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中間管理職のおっさん、一万八千年後の未来へ。  作者: youli
第三章:宇宙から月まで
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■17-2:フロリダ

 カナイから兄弟再開のお礼にと、もう一個座標指定モジュールと、その設計図を貰った。

 やったぜ。


 移動前の車両……チャンバーに乗り込み、脱酸素時間を利用して、ちゃっちゃと俺の左手首に表面実装していく。

 左手に銃を仕込む……そう俺は宇宙海賊……じゃないよ?

 丁度ホクロがあるところが端子になるっていうから、ちょっと繋いでみようと思ったのだ。

 神経への接続は痛いが、我慢する。

 カッパ―に俺の体を押さえてもらう役をお願いし、自分でICソケットを設置していく。


 これは前世で俺が歯医者で教えてもらったテクニックなのだが、体が痛みでビクンッて反応する事を止めるのはとても難しい。俺には出来なかった。

 そこで、痛かったら右足を上げよう、と考えてみてはどうかと言われた。

 歯医者で下半身を動かしても、上半身はがっちり固められているので、足が上がっても問題ない。

 実際神経をツンツンされたときに、上半身には力を入れず足だけビクンビクンした。

 上半身を動かされるよりはマシだと歯医者のお姉さんから褒められたなぁ。


 そういえば歯医者で胸が当たるのって、歯医者側のスキルがまだ低いからなんだってな。上手い人は胸が当たらないんだとか。どんどん当ててほしいんだが。

 ……胸を当てられた記憶がよみがえり、体の一部が反応してしまった。まずい。


「おや、ヒデキ殿……そっちのご趣味が?」

「ねぇよ!お前も頬を赤らめるな!イテテ……」


 ほらタチアナが怯えたような不安がっているような顔をしてこっち見てる……見て……


 何で眼福な顔をしているの?




 さて、現在移動中だが、やっぱり移動時間は暇だな。

 エレベータと同じで、窓も無く、壁の液晶画面に現在地と速度が表示されているだけだ。まぁ点検車両ならこんなもんか。

 タチアナは光る液晶画面に夢中だ。


 そういえば地上に液晶画面なんて無かったな。

 大抵が電子ペーパーのように表面のインク配列を移動させて書いたり消したりするものだったからな。

 フロリダか。イメージとしてはネズミの国だとかケネディ宇宙センター、年中常夏でサングラスを着けた水着のねーちゃんがローラースケートで走ってるイメージしかない。

 で、マイアミはその中でも犯罪率が高いイメージだな。


 1時間でマイアミ上空についた。早すぎない?

 加速感も減速感も無いんだが、もしかして俺の指輪よりも強い慣性制御を持ってる?


 ここから地球に向けて落下するようだが、相変わらず窓が無いので周りの状況が分からない。

 さっきまでずっと人工重力を感じていたが、お腹の中に浮遊感を感じる。

 異常事態が起きているんじゃないよな、と不安になったので、液晶画面を操作して船体外部が表示されないか試してみる。


 光学カメラは無かったが、赤外線カメラがあった。

 船外を映してみたが、凄く真っ白。ところどころピンクの筋が通るので、今大気圏に突入して、摩擦熱で高温になり、真っ白に見えているようだ。

 船内は少しひんやりしていて無音のため、外の状況に現実感が全然わいてこない。


 あれ?沖縄からエレベータを登った時は、軌道エレベータの内部から上がっていったんだが、なぜ今エレベータの外壁を降りてるの?

 中から行こうよ、あぶないよ。


 まさかレールから外れて落下してるんじゃないよな?

 車体情報を検索。大丈夫だ。レールからは外れていない。

 液晶画面の表示を信じるなら、地面に近づいたら滑り台を滑るように水平移動に移行するようだ。


 ……これはマスドライバーか!

