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中間管理職のおっさん、一万八千年後の未来へ。  作者: youli
第二章:転生から沖縄まで
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■14-2 Coloroid

日刊ランキングに載りました。46位@20170523 評価およびブックマークいただいた皆様、本当にありがとうございます。

 管理職になるという事は、とても恐ろしい事だ。なぜなら、部下の人生、家族、それぞれのとても大事にしているものの責任がこの肩に押し寄せるからだ。

 自分のミスで仕事が吹っ飛んだら。

 自分だけなら良い。自分で責任を取れる。しかし部下の仕事がなくなったら、その責任をどうやって取ればいいんだろうか。

 アサクシティからここに来るまで、何度も自分の指揮下を作るチャンスもあったし、スカウトしたい人材も何人かいた。でもしなかった。


 怖かったからだ。


 自分の行動の結果、多くの人生に影響を与える事が怖かったのだ。

 それは前世でも今世でも変わらない。

 それが出来るようになるのは何も考えていないバカか、責任の意味をしっかり認識し、適切に配置し、慎重に、かつ正確に事を運ぶ者だけなのだ。


 何が言いたいかというと……

 アンドロイドは今後の人生に責任を持たなくてもいい、気分的に凄く楽だという事だ。

 もちろん、彼らを失うという事はしたくない。

 大量生産品のはずだが一人ひとり個性がある。

 接し方も異なる。



 どういう事かと言うと……


「主殿、コンデンサの採掘、規定数突破」

「ヒデキさん、セラミック削り出しが終わりました」

「ご主人様、スタビライザーの摘出が完了してございます」

「ヒデキー!コイルの置き場所がもう無いよ?どこに置けば良いの?」

「……ヒデキ、暇だわ」


 上から赤青黒白黄。

 白黄だけ俺を呼び捨てなのは、タチアナの教育のせいだ。

 なぁ、作業用アンドロイドにここまでの個性をつける職場ってどうなんだ?

