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中間管理職のおっさん、一万八千年後の未来へ。  作者: youli
第二章:転生から沖縄まで
12/61

■7-2:この世界の人々は

6/5 一部削除しました。話の流れに変更はありません。

 あらすじ

 ゲームセンターの筐体が大きいと思ったら人類が小さくなっていた。

 体はこびと!頭脳はおとな!




 ……まぁ赤青黄色の奴隷を土から引っこ抜くゲームの主人公が約2㎝だが、そいつらでも宇宙を旅しているんだ。

 きっと俺だって宇宙を旅してイチゴに見える原生動物を駆逐するんだ。

 いかん混乱している。


 日本人だけなのだろうか。それとも世界上の人々が小さくなったのか?

 自分がなんだか人間ではなくなったような気持ちになる。

 心臓が急に早く動き出す。たぶん俺の顔は真っ青になってると思う。


「人類……小さくなったのか?」

「ヒデキ? 急にどうしちゃったの?」


 突然意味不明な言葉を吐き出した俺を心配して、タチアナが顔を覗き込んでくる。

 俺でも逆の立場なら病院の受診を推奨するだろう。

 俺は昔の人類は大きかったこと、今の人類は凄く小さくなったこと、このゲームをやりたかった事を伝えた。

 最後のは余計だがまぎれも無い本心だ。

 ショックを隠せない俺に、タチアナは頭をかきながら言う。


「よくわからないけど、昔は大きな人が居て、今はもう小さくなったんでしょ? 人間だって、昔は猿だったのよ。その頃と比べると大きくなったじゃない。それが小さくなっただけで何の問題があるの? それでいいじゃない」

「いやまぁ、それはそうなんだけど、なんで?って思わないの?」

「気になるといえばなるけど、気にしてもしょうがないからね」

「うん……分かった。でもやっぱり、ショックだわ」


 半ば混乱したまま、次に歴史資料館に行って見た。

 お目当てはもちろん漫画と同人誌だ。


 結論から言うと、漫画も同人誌も無かった。

 大抵が技術書や指南書といった専門誌しか無かった。

 ある意味昔のアキバなんだが、ちょっと微妙。

 周りの人に聞いても、漫画も同人誌も知らないと言う。

 世界に誇る文化は何処に行ったんだ?

 妖精は残ってるのに。


 疑問に思う数秒、町を取り囲む砂漠と町の中の3階建ての建物がほとんど存在しない現状を見て、何となく納得がいく。

 頭に手を当てながら思案する。


 これは俺の推測なのだが、そういった印刷物、特に同人誌はそうなのだが、自分の妄想というか表現したい気持ちを外部に出したものだ。

 もし科学が進歩しまくって、情報の発信がとても簡単になってしまった世界では……

 誰も同人誌を書かない