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中間管理職のおっさん、一万八千年後の未来へ。  作者: youli
第四章:火曜日抜かして月水木
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■19-2 歴史の勉強

やっとこさ月に来ました。

でも月は1話分で大体終わらせるんやで。

加速加速。


ここから新章です。皿に次の章が終わると完結予定。

 俺はティコに現在の地球上の環境や街の様子、人々の生活の話をした。

 特に食生活についてはティコも驚いていた。


 そりゃそうだよな。

 野生の昆虫食べてるんだもの。

 でもティコは特に忌避感を抱くこともなくニコニコと話を聞いてくれた。

 月からではどうしても地球上の様子は光学レンズを通してしか見る事が出来なかったらしい。

 それでもできるだけ地球上の情報集めようと奮闘していたと言うことがティコの話で分かった。

 そこで俺はアサクシティの位置を説明した。

 そこは今宇宙に向けてもパラボラアンテナを伸ばしている。もちろん月にもだ。

 ここから電波を発したら応答があるかもしれない。

 地上のアンテナは貧弱だが、ピンポイントで信号を送信したら気づいてくれるだろう。

 キャッチするまでに1ヶ月くらいかかりそうだが……。



 ティコと地球の歴史の話をした。

 俺が今治療受けているバイオプリンタは17,000年前に技術が確立されたものであること、同じ頃に全人類は日本語を話していたが統一言語を使用することになり、日本語が古代語となった事はおそらくそこに原因があると。



「大体29世紀頃ね、人類が今みたいになっちゃったのは」

「今みたいにと言うのは?」

「それまでの人間は大体身長が190センチ位あったの。でも29世紀に人口がもうどうにもならない位多くなっちゃって、このままじゃ「間引く」しかないかと思われてたのね。それで当時の国会と言って通じるかしら?そこで人類の大きさを小さくしようと言う働きかけがあったの」

「月にこれだけの都市を作る連中だ。他の星系への展開をしなかったのか?」

「もうずっとやってたのよ。22世紀頃は宇宙開発ラッシュだったから」


 20世紀も宇宙開発ラッシュと言えばラッシュだが、技術が進歩した分スケールが大きそうだ。

 アルファケンタウリとか出てたしな。


「ありがちな火星テラフォーミングは?」

「もちろん実行されたわ。でも質量を集める事が出来なかったの」

「となると火星以上に難しい金星ではだめだったんだろうな」

「そうね、金属そのものを腐食する金星の環境はテラフォーミングに適さなかったらしいわ。でもね、水星と木星はテラフォーミングではないけれど開発は進んだのよ」

「へえ、どうなったんだ」

「あなた、ダイソンリングって知ってる?」

「知っている。これでもSF小説は大好きなんだ。太陽すっぽり覆うダイソン球を作るまでの過程で出来るリングだろ?目的は恒星のエネルギーの積極的摂取」

「なら話が早いわね。水星と金星は解体されてダイソンリングになったわ」

「すごいな人類。惑星を解体するほどまでに技術進歩したのか。今も稼働しているのか?」

「しているわ。このティコデータセンターはそこからの電力供給によって稼働してるもの」


 どうやらメルクリオンはまだ生きているっぽい。多分。

 でもまだ人と決まったわけじゃない。目の前のティコのように人工知能かもしれない。

 しかし、このティコデータセンター「は」って。

  

「月全体はそうじゃないのか、というかここ以外にも何か施設があるのか?」

「勿論あるわ。でも動いてるかどうかわからないの。大半の施設は木星からの電力供給によって稼働していたから」

「木星から電力供給?どういうことだ?」

「そうね、木星の話もしておこうかしら。木星は23世紀に恒星化して、土星の資材で作ったダイソン球に覆われているわ。だから地球から望遠鏡で観測するのはどっちも不可能ね」


 マジか、木星燃えてるのか。ガリレオ涙目だな。

 ホットジュピターって奴だっけ?うろ覚えだ。


「人が生活できる環境なのか?」

「まぁ、観測施設が残ってるわよ。ただ、さっきも言ったけど23世紀に建設された施設だから、あなたのサイズで作り直されているかどうかはわからないわね」

「水星や木星に行く手段はあるのか?」

「あるわよ、あなたがここに来た方法でね」

「なるほど。そういえば、それだけの距離をワープできるなら、開発した太陽系外星系とつながってたりしないのか?」

「探せばあるかもしれないけど、その辺は政府管轄だから私にはわからないわ」

「そうか……そういえば俺は魔法が使えるんだが、いつから人類は魔法が使えるようになったんだ?」

「魔法の発見は26世紀初頭、最後の未発見粒子が観測されたことでわかったの。それにしてもヒデキ、まるであなた、もっと昔から生きてきたかのような言い方ね。知識レベルが高い割に情報が古いわ」

