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中間管理職のおっさん、一万八千年後の未来へ。  作者: youli
第二章:転生から沖縄まで
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■13-2:新宿ダンジョン

 新宿ダンジョンについた。

 構内案内を見ると、リニア駅は地下65階。

 不思議のダンジョンだとメインストーリークリア後のやりこみ要素に入る位の階層だ。


 新宿ダンジョンはあまりにも広大で、探索者は地下深くには潜っていかない。

 潜らなくても十分な物資があるからだ。

 そんな中俺たちは最下層を目指す。

 もちろん過去の連中が誰も最下層を目指さなかったかと言うと、そんなことは無い。

 だが、誰も帰ってこなかったのだ。

 地下一層は、これでもかと地面にビーズがばら撒かれていた。

 このビーズは、周囲の魔力を吸収して淡く光を放ち続ける粒だ。

 シンジュシティ周辺では産出が多いのか、まるでコンサート会場のサイリウムのように、地面がポツポツと光っている。

 凄いな。アサクシティでは貴重だから、こんな贅沢な使い方はできなかったよ。

 ちょっと回収しよう。

 じゃりじゃりとビーズを踏みながら先に進むと地下鉄入口があった。

 しかし目的地は地下鉄駅よりもさらに地下。

 それはもう長期滞在になるだろうな、と思ったが、地図の解説によると直通のエスカレーターがあった。

 古代語が読めるのはやっぱり強みだわ。

 道中シャッターが下りてて行き止まりになっている個所があったため、火薬を使って人が通れる穴を開ける。


 この世界では火薬は貴重だ。

 何せ精製施設が無いから、遺跡から発掘される火薬か、素材別で配合前の材料を揃えて混ぜて作るしかない。

 文明崩壊の恐ろしい所がここだ。技術の伝達がなされず、ただモノがある。

 そして本来の用途ではなく、違った使われ方をしている。

 ただ、それが妙にハマって面白かったりもするんだけどな。


 火薬を紙の筒に入れながら昔の思い出が頭によぎる。

 手元にある黒色火薬のつくり方の配分は分からないが、線香花火の配分なら知ってる。

 硝酸カリウムと硫黄と木炭を3対1対1だ。

 鉄粉を混ぜるのがコツな。

 木炭はホームセンター、硫黄は漢方取扱いのある一部の薬局で売ってる。

 硝酸カリウムは学校経由で注文だ。

 肥料経由は精製が難しいのでお勧めしない。

 昔、自由研究でやったから覚えている。

 その肥料の作り方はわからないから、ゼロから火薬を作る方法は俺にも分からない。

 文明の断絶は痛いよな。紀元前に地球が丸く直径まで計算出来ていても、中世ヨーロッパでは世界は平面ってのが常識になっちまったし。


 微妙な気持ちになりながら紙の筒に雷管を差し込む。

 シャッターの隙間に紙の筒を挟み、グイグイ動かして接合部に押し込む。

 これで接合部が破壊されてくれればいいのだが。


 念のため、その辺の廃材で蓋をして、爆発の威力が空中に無駄に拡散しないようにする。

 固定はしてないから廃材は吹っ飛ぶが、何もしないよりは威力は高まるだろう。


 さて、点火だ。

 雷管に繋がる導線を握る手が少し震える。発破はアサクシティで習ったが、数回しか経験が無いからな。

 十分離れたところで、魔力を込める。


 パァン!と高い音が鳴り、瓦礫が崩れる音がした。


 成功したかな?と見に行くと、廃材はバラバラに散らばっており、シャッターは火薬の衝撃で接合部が裂けて、人が通れない位の穴が開いていた。

 足りなかったな、とタチアナと二人で苦笑いしながら、バールのようなものを使ってギコギコ人が通れる穴を開ける。

 タチアナと二人で強盗まがいの物理的解決方法。スマートさなどどこにもない。

 線香花火の思い出は美しいが、現実はかっこよさなどどこにもない、泥臭い作業であった。


 さて、シャッターを通り抜けたが、真っ暗だ。

 上層階には山ほどあったビーズが、ここにはない。

 誰も来た事が無いルートのようだ。ビーズをばらまきながら、そのまま進む。

 10分ほど歩くと、エスカレーターに到着した。

 階段のふちから下を見ると、地の底まで続くかのような暗闇だ。

 生ぬるいような、刺すような冷たさのような、心がざわざわする風が、下から吹いてきた。


「空気は通っているようだ」


 自分の不安を払しょくするかのように、声に出して確認する。

 口に出したことで、自分が緊張していることを知った。

 生き物の気配は感じられないが、何が出てきてもおかしくない。

 何より警備ロボットが一番怖い。

 記憶を戻すきっかけとなったアサクシティの崩落、あれはおそらく警備ロボの自爆だろう。

 もう一回吹っ飛んで生きていられるかは分からない。ここには優しいギルドのみんなは居ないのだ。


