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中間管理職のおっさん、一万八千年後の未来へ。  作者: youli
第六章:戦いのおはなし
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■26-2 尋問

 それから奴らの公用語が秋田弁と言うことが分かった。

 幾ら日本語が公用語だったからと言って方言はどうかと思うんだが。


 ティコが秋田弁の翻訳システムを作ってくれたが、さすがに古い情報だったのか、作成に1日掛かった。

 準備が整った。捕虜の尋問が始まる。

 場所は前線基地セレスにある気密室(エアロック)

 今生でホモ・サピエンスを見たのは初めてだが、やはりでかい。

 俺達の10倍ほどのサイズがあるようだ。機動戦士とお話しするようなもんだ。

 戦艦に居たのはたった一人だった。一人が戦艦を動かし、侵攻していたと言う。

 と言う事は敵戦力はそこまで人数的には多くないのかもしれない。

 遠隔操縦するロボットが話をするため、相手から見たら自分と同じ大きさの完全武装の職員が話しているように見えるだろうな。



『おい、これを外せ、開放しろ』

「お前ら、シリウスから来たんだろ」

『どうしてそれを!他にも捕虜が居るのか、卑怯者め!』


 こいつチョロい。自分から情報の裏づけを渡してどうすんだ。


「自分の立場をわきまえろ、第一俺達のロボットも鹵獲しているじゃないか」

『それは当然の事だろう、我等が帝国臣民にあらざる者は全て帝国の奴隷だ、何を当たり前のことを』


 いつの時代の話をしているんだよ……そもそもロボットは遠隔操縦だから捕虜になんて出来ないだろうに。

 あ、もしかして内臓AIを人だと思ってるって事無いよな……


「面倒だから本題に入ろう。お前らの狙いは何だ」

『聞かれて喋ると思うか?』

「あぁ、思う」


 そういいながら注射器を取り出し、血管に差し込む。中身は純度98%のエタノールと精神安定剤だ。



『っ!何を注射した』

「喋りたくなる薬だ。いわゆる自白剤だな。喋れるようになってから質問するから黙ってて良いぞ」

『くっ……殺せ』

「野郎のくっころなんて聞いても嬉しくない。情報を出して欲しいだけなんだ。もっとも、喋ったとしてもそれは薬の効果だから、お前の上官や軍部からの命令に背いた事にはならないから安心しろ」