 頭が痛くなってきた。


 こいつら名前を付けた途端に個性が発生し、ボディもメキメキ変化した。髪の毛も生えてきたし服も沸いて出てきた。

 日曜朝の女児および大きいお兄さん向けのアニメの如く、ニョキニョキと変化した。


 黒青赤は男性型に。

 黄白は女性型に。


 命名者の性別を継承するようだ。それぞれの色の髪で、とても区別しやすい。

 しかもそれぞれが専用のオプションをもっていた。


 黒のアイアンは一言でいうと執事だ。女性タイプだとメイドになっていたのかもしれんな。

 こいつだけオプションが無いが、俺以上に高度な索敵・分析能力を持つ。

 青のリードはすらりとした長身でイケメンだ。幅広の羽帽子がチャームポイント、と言うか吟遊詩人。

 アコースティックギターを持つ。そこはリュートじゃないのかよ。

 赤のカッパ―は武士で、武器は刀だ。戦闘もこなせるタイプのようで、とても力持ちだ。

 若干無口気味だが、寡黙な侍をイメージさせる。

 白のアルジェンタはボーイッシュで感情豊か。タンクトップにホットパンツとか俺の大好物です。

 ナックルガードがオプションのようだが、言われるまで気づかなかった。

 身軽で高いところにある資材もヒョイヒョイ持って来る。


 全員キャラ濃いな。

 しかしそれぞれが長所を持つが故に、問題を抱えているようにも見える。

 そのせいで作業が思ったより進んでいない。


 特に黄のドラータ。

 全体的に細身で真っ白なドレスに金色の刺繍がたくさん盛り込まれた金髪ストレートの中世貴族だ。オプションは……日傘。なんの役に立つんだ?こいつ。

 ひょっとしてコイツだけ愛玩用じゃないだろうな。と最初は思ったほどだ。


 何がひどいって、こいつ働かねえ。

 何だよ暇だわ、って。暇じゃねーよ。

 指示してもうごかねぇ。

 性格も高飛車な奴だ。

 そもそも腕や足や恰好が作業に向いてない。

 吟遊詩人や武士なんてどう見ても作業とは程遠い感じだが、しっかり作業しているのにな。

 何処からドレスが出てきたのかは知らないが、仮にも作業用アンドロイドがする格好じゃないだろうに。

 それを言ったら全員そんな感じではないんだが、もしかして、こいつら作業用アンドロイドではなくて楽団なんじゃないだろうか。

 作業用にしては、規格が全く統一されていない。


 まぁ働かない奴も上手い立ち位置におさめて使うのが中間管理職の腕の見せ所だな。

 無理やり言って働かせても軋轢を生むだけだ。


「ドラータ」

「あら何かしら?ヒデキ」

「他の4人のまとめ役をお願いしたい」

「……働けとは言わないのかしら」

「適材適所だ。統括をするのは得意そうに見えたから、そっちの方が実力を発揮できると思ったんだが、できるか?」


 ドラータの眉がぴくりと動く。

 貴族は指示を出すのが得意なんだろう?と心の中で呟く。


「そうね、やってあげてもいいわ」

「助かる。俺とタチアナから指示を出すから、効率よく皆を回してくれ。皆も聞いてくれ!君らと俺たちの間にドラータが立つ。もちろん俺からも指示は出すが、基本的に彼女の指示を聞いて行動に移してくれ!」


