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中間管理職のおっさん、一万八千年後の未来へ。  作者: youli
第二章:転生から沖縄まで
19/61

■12-2:シンジュタウン

痛い表現が出ます。注意。

5/19 日本→アメリカに表現変更。日本じゃ駄目だろ・・・

 シンジュシティの中心街にやってきた。


 そこにはこの街の地図が書いてあったが、あまりにも巨大過ぎて現在地はどこなのかすらわからない。

 市長を呼んでみるが、出てこない。ここもトーキョーシティと同じか。

 そして気のせいか、周りのタチアナを見る目がなんだか刺々しい気がする。

 まずは宿を探そう。それからこの街の探索を始めよう。


 昼は店をめぐり、夜は酒場で情報収集をした結果、この街の地下には広大なダンジョンが広がっているということがわかった。

 名前は新宿ダンジョン。

 シンジュシティだからシンジュダンジョンだと思っていたが、そこは地名から取るんだな。

 まぁ知ってた。前世でもダンジョンって呼ばれてたしな。


 そして……地上はシンジュシティ、なんとここでは二等国民が差別されていた。

 酒場で酔客のセクハラに必死に耐えながら接客している二等国民も見た。

 正直言ってグッときたし、へへオジサンにも触らせてくれよと野卑た考えが頭をよぎったが、タチアナの視線が強かったのであまり見ないようにした。


 ひとりできてたら周りの雰囲気に飲まれて絶対撫でてるわ。


 郷に入れば郷に従え、イエスタッチな世界に来てノータッチを貫くほど朴念仁でもないし正義感とかいう自己の欲望の押しつけもしない。

 ここはアメリカだから射撃場で銃撃っても大丈夫なんだよ、えーそれでも日本じゃ銃刀法違反になるじゃないか!銃を嫌がる人もいるし俺は撃たないぞ!、あっそう。なら勝手にしたらいい。

 でも人に押し付けるのは良くないぞ!

 そう、イエスタッチイエスタッチ。


 気が付いたら右手が尻に向かっていた。

 自分でもビックリだ。あわてて左手で右手を掴む。セルフ握手だ。

 くっ静まれ俺の右手……!

 タチアナさん、すげえ冷たい目で見るの、やめてくださる?

 こういう時、自分が選ばれた特別な存在ではなく、雰囲気や言い訳に流されるダメダメな大人が転生した、やっぱりダメダメな子供なんだなぁ、と自覚する。

 いや成人したけどさ。


 気を取り直して更に情報収集。


 カブキタウンではもっと際どいと言うか花街と言うか、そう言うところだと。

 ほうほう、くわしく。

 おっさん、こう言うシモい話は大好きなのよ。

 500円ランチで尻が撫でられるなら毎日通うわ。故に明日もここに来よう。

 ひとりでこよう、いやダメだ。


 いかん脱線した。

 タチアナ以外の二等国民を見るのが初めてだったので、そこで知った。

 今までアサクシティでは、昔から住んでる人が一等、そうじゃない人が二等と習っていたが、これはいわゆる子供向けの説明。

 実際の所は純粋な日本人かそうでないかで社会福祉や人権の範囲、就業の制限などの高い人種の壁があるようだ。


 おいおい、日本人て人種を差別するような民族だった記憶はないんだが。

 どことなく、村社会を彷仏とさせる。

 別に新宿が田舎ってわけじゃないんだけれども。

 人類はホモサピエンスでは無くなっても、差別は無くならず、か?