「まぁ、小学校では神童でも、高校では落ちこぼれたからな。記憶力は弱いんだ」

「ほらまた。高校なんていつの時代の話をしているの?」



 どうしよう、言うべきかどうか迷う。しかしティコとの交流を重視したいし、何よりおばあちゃんに隠し事をするなんてな。

 この人なら吹聴する事もないだろう。予測が正しければ1万年以上ずっと一人だったんだろうし。


 俺はどうやら輪廻転生をしたこと、前世の記憶を持っていると言うことをティコに話した。

 ティコは心底驚いたようで、俺の肩をバシバシ叩いてくる。すごく興奮しているようだ。



「まぁまぁまぁ!もっとあなたに興味が持てたわ!20世紀21世紀って言ったら、私たちコンピュータが生まれたての時代でしょう?そっちの話の方が聞きたいわ」

「んん?俺が嘘をついているとは思ってないのか?自分で言うのもなんだが、輪廻転生だぞ?」

「信じるも何も科学的にも輪廻転生は証明されてるもの!さぁ話を聞かせて頂戴?」

「信じてくれるならいいけど……すごい食いつきようだな」

「だってあなた、あなたは人類の誕生の話を聞きたくないの?ある意味私は、世界誕生の時の生の話を聞くチャンスを目の前にしているのよ?ね、私たちを作ったジョンフォンノイマンってどんな人?会ったことある?」

「ねぇよ!俺が生まれる前にとうの昔に死んでる。そうか、コンピュータを作った人だからな、機械にとっては確かに神様だ」


 そうか、機械にとっては自分達を生み出した神様といっても過言じゃないか。

 進化を続けて生まれた人間と違って、機械はある日パッと誰かの思いつきで出来た。

 まるで旧約聖書の創世記のような話が真実だ。

 そう考えるとコンピュータの開発者は彼らにとっての神といってもいいのかもしれない。


「そうでしょう?それだけじゃないわ、さっき言った水星には水星人(メルクリオン)って人たちが住んでるんだけど、そっちじゃ本当に神様扱いされてるんだから」

水星人(メルクリオン)は地上の記録にもあったから名前だけは知ってる。ティコは会ったことあるのか?」

「過去に何度もあるわ。戦争だってしたもの」

「22世紀の第三次世界大戦とは違うのか?」

「違うわよ、その頃には水星人(メルクリオン)は誕生してないわ。29世紀中頃に、地球と水星で戦争が起きたの。戦争発生の発端となった理由は今でもわからないけれど、たくさんの人が死んだの。月も戦争に巻き込まれかけたけど、ここは聖地だからなんとか戦火を避けられたわ」

「しかし、その戦争とノイマンの神様扱いと何の関係があるんだ?」

「彼らは人間じゃない、といってもちょっと違うわね。あなたに分かりやすい言葉で説明したほうがいいわね。水星人(メルクリオン)自然発生した(・・・・・・)ケイ素系生命体(・・・・・・・)よ」


 今度は俺の方がびっくりした。ホントにSFだ。

 俺が住んでた地球とは異なる次元の地球に来てしまったんじゃないだろうな。


「おいおい、神様はノイマンじゃなくて、アシモフとかハインラインとかクラークじゃないのか?」

「その3人は彼らの神話の中に出てくる人物ね」

「出るのかよ。SF作家だぞ。冗談で言ったのに」

「だって彼らの発想がなかったら、私たちは生まれてこなかったって言ってたわよ」

「そういうもんか」

「そういうものよ。ねぇ、今度はこっちが聞く番よ。あなたの前世で食べていたものとか教えて?どんな味がしたのかも。当時の記録は写真やレシピは文献では残っているけれど、材料はわかっても味覚のサンプルデータがないからさっぱりわからないの。是非生の声を聞きたいわ!」