 各々了解を貰った。

 レンジャーだと赤がリーダーなんだが、まさかカレーポジションがリーダーになるとはな。


 そこからは早かった。

 バラバラだったパズルがドラータを筆頭にピッタリと組み合わさって、効率よく作業を進めている。

 アイアンには細かい作業を、リードには高所の作業、カッパーには建材の切り取り作業を、アルジェンタには入り組んだ場所の資材を集めるように指示を出した。

 各ユニットの長所を意識した見事な配置采配だ。

 ドラータ自身も指示を出す傍ら自分からも手を出して分かりやすく伝えようとしている。

 その様子を眺めながら、俺とタチアナは感心した。


「なんだ、働けるじゃん」

「さすがアタシのドラータね!」

「……そうだな、タチアナのドラータは凄いよ」

「えうぇっ!?ヒデキが褒めた!」

「そりゃ凄い事をしたら褒めるだろ」

「明日は雨が降るかも」

「砂漠にか?」

「えぇ、砂漠に」


 さて、こっちはこっちで作業だ。アンドロイドに任せられない作業もあるからな。

 リニアモーターカーの原理は知ってるが、制御した事は無い。

 車と違ってハンドルを切ったりする必要は無くアクセルとブレーキだけではあるが、どれだけのスピードが出るのか想像が出来ない。

 皆が吹っ飛ばないように、操縦席周辺はリフターを使用して空気抵抗に対するカウンターを用意してある。

 合わせて操縦席をパージして脱出できるようにした。パラシュートで減速して、磁力とリフターだけで細々と進むのだ。


「何よ、止める自信が無いの?」

「備えあれば憂いなしだ」

「ふうん」

「ちょっと疲れたので買い物に行ってくる。タチアナ、こいつらの管理を頼む」


 タチアナもカラロイドも買い物には不向きだからな。俺がリフターでお使いに行くしかない。

 何度か最下層と店を往復した。

 最初は皆新宿ダンジョンの第1層で稼いでいるものだと思っていたようだが、俺が持ってくる売り物の素材が他の連中とは違ったようで、何度か問い詰められた。

 高さ200メートルの縦穴の底だと言ったら、そんな所に行くなんて自殺行為だ、と呆れられた。

 まぁ嘘は言ってない。


 それから5日、たったの5日でリニアモーターカーが出来てしまった。

 しかも制御はマイコンだ。驚け16ビットのマイコンだ。昭和だぞ。

 リフター以上に乗るのが怖い乗り物が出来上がってしまった。

 ミンチになる未来がちらっと見えて、あわてて首を振った。


 出発前に花街にも出かけたのは内緒だ。

 水・食糧は1か月分ほど用意した。

 いよいよ出発の日だ。

 運転席は申し訳程度に全員分の椅子が固定されており、各々そこに座ってシートベルトを締めている。

 壁も屋根もナシだ。

 横転したら死んでしまうように思えるが、仕組み上逆さまになっても浮いているから問題ないだろ。多分。


「最終点検、完了したよ!」

「荷物・エンジン問題ござらん」

「コイル導通、スイッチングに異常はございません」

「フライホイール、既定回転数に到達しました」

「タチアナ、いくぞ」

「ええ、いいわ。ドラータ、お願い」


 タチアナの命令により、ドラータが指示を出す。


「接続!」


 そういいながらクラッチから足を離すドラータ。

 とたんに襲い掛かる凄まじい加速感。


「ゲフッ」


 思わずむせる。


 時速何キロ出ているかは分からないが、前方に設置したリフターのおかげで猛烈な風を顔に受ける事は避けられている。

 それでも強めの風が顔にあたるが、これはもうしょうがない。

 暗闇の中だが、ヘッドライトに照らされた壁面が凄まじい勢いで後ろに流れる光景を肴に、少し休むことにする。

 なんだか昔のSF映画のワープみたいだ。

 リードはヘッドライトに照らされる壁面を眺めている。

 この速度でも文字が読めるんだろうか。


 25分ほど経過。速度にも慣れてきて、水筒から水を飲む。

 まだリードが壁面を眺めていたので、分かったら良いな、位の気持ちで軽く聞いてみる。


「リード、今どこかわかるか?」

「はい、先ほど浜松を通過しました」

「なんだ、まだ浜松町か。10kmくらいか?」

「いえ、失礼しました。浜松町ではなく、浜松市です」

「……静岡県の?」


 リードが頷く。

 俺は目を見開き、つばを飲んだ。

 ごくりと言う音が回りにも聞こえたかもしれない。

 まずい、嫌な予感がビンビンする。

 早急に速度を計算しないとまずい。全員死ぬ。


「リード、今の速度分かるか?」

「急造の車体で速度計をつけていないので、わからないですね」

「出発して何分だ?」

「23分14秒です」

「大阪を経過したら、出発からの時間を教えてくれ」


 静岡の浜松までの距離は分からないが、東京大阪間は550kmと知っている。

 そこで速度を測ろう。

 しばらく待っていると、リードが声をかけてきた。


「ヒデキ様、大阪を通過しました。出発してから44分0秒です」


 いつの間に大阪を通過したのか全然気付かなかった。


「ありがとう。44割る60はいくつだ?」

「0.73です」

「550割る0.73はいくつだ?」

「753.42です」

「そうか……時速750キロか……」


 確か東京沖縄間が空路で1500、陸路と水路で2000ちょっとだったはず。

 事前に見た路線図だと九州経由だから2000kmで予測を立てるのが良いだろう。


「2000割る750は?」

「2.67です」


 44分はもう経過しているので、あと2時間もない、か。

 なぁ俺ちゃんと設計できてたよな。今の所車体は安定しているけど、このスピードでコケたら死んでまう。

 ブレーキにも力を入れたはずだが、動作チェックはしていない。大丈夫だろうか。

 いや、この車体はカラロイド達がほとんど組み立ててくれた車体。精度は抜群のはずだ。信じよう。












「カッパ―」

「は、ここに」

「沖縄の北谷は分かるか?」

「存じておりまする」

「北谷到着時にフルブレーキを掛けてくれ。ドラータから指示が出る。1秒で効果が少しでも出ない場合は即座に運転席を脱出させる。万が一ではあるが、その準備もしておいてくれ」

「御意」



 信じるとは言っても、備えあれば憂いなしだ。


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