『くそ……』


 そういって男は口をつぐんだ。

 自白剤と言ったけど、そんなものはない。要は正しい判断が下せない状態になればいいのだ。

 だからアルコールだって立派な自白剤とも言えよう。アミタールなんてどうやって作るかわかんねぇよ。

 後は正常な判断が出来なくなる精神安定剤を混ぜたが、元は俺達用の薬だからホモ・サピエンスに効くかは分からん。


 暫くすると男が頭をゆらゆら揺らし始めた。

 眠くなってきたのだろう。だが寝かしてはダメだ。


「改めて聞く。何が目的だ」

『……しゃ、喋るわけにはいかないんだ、だめだ』

「そう、しゃべりたくないんだよな。でも薬の効果が出て喋ってしまうんだ。お前は悪くない」

『だめだ、俺は知らない』

「知らないんだよな、そうだよな。でも薬の効果が出て喋ってしまうんだ。お前は悪くない」


 正常な判断が出来ないようにするには、同じワードを繰り返すのがポイントだ。

 何度か同じやり取りを繰り返し、ついに折れた。


『……奴隷を。奴隷を集めるためだ。植民地にする予定の星に原生物や原住民が居た場合はそうしている。惑星開発の、基本だ』

「ほう、俺らを奴隷にしようとしているのか。ではこの星系、太陽系と呼んでいるが第一惑星にも生命が居る事は知ってるか」

 『もちろんだ、そいつらも奴隷にする予定、だったからな」

「おまえ自身もそう思ってるのか?」

 『当然だ、帝国臣民以外の生命は、全て帝国の……ものだ』

「もしかして自分のものにしようとも思ってるか?」

 『それ位皆やってる。一部の原住民を私的利用なんて当たり前、だろう。第一惑星に居る生命も興味があるし、何体か手元に置いてやっても、いい』


 ふむ、水星人も奴隷にする気満々っぽい。

 俺の中でコイツを生かして返す理由がだいぶ消えた。


「お前らは先遣隊か?」

 『そうだ』

「本隊はどこだ?」

 『今日到着しているはずだ。予定通りなら俺達と同じ宙域にいるはずだ』

「お前が捕虜になった状態でもか」

 『そうだ、俺はもう戦死として扱われているはずだ』

「本隊の規模はどうだ」

 『旗艦1隻・空母約430隻・戦艦約4500隻だ……ったは、ず』

「思ったより少ないな。先遣隊の半分程だ」

 『旗艦を見れば、その考えは無くなる』

「でかいのか」

 『でかい。ちょっとした小惑星規模の移動……要塞だ』


話を聞いて整合性を取ると、全長500km位だと分かる。


「なんだ、セレスの半分じゃないか。転移装置はあるのか」

 『ある。短距離転移と長距離転移、超長距離転移……だ。この星系内だと短距離転移しか、使えないだろう』

「そうか、分かった」


 それだけでかい的なら手段次第では何とかなるかもしれない。

 それから人口、侵攻計画を聞き、これからどうするかの判断材料を集めていく。

 尋問は終わった。別に暴力を振るったわけでもないから、ただの質問か。


 俺は警備兵……をしているAIに、寝息を立てている男を記憶消去処理をしてシャトルに乗せ、その旗艦とやらに向けて射出するように指示を出した。

 特に人間的な判断力は必要ないのでAIで十分だ。

 1か月分の食料と酸素は用意したので、運がよければ助かるだろう。


 奴は俺達を、水星人を捕虜……いや奴隷にしようとしていた。

 尋問しているうちにどんどんムカついてきた。

 仮に数あるホモ・サピエンスのごくごく一部がこいつなだけかもしれないが、コイツを積極的に助ける理由にはならない。

 まるで有色人種の人権を認めない白色人種のようだった。

 くそ、助ける命令を出したが処分しても良かったかもしれない。

 こんなのホモ・サピエンスの風上にも置けない。フィグの爪の垢でも煎じて飲め。フィグは爪無いけど。


 ムシャクシャしたまま通信を切り、意識を月に戻した。

 そのまま水星にゲート経由の通信を送る。


「フィグ、お前らも他人事じゃないことが分かったぞ。一緒に戦うべきだ。」

「どう言うことだい?」

「奴ら、水星に人がいることも知ってて攻め込んでる。奴隷にするそうだ。このままじゃ地球も水星も死ぬか奴隷かの2択だ」

「お、落ち着いて、そんなに声を荒げないでよヒデキ。そもそも奴隷ってなんだい?」

「人権なしの使い捨ての無休労働者だ。死ぬまで使いつぶされる。」

「……野蛮だね、しかし評議会は既に結論を出してる。参戦は無理だ」

「俺が水星に行く。俺が評議会を直接説得するぞ。水星を救った英雄の言葉だ、無視は出来まい」

「英雄って……ヒデキが自分で英雄と言うくらいだから相当怒ってるんだろうけど、多分兵力支援は出来ないと思うよ」

「構わん、俺の見立てだと、あるんだろ?主砲が」

「……続きは水星に来てから話そう。このまま通信だけで話す内容でもないしね」

「あぁ、わかった、すぐ行く」


 通信を切って、そのままゲートをくぐって水星に行く。

 俺の目はとても怖かったのだろう、水星への通信中も通信後も、誰も声をかけてこなかった。タチアナでさえもだ。


 ゲートが何処に設置されたかと言うと……評議会の目の前だった。

 数十の顔がこっちを向く。目線こそないものの、意識を向けられている事に緊張している自分を認識する。

 フィグも居た。目線を向けると顔を逸らした。コイツ、こうなる事分かってたな。

 が、プライベート回線でフィグがメッセージを送ってきた。


“君の本音を聞かせてくれ、水星人達はそれを望んでいる。”