 ワイヤーシューターがこういう時に活躍する。

 高い所に登るのがとても楽になった。

 ちらりと天井を見て、この辺りかと当たりをつけてワイヤーを射出。

 天井に刺さったのを確認し、杖の持ち手を腰のベルトに引っ掛けて巻き上げる。

 手すりにたどり着いたところでワイヤー側の魔力を切ると、ワイヤー先端部の針が支持力を失い引っこ抜ける。巻き取り機側は魔力を流したままなので、そのまま巻き取った。

 フリーになったワイヤーが巻き取られながら暴れたが、何とかそのまま手すりに着地した。

 エスカレーターの手すりに登れたので、階下に向けてレーザー測量をしたところ、傾斜20度で約600メートルの距離があった。

 sin20度は確か大体三分の一だから、高さは200m位か。1階層3メートルだと66階相当なので、途中が崩落している心配は無さそうだ。


 エレベーターも有ったが、200メートル近くの縦穴に潜る気には到底なれない。

 前世換算だと2キロメートルだぞ。そんな縦穴に挑みたいか?俺は絶対いやだ。

 まだ坂道の方が良い。


 徒歩で行ったほうがいろいろな発見や冒険もあるかもしれない。

 しかしだな。

 前世換算で2kmの高低差。しかも前世の頃から新宿ダンジョンは横が広い。

 横にも広がるスカイツリーを徒歩で1.5往復したいか?

 俺はいやだ。

 と言うか最下層を目指した過去の人々って、単純に迷って出られなくなったんじゃないのか?

 前世ですら迷うと言うのに、そこから恐らくさらに拡大され、地下にも伸び、人類のサイズは1/10になって、広さの感覚も10倍だ。

 まさしくここはダンジョンだ。誰も出られない。

 ただし―


「俺たちは違う。古代文字を読み、地図を見る。この遺跡は、怖くない」


 タチアナにも聞こえるように、大きな声で言う。

 こっちはチート持ちだぞ、と自らを鼓舞する。

 文字が読めるだけだが。

 文字が読めた前世でも新宿駅で迷った事は棚に上げる。

 さっきからぶつぶつ呟く俺を、タチアナはしっかり見つめてくれている。

 早く病院に、と言う言葉なんて聞こえない。

 聞こえないったら聞こえない。


 しかし、問題は大きい。

 そう、遺跡なのだ。電気なんて通っているわけが無い。

 エスカレータも止まっている。

 階段の段差は300ミリもあり、俺の身長よりも高い。

 それが……ええと650段か。

 ピラミッドの3倍以上だな。無理だ。


 と言う訳で、工作する。

 何せ遺跡だ。適当なプラスチックや金属の廃材は山ほどある。


 3時間ほど工作し、5台、手すりを滑り降りる台車を作った。

 その時点でリフターの存在を思い出して、あわてて宿に戻る。

 これから下に降りるとなると当分戻って来れない。

 宿に置きっぱなしの荷物は全部持って来よう。

 ついでにチェックアウトも忘れずに。


 宿からリフターを引っ張って、新宿ダンジョンに戻った。

 5台の台車は残ってるな、うん。


 台車だが、エスカレーターの手すりを使って最下層まで行く計算にした。

 手すりは巨大な滑り台だ。

 横幅200ミリのコの字型のフレームを2つ、300ミリほどの板の両端につなげた。

 まるでタイヤの無いトロッコだ。

 台車なのにタイヤが無いとはこれいかに。

 コの字なのは、エスカレーターの手すりをすべるためだ。

 設置面は摩擦の少ないセラミックを使用したので、最下層までノンストップでいけるだろう。


 人が乗る奴は後ろにブレーキを付けている。

 どれだけの速度が出るか分からない以上、人力で止まれる気が全くしない。

 電動でアンカーを打ち込んで手すりにブレーキを掛ける事にした。

 自転車のリムブレーキのように頼りないが、他に思いつかなかったので、この案を採用。

 ……リフターを使えばいいと気づいたのは到着してからだった。


 何が必要になるか分からないので、その辺にある金属やらプラスチックやらセラミックの廃材をまとめて縛って、台車に乗せる。


 手すりの位置は高いところにあるが、ワイヤーシューターやリフターを使えばなんて事はない。


 こうして4台の台車がエスカレータの手すりの上を滑って地下へ続く闇の中へ消えていった。

 あまりにも遠すぎるためか、到着した時の音は聞こえてこない。

 レールがどこにもつながっていなくて、果てしなく落ちていくのではないか、と言う不安も湧き出てきたが、レーザー測量機は600mの距離を表示している。

 つまり、先には壁なり地面なりがあるのだ。


 最後は人間だ。リフターとタチアナと俺、後は二人のリュックサックだ。

 ブレーキを利かせるためには出来るだけ軽いほうが良いので、たったこれだけ。


 さあ、最下層に行くぞ。


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