 いや、コレは教育の結果なのだろう。

 アサクシティでは二等国民に対する偏見は強くなかった。

 少なくとも売買の禁止や奴隷の認可、裁判を受けられないとかは無かった。

 ギリギリ生存権があるくらいだ。

 前世で読んだ小説とかの物語の主人公なら状況をなんとかするかもしれないが、俺は前世でも中間管理職、今はただの少年だ。

 どうにも出来ない。

 そうして情報収集するうちに、酒場で周りの視線がネットリと野卑たものになっている事に気づく。


「タチアナ、今のこの周りからの視線、どう見てもタチアナに向いてるよな。こういう言い方はあまりしたくないんだが、俺と離れるとまず間違いなく襲われるぞ」

「あたしもそんな気がする。ここでは二等国民の人権が制限されているようだし」

「解決方法があるとすればあるが、正直言ってなかなか言い出しにくい」

「何よ、怒らないから言ってごらんなさい」

「怒ることってバレてるんだったら話は早いが、奴隷の印を付けよう」

「イヤ」

「だよなぁ」


 殴られなかっただけ良しとしよう。俺がタチアナに殴られて周りがどういう反応するのか想像するだけで頭が痛くなる。

 奴隷の印とは、左肩に取り付けられる2ミリ四方の四角いチップだ。

 生体に食いつき、魔力を吸いながら生きる寄生虫のようなもので、主人の命令に従わない場合は、あるいは主人から離れすぎた場合は苦痛をもたらす。

 生体に食いつく、と言うのも比喩表現ではなく、本当に食いついて取れないのだが、回避策ももちろんある。

 が、奴隷にするにはそのほうが都合が良いのだろう。

 設置の際も奴隷に大きな苦しみを数日間与え続けるため、奴隷と言う立場を教える事に一役買っている。

 今日の観光で、奴隷が存在する事も、奴隷印も初めて見たものだったが、同時に驚きでもあった。


「しかしなぁ」

「なによ」

「図書館からいいもの持ってきたんだ」


 そう言って俺はある物をタチアナに見せる。


「何よこれ、奴隷の印じゃない」

「に見えるだろ。ただのオペアンプなんだなコレが」

「はぁ?オペアンプって魔力の増幅器でしょ?こんなに小さいわけないじゃない」

「リフターにも4個使ってるぞ。性能は保証する。すごいだろ?」

「凄いけど、なんでもっと早くくれなかったのよ。これがあればサンドワームからも楽に逃げられたんじゃないのさ」

「だって、そんな時間なかっただろ?第一、その時つけてくれたか?こんな時にふざけないでよって言われるのが目に見えるぜ」

「ぐぬぬ」

「どこでそんな言葉覚えたんだよ……まあいいか、偽装のためにつけるか?他の人の奴隷と言う事にすれば、ある程度未然に犯罪を防ぐことは出来ると思うぞ。ゲタ履かせるから、もちろんちゃんと外すこともできる。どうだ?」

「……つけるわ。それだけで魔力の伝達増幅が上がるからね。ちゃんとつける時に何をするかも分かってる。でも部屋に戻ってからね。ここじゃ無理よ」

「そりゃそうだな。タチアナ、絶対痛みで漏らすぞ……あっグーで殴るのはやめっ」



 そうして部屋に戻ってきた。

 タチアナの肩を見る。右か、左か。どっちがいいかな。

 指でそっと触りながら、リンパの流れを見る。

 首から肩、と言うか脇の下を通っているリンパの流れがわかる。


 ワキをピッタリテーブルに当てて、二の腕を水平にする。

 タチアナは左手首を右手でしっかりつかみ、左の二の腕は俺の膝を当てて完全に固定する。

 左肩に設置する事にした。

 この姿勢だとタチアナの胸元を上から覗き込めるが、そんな事に気を取られて設置に失敗したら殺されてしまうので、鋼の心で集中する。


 俺は鞄から生体針を8本取り出した。

 針治療に使われそうな極細の針だが、差し込んで魔力を流すと針の先から殻が徐々に溶けて、神経回路の形成がなされる。

 注意しないといけないのが、きちんと針の先が神経周辺に届いているかが重要になる。

 それを判断するのがなぁ~、ちょっと辛いんだよな。見てる方も、されるほうも。


 続いて、鞄から消毒液と8つの穴が開いたパネルを取り出す。

 ゲタって前世では呼んでたが、ICソケットだ。

 奴隷のように直接チップを刺すと皮膚や神経ごと削らないと取れなくなるので、こういったソケットを間に挟むと取り外し可能になる。肌色タイプをチョイスしたので、チップを外すと素肌と変わらない。

 前世の物よりも薄くて小さい。

 ICソケットをタチアナの肩に触れさせ、位置決めをする。

 場所が決まったら消毒液で洗浄し、肩とソケットをテープで仮固定。


「ヒデキ、消毒液つけすぎよ、冷たいわ」


 タチアナははしゃいでいるが、カラ元気なのが分かる。声が震えているからな。

 ここからが本番だ。

 タチアナを見る。

 緊張感あふれる顔で頷いたので、俺も頷く。


「オペ開始」


 パネルに空いた穴に、針を差し込んでいく。

 すさまじく細いので刺す時は無痛だ。

 タチアナの表情も変わらない。

 ここまでは。

 リンパ節周辺まで届いた。ちょっと力を入れる。


「ッ……!」


 タチアナが涙目になりながら唇をかむ。

 おっと忘れていた。

 木を布で巻いたものをタチアナに噛ませる。


 刺す時痛くない針が今痛い理由。

 それは目的の場所まで針が到達したため、魔力を少し流して針の先を溶かしたからだ。

 今はチクチクするだろう。針の先から人工神経網が神経を探して周りを刺激しているはずだ。

 でもこうしないと、神経の近くを針が通っているかが分からないから仕方がない。


 そして、神経を刺激すると言う事は、とても「痛い」のだ。

 虫歯で神経を取ったことがある人は、神経を直接刺激されたことがあると思うので分かると思う。

 それもない人は、別に爪の間じゃなくてもいいので、指先を針でプチプチ刺して血を出すと言う事を想像したらわかりやすいかな。

 覚悟していてもビクンビクンする。リアルに「あっあっあっ」ってなる。

 神経を直接刺激されると言う事は、そういう事なのだ。


 痛いなら麻酔をかけたらいいかもしれないが、それをすると、今度は針が神経の近くを通っているかどうかが分からないのだ。何せ麻酔で麻痺しているのだから、人工神経が神経パルスを探し出せない。