 俺の本音、か。


 くそ、負けるか。俺だって成長した。客先へのプレゼンだと思えばなんて事は無い。

 問題は相手が国家だと言う事だが、大差は有るまい。たぶん、きっと。

 息を吸い込み、腹の底から声を出す。

 音声はデータとして電波に乗せるため、声の大きさが相手に伝わる事は無いのは分かっている。

 ただの自分への鼓舞だ。

 都合のいいことに、射殺すような目線なんてない。全員つるりとした顔をしている。


「現在、太陽系はホモ・サピエンスから侵攻を受けている。」


 とたんに評議会全体がざわついた。

 くそ、音声じゃないと、ざわめきがザーザーと言うノイズにしか聞こえない。

 かまうもんか、続けて言う事にした。


「奴らのうち! 捕虜を一人捕らえ、情報を引き出した。コレがその音声データだ。再生するので静かにして欲しい」


 そう言って質問の時のやり取りを3分程度にまとめた内容をラジオ再生した。

 ざわめきはもうない。全員がじっと音声に聞き入っている。

 再生が終わり、俺は改めて全員を見渡し、口を開いた。


「共同戦線だ。コトは地球だけの問題ではない。水星にも協力してもらう必要がある。」

「既に地球側には技術協力を行っているだろう?不足だと言うのかね?」


 評議会の誰かが質問する。が、想定範囲内だ。


「地球が落ちたら、次は水星だ」

「我々にとって奴らなど敵ではない」

「では何故協力をしない?同じ太陽系の人類だろう!」

「あなたは本当にそう思ってるのか?」


 つい、カッとなって大声で叫んでしまった。


「当然だ! 俺達だってホモ・サピエンスに作られた存在だが人類だと思っている。この太陽系を生きる知的生命体だ。そしてそれは星が違っても変わることは無い。結婚しても子をなせないかもしれない。だがそれだけだ。話も出来る、助け合える。実際水星の崩壊の危機を救ったが、俺は見返りを求めたか? 求めていないだろう。それは水星人も地球人も同じ人間だと思っているからだ。だから俺は助けてくれなんていわない。協力してくれ、頼む、この通りだ!」


 そういって俺は頭を深く下げた。


 他国の人間が自分達の国の方針に文句を言うのは内政干渉だ。それくらいは分かっている。

 それでも俺は頼むしかない。


 しん、とホワイトノイズが走る評議会。

 プライベート回線でフィグがメッセージを送ってくる。


“いや、帰る前に「何かくれ」って言ってたよね”


――アレはお土産の話だ。見返りじゃないだろ!

 心の中でだけ突っ込む。フィグ、後で覚えてろ。


 長い沈黙の後、一人の水星人が口を開いた。

 いや、信号を送ってきた。こいつらに声を出す口は無い。



「ふぅ…………確かにフィグの言うとおり、君は不思議な人だ。AIですら人として扱うと月のティコから聞いていたが、まさか本当だとはな。君のような人が過去に居れば、戦争は無かったのかもしれないな。…… 一発だけだ。一発だけ協力しよう。」


 いいのか?と聞きそうになるがぐっと飲み込む。それは侮辱だ。


「助かる。標的は全長500kmの戦艦だ。起死回生の一発が必要だ」


「任せろ。それで全てを変えてみせる」


 そう言って、そいつは俺の目の前まで歩いてきて、右手を伸ばした。

 俺は迷い無く、その右手を手に取り、ぐっと握った。








 手を握ったまま、そいつが言う。


「早速撃とう。今からだ」



 …………えっ?

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