 数秒後、体の中に感じていた浮遊感が無くなった。

 液晶画面を見ると、水平移動に移行している。

 凄まじいGが掛かっているはずなのに、全然感じない。凄い慣性制御だ。ほしい。

 この車両、分解してパーツ取っていいんじゃないかな。


 30秒ほど経って、圧縮空気が抜ける音がして、扉が開いた。

 一応地上の酸素濃度に合わせて移動中も徐々に酸素を抜いていったが、空気は大丈夫か、と少し不安になった。


 そうっと扉から顔だけ出す。

 とたんに砂埃がブワッと横殴りに顔を叩く。

 小石も交じっていたようで髪の毛の間にじゃりじゃり入る。

 目にも砂が入った。結構痛い。


 空気に異常はなさそうだ。

 全員で扉から降りて、乗ってきた部屋を見返してみる。

 港にたくさん置いて有るようなコンテナが、そこにはあった。

 本当に作業用というか、旅客用じゃない見た目だったんだな。


 さて、どこからバラしたらいいもんか、と思っていたら、ドアの上のランプがチカチカ光り、猛烈なスピードで走っていった。

 遠くに見える山に登っていったと思ったら、光の筋を残して天まで登っていった。

 俺達は全員、それを口をあけたまま見ている事しかできなかった。


「お、俺のパーツ、宝の山」

「ヒデキ、えきしょう、ほしかった……」


 数分の間、二人で未練がましく空を眺めていた。


「行こう、タチアナ。フロリダに行こう」


 そう呟いて、畳んであったリフターを組み立てる。

 カナイタウンに居る間に可変機構を組み立てていたので、バイクや軽トラ、リアカーに簡単に組み替えられるようになっていたのだ。


 軽トラモードにして全員で移動を開始する。

 タチアナが運転をしてみたいと言うので任せてみる。

 目指すは山……マイアミ国際空港だ。


 マイアミタウンに着いたが、人は居なかった。一面の廃墟だ。

 軌道エレベータがある町は衛星軌道から電力が供給されていると思ったが、ここは違うのだろうか?

 いや、軌道エレベータのある山を見ると、上空に伸びる糸のような軌道エレベータから沢山のレールが放射状に山から各地に延びている。


 ここは恐らくハブ駅なのだろう、各地の中継地点になっていると思われる。

 町の廃墟に何か残っているかもしれない。

 そう考えて探索を開始する。


 マイアミに到着したのが昼の12時くらいだったか、3時を回ったあたりで遠くからワシの鳴き声が聞こえた。

「鳥が居るのか。ドラータ、周囲を警戒頼む」

「わかったわ」

「タチアナ、こっちに来てくれ。建物の陰に隠れる」


 タチアナは無言でこっちにダッシュしてきた。

 壁に身を寄せてあたりを警戒していると、俺達が居る廃墟のビルから10メートルほど離れたところに、ハクトウワシ(…………)が舞い降りた。


 知ってるぞ。アメリカの国鳥だ。

 クチバシにくつわ(……)が嵌められている。

 そこから紐が首の後ろに伸びて……人の姿を見た。


 ドラータを見る。こくりと頷くと、ドラータから呼びかけてくれた。


「鳥の背中に乗ってないで、出てきなさぁい、でないと、攻撃しちゃうかも」


 いやお前は武器持ってないだろ、と心の中で突っ込んだ。

 そう思っていると、ハクトウワシの背中から人が飛び降りた。


 おぉお、大好物です。

 身長は俺より高め。脂肪分は低めだが胸に凝集されている。

 金髪褐色肌のカウガール!ホットパンツに上半身はビキニの水着!

 テンガロンハットと腰のホルスターが西部ガンマンっぽくてエロティズム!

 しかもビキニが星条旗だよ?え、これ何かの撮影?

 いやこれ良いわ。ぐっと来る。グローバルカウガールだ。

 心のアルバムに写真を残そう。


 特に武器も表面実装魔道具も持って居なさそうなので、俺も姿を現す。


「日本から来た。ヒデキとタチアナだ。各地を旅している」


 返事が無い。まだ警戒しているのか。

 タチアナが手持ちの皿を広げて、揚げたセミの切り身を何個か出した。

 おい。


 そのままタチアナは無言でカウガールの前まで歩いていき、セミの切り身を一つ半分食べて、相手に差し出した。

 カウガールはしばらくタチアナの持つセミの切り身を睨みつけていたが、パッと手にとって、食べた。


 食うのかよ。

 しかし警戒は少しは解けたのか、カウガールはようやく口を開いた。


「お前達、どこから来た」

「だから日本だって」

「お前には聞いてない」

「ヒデキ、私が答える。私達は日本から来た。あの男、ヒデキが本を求めている。それを探して旅をしている。何か知らないか」

「本……本か。お前達が敵かどうかも分からん、ここにおいておくのも危険だ。ウチの集落に来い」

「わかったわ。……・ヒデキ、ついていきましょう」


 リフターに乗り込み、カウガールの駆るハクトウワシについていく。

 あの対応でよかったのか。まるで昔の現地民族との交流みたいだ。

 跨る尻を後ろから眺めると、何と言うか、こう、来るものがあるね。

 でもあの娘もセミ食ったんだよね。






 しかし……アルジェンタとホットパンツキャラが被っている。

 しかしアルジェンタは近接戦闘向け、目の前のこの娘は銃を持ってる遠距離戦闘向け。見た目も白ギャルと黒ギャル位違う。

 キャラ分けはハッキリしているぞ、安心しろアルジェンタ。


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