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中間管理職のおっさん、一万八千年後の未来へ。  作者: youli
第三章:宇宙から月まで
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■18-1:マイアミ・ガール

 カウガールの尻を……ではなく後を追いかけて30分。

 ようやく彼女の拠点に着いた。


 近くにあったと思っていた軌道エレベータは実際はまだまだ遠くに有った様で、30分掛けてようやくマイアミ国際空港、通称エンジェルラダーに着いたのだ。

 エンジェルラダーってアレだよな。確か曇り空の隙間から光の柱がビームのように地上に降り注ぐあの神秘的な光景。

 パトラッシュと共に天に召される光線だ。


 そして、カウガールの所属する町の町長に会ったんだ。

 町長は……幼女だった。

 フードを被って袖が余って裾も踏んでるが、幼女だ。

 ピンクの紙にピンクの瞳。

 いかにも魔術師っぽい杖を持ってる。


 来た!少年やジジイばっかりだった町長はもういない!

 アキバみたいに千人以上も居ない!

 たった一人の幼女。オンリーワン幼女。いや別に幼女に性的興奮は抱かないけどさ。

 マスコットキャラって感じがするじゃん?少なくともジジイよりは。


「わたしはマーリン、エンジェルラダーを統べる町長よ!」


 コイツもキャラ濃ゆいなぁ。元気な幼女か。

 マーリンってアレか?アーサー王伝説の魔術師の名前か?

 そう思った所でマーリンが俯きながら続ける。


「でもマーリンって言っても、魔術師のほうじゃなくて、魚のカジキの事なの……」

「あ……そうだね、Marlinだね。魔術師のほうはMERLINだね」

「でもでも、気分だけでも魔術師っぽくしたくて、ローブとか被ってみたの。似合う?」

「あぁ、よく似合うよ。とってもかわいい」

「ヒデキ、なんだか気持ち悪いよ?」


 うるせえ、ジジイでも少年でも武士でも執事でもない、ここに心のつながりがあるんだ!

 そのままマーリンたん、いや、マーりんをなでようと手を伸ばしたところで、ぎろりと睨まれた。


「それで、あなたたちはどういう存在なの?」

「ああ、すまないね、俺達はっと、こういう者だ」


 ペンギンカードを出して身分証明とする。

 マーりんはカードに手をかざし、スキャンしたのか晴れやかな顔をした。


「おぉ~!日本から来られたんですねぇ!一等国民がこの町に来たのは本当に久しぶりです!これはこれは遠いところまでようこそ!」


 疑いが晴れたのか、カウガールの顔が安堵を浮かべた。

 そりゃあ人種が違う人間だ、疑って当然だろう。そういえばここは日本国外だから、基本的に皆二等国民だ。

 そして文明崩壊から一万年以上経ってる。一等国民を見た事があるのは、目の前に居るマーりんだけだろう。


 カウガールもようやく自己紹介してくれた。


「アタイはジョーイ・マクゴガナルだ。さっきは不躾な態度を取って悪かったね。知らない連中だったから警戒していたんだ」


 結構いかつい苗字だ。

 しかも若干ヤンキーくさい。

 いやアメリカ人ならヤンキーであってるけど、そうじゃなくて。

 ハクトウワシの名前は、まんまハクだった。

 頭、白いもんな。わかるわかる。


 エンジェルラダーの町は数千人が住んでいて結構規模が大きい。と言ってもニライもカナイも同じくらいの規模の町だったから圧倒的な感じはしない。

 やっぱり町の外はずっと砂漠だしな。


 そして夕食を共にすると言う事で、俺は快く応じた。


 そしたらミルワームが出た。

 皿いっぱい、でた。

 何を言っているのかわからないと思うが、俺が一番困惑している。

 絶対ググるなよ。


 これも知ってるぞ~この虫が入っているキャンディをアメリカ帰りの友人からお土産と言う名の罰ゲームで貰った事がある。

 だから、これだけは食った事がある。


 見た目は硬い芋虫。と言うか釣りの餌。

 俺の前世じゃ確かハムスターとかのげっ歯類のご馳走だったような気がするんだが。


 そしてニライの町同様、これは来客用のご馳走なのだろう。

 ジョーイが羨ましそうにこっちを見ている。

 きっと滅多に食べられないものに違いない。

 食べないわけにはいくまい。


 タチアナは既に皿を持って掻きこんでいる。

 お前ブレないよなぁ。


 マーりんは不安そうな顔でこっちを見ている。

 室内だからかフードを下げているので、お顔がちゃんと見える。

 かわええなあ。

 視線を落とすと現実が待っているけれど。


 幸いにも、揚げてある。

 蒸してたりしたら生の触感が生きて来るから本当に良かった。


「い、いただきます」


 量があるからスプーンで掻き込む。

 バリバリと咀嚼して、水で飲み込む。

 ほんの少しの苦味と豊かなナッツの風味が喉と鼻を刺激する。

 見た目で正気度がガリガリ削れていく。


 手元を見たら心が折れるのが分かっているので、無心で虫をかっこむ。


「おいしいれふ」


 涙目になりながら、感想を言う。

 マーリンはニライ同様、ほっとした顔で笑ってくれた。

 その笑みが俺の心を癒してくれる。削れた正気度が回復していくのが分かる。


「喜んでくれて良かったです。ところで、ヒデキさんにお願いがあるのですが……」


 そう上目遣いで言われて断れる男が居るだろうか?


「断る。……・が、内容による。まずは聞かせてくれないか」


 居る。俺だ。でも弱かった。






 だって断るって言った瞬間に涙浮かべるんだもん。

 こんなん反則だろ!


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