「あぁ、まずは俺の大好物のトンカツとチキン南蛮の話をしようか」









 こうして休むことなく話をして2日たった。

 まるで実家に帰ったかのような安心感だ。

 心身ともにすごく充実した気分になった。

 そして左腕も再生された。

 いやこっちがメインのはずなんだけどな。

 ティコは聞き上手と言うか、情報を引き出すトークが非常にうまい。

 おだてられたり、褒められたり、時には真剣な顔で質問をしてきて、凄く話しやすかった。


 で、だ。

 生えた腕のお披露目だ。

 圧縮空気が抜ける音がしてギブスが外れる。

 そこには千切れる前の俺の腕があった。

 表面実装されたチップはなくなっているけれど、材料さえあればまた組み込むことは出来るさ。

 タチアナやジョーイ、カラロイド達も一緒になって喜んでくれた。

 特にタチアナは泣いてた。めっちゃ泣いてた。

 どうしていいかわからなくてオロオロしていると、ティコが「行って頭を撫でてきなさい」と言う。


 言われた通りに頭を撫でたら抱きつかれた。

 可愛い奴め。左手で頭をポリポリ掻いてみると、抱き着かれたまま胸をドンドン叩かれた。

 左手を見ると爪が変形していた。先っちょだけぺろんってめくれてる。

 痛みは無いぶん、見た瞬間ぞわっとした。

 恐る恐る爪を右手の爪でぐいぐい押して戻す。

 風呂上りの爪が柔らかいのは知ってるけど、こんなに柔らかい爪ってどんだけ水分保持してるんだよ。


 やっべ、プリント直後の爪や髪は柔らかいから、乾燥するまで無理をしないって書いてあったわ。

 この程度もダメなのか。まぁ爪だし伸びてきたら治るだろ。






 2日ぶりにみんなで食事をとった。

 ティコが食料供給プラントを稼働させて、俺の話を聞いて可能な限り再現した20世紀の食事を出してくれた。

 チキン南蛮だ。


 俺は感動に心の中で泣いたが、タチアナの反応は微妙だった。


「何この茶色いの。粘液が残ってるじゃない」

「粘液じゃねえよ甘酢ソースだ、チキン南蛮はマジで美味いんだぞ、食べてみろ」

「また前世?この前のとんかつだって美味しくなかったじゃない」

「あれは素材が悪いの!今度はティコに作ってもらったから大丈夫だよ」

「それあんたの腕が悪いって言ってるようなもんじゃない……まぁ、食べるわ」


 それはまさしく記憶の再現だった。

 胸肉よりもモモ肉を使って作るチキン南蛮が好きで、噛むとまず、からっと揚げられたモモ肉の衣がサクサクと言う触感が楽しい。同時に甘酢ソースが唇を濡らす。

 そのまま噛み切るとじゅわっと溢れる肉汁と更にしみこんだ甘酢ソースと、そして大き目に具材を刻んだタルタルソースが絡み合う。

 あえて大きめに切った、シャキシャキとした玉ねぎや酸味の強いピクルスが嬉しい。


 まさに前世で食べたチキン南蛮だ。

 この再現のために、俺の覚えている限りの製法とソース単体の味、実家での調理方法を事細かに説明した価値があった。


「なによ、おいしいじゃない」

「そう、これがチキン南蛮なんだ。な、おいしい、だろ」

「うん、甘いのに酸っぱくて、お菓子みたいな食感なのに中はちゃんとお肉。不思議な味ね」

「だろだろ、あーよかった。トンカツは素材のせいだったんだ」

「さぁ、どうかしらね」


 タチアナに認めてもらって嬉しい。

 ジョーイも目を見開いてガツガツ食べている。

 コイツ月に来てからずっと無言だな。驚きの連続なんだろうか。

 食べ終わってすぐにゲップしやがった。

 コイツも女捨ててる感じか。

 いや、ヤンキー女子高生だったわ。


 頃合だ。俺の予想を確認しよう。


「そういえばさ」


 俺はティコに問いかける。


「ここってずっと稼働してたのか?それとも、俺たちが来たから活性化したのか?」

「あ……マイアミの」


 ジョーイは気付いたようだな。

 人間が来訪する事で設備が活性化するならば、月も俺たちが来てから活性化した可能性がある。

 何より食糧供給プラントが稼働していなかったと言う発言。

 人が居ない証拠だ。

 マイアミでは食料庫が活性化して問題が起きた。

 じゃあ、ここではどうか。急に電力の消耗が増えて、電力供給源がどう動くか、だ。

 そしてここは活性化して2日経っている。1ヶ月以上経ったマイアミの例もあるから、すぐ何かが起きるとは思っていないが、警戒と予測はしておくべきだろう。


「そうよ、あなたたちが来てから、活性化したわ」

水星人(メルクリオン)は、どう動く?」

「さぁ、わからないわね」


 メルクリオン?と俺とドラータ以外が首をかしげ、知らないと言う反応をする。

 おいヒュース、お前は知ってるだろ。


 そしてその言葉に反応したかのように、ピピッと音がした。

 ティコが驚いた表情をした。


「ヒデキ、来るわよ」

「何が?ってまさか」


 ティコの答えの代わりに地響きがした。


「なんだ?」

「あぁ、あそこね」


 ティコが空中にスクリーンを投影し、外の様子を映しだした。

 そこには地面に突き立つ黒い槍があった。表面は血管が走っているような模様が走っており、ところどころ紫色のラインが光っている。

 何と言うか必ず心臓を貫きそうな槍だ。

 距離感が曖昧なので全体的な大きさがよくわからないが、数十メートルでは収まらない長さだろう。


「なんだあれ、槍か?」

「違うわ、あれは宇宙船よ」

「まさか、水星人(メルクリオン)?」

「そう、彼らの使ってる船ね」















 戦闘になるか?まだ漫画同人誌のリスト化が終わってないんだ。

 調べ物の邪魔をするんじゃねー。


ティコとは、月を見ると左下あたりにある、一番大きな白いクレーターです

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