 結局は麻酔をかけないまま神経を探す必要があるのだ。

 しかもそれなりに太い神経じゃないと意味が無いと言うのがまたひどい。


 話がそれてないけど本題からはそれた。

 針の先はだいぶ溶けて、わずかに伸びた人工神経網が、リンパを取り巻く神経回路と結びついた事が、微妙な引っ掛かりで分かる。

 ICソケットに針を固定して、ソケットに触れて魔力を通して針を最後まで溶かす。

 勢いよく(とは言っても肉眼で見たら遅々たるものだが)人工神経回路が形成され、周りの神経を刺激しながら神経接続を形成する。

 針を溶かした近くに神経回路が無ければ、より長い距離を神経回路形成のために人工神経が暴れまわるので、出来るだけ神経回路の近くで魔力を通さないといけない。今回はだいぶ神経網の近くで処理できたようだ。


「うううううう……!」


 タチアナが木片を噛みながら涙を浮かべて呻いている。

 助けを求めるようにこっちを見ているが、我慢しろ、とだけ言って左肩を抑える。

 体はグネグネ動いているが、左肩だけは決して動かすまい、と手首を掴まれた左手が青くなるほど、右手に力を入れている。

 分かるぞタチアナ、最後の定着は痛くはないけど凄くジクジク熱くて痒いんだよな。

 感覚としては歯医者の後、麻酔が切れて感覚が戻ってくる唇に似ている。

 数十秒で収まるから我慢だ。

 しばらく経って、症状が治まったのかタチアナの呼吸が治まった。

 視線はまだこっちを見ているが……こっちは目線に困るな。


 布を巻いたにもかかわらず唾液を吸いきって尚、溢れてしまったのか。

 木片から涎がしたたり落ちる。

 しかしタチアナはこぼれる涎をどうにかしようと言う余裕もなく、太ももに垂れる涎をそのままにし、息を荒げている。

 目は半目で涙を浮かべており、一生懸命我慢したからなのか、目がトロンとして実に煽情的だ。

 ううむ、なんというか、エロいな。


 しかし俺は心を鬼にしてタチアナに言う。





「あと7本だ」




 タチアナが泣いた。





 3本目から鼻水が出て、6本目で粗相をして、8本目が終わり、ICソケットにオペアンプを設置、俺の魔力で動作確認をし、俺が「終わりだ」と伝えた声に安堵したのか椅子から崩れ落ちた。


 まぁ痛みに耐える練習をしていないとそうなるよな。

 歯医者の経験があってもイテテってなるから分かる。

 汗をかいたので、俺も風呂に入りたいが、スボンを盛大に濡らして地面に倒れ、たまにピクッと痙攣するタチアナをみて、仕方ないなと風呂場に連れて行く。

 シンジュシティは都会なのでちゃんとした風呂があったので助かる。


 生体型ICソケットの良い所は、錆びない事、水に弱いパーツを外せばすぐに洗っても大丈夫な所だ。

 外すときには痛みは無い。魔力を止めているからだ。

 魔力を通したまま外すと、肘をぶつけた時のようにジ~~~ンと痺れが走る。


 タチアナは今日は両腕がまともに動かないので、俺が洗ってやる。

 俺はタンクトップに短パンと言う軽装だが、タチアナは何もつけていない。

 エロいとは思うが、びっくりするくらい全然興奮しないな。妹だからか?


「うぅ~まだヒリヒリする気がする」

「明日には何の違和感も無くなってるから安心してな」

「なんでわかるのよ」

「ほれ、これ」


 そう言って俺はタンクトップをたくしあげる。

 ちょうど心臓の直上あたり、5ミリほどの場所に、幾つかの回路が並んでいる。

 表面実装で、タチアナの回路と同様にとても薄く、シールでも貼っているかのような外観だ。

 タチアナのようなワンチップ構成とは規模が違う。


「ヒデキ……いつのまにそれを?前そんなのあったっけ」

「アサクシティから出発する前に、ちょっとな。ちなみにこれ全部計測センサ。制御だとか出力上昇とかはやってない。それやると俺の場合、魔力の成長に影響が出るからな。タチアナは大丈夫だ」

「あんなに痛いのをこんなにやったの?ヒデキって我慢強いのね……アタシは当分いいわ」

「好き好んでやってるわけじゃないさ、必要だからだよ。今日はもう休んだ方が良い」

「……そうするわ」


 タチアナをベッドに放り込むと、数秒で寝息を立てた。

 緊張しっぱなしだったのだろう。しっかり休むと良い。

 俺はまだ眠くないし、宿の部屋にはキッチリ鍵をかけて、1階の食堂で酒を飲むか。

 タチアナが二等国民であり、ホテルの一室に寝かす事に一抹の不安を覚えたので、ホテルの管理人に聞いた。

 奴隷の印がある二等国民なら当ホテルでも宿泊に問題は無い事・宿泊者の荷物を守る事はホテルとしての責務であり、それは奴隷の印がある二等国民の安全をも意味しているとの事だ。

 安心した。よしおさけをのもう。



 しばらくすると花街に消えていった男の姿があったと言う。

 誰とは言わないが、気持ちよかったです。またきたいと思います。


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