。ごうごうと燃える太陽の光が無くなり、あたりは一気に氷点下になっている。スーツは温度を通さないが、今にもオーロラが出そうな冬の夜を感じさせる。
そして時が来た。
昼になった、と思った瞬間、急に吐き気がした。
宇宙空間のため音は伝播しない。大気が無いため光すら拡散する事もないため、まぶしさも感じない。
しかし圧倒的なエネルギーは空間すら揺るがし、俺の三半規管を容赦なく攻め立てた。
しばらくして、EPRで通信が届いた。
“敵旗艦消滅を確認!”
「消滅……か、ヒデキ殿、思ったより弱かったようですな。」
俺はすぐに言葉は出てこなかった。
恒星間航行が出来るほどの技術力なら、スペースデブリ、下手したら小惑星の衝突にも耐えられるボディをもっているはずだし、サイズも乗り物としては破格の大きさだ。
それが、消滅……だと言う。
ざっくり計算だと、旗艦には宇宙世紀アニメのコロニーから出てくるレーザーの約500倍のエネルギーが直撃したことになる。
距離による減衰もあるとは思うが、沈黙や撃墜ではなく消滅と言う表現からも、減衰していなかった疑惑がある。
「あ……あぁ、凄いな、さすが水星のテクノロジーだ」
「褒めても何も出ないぞ」
「求めてるわけじゃないが、旅行の土産くらいは欲しがってもバチは当たらないだろう」
「バチ、とは何だ」
「天罰だ。神様の罰だな」
「ノイマンの罰か、恐ろしそうだ」
「……あぁ、そういえばそうだった。ノイマンが神様なんだよな」
……この時、俺はこの一撃で戦争が終わると思っていた。
ちょくちょく○ーラー○ーンネタが入る。
明日も2話投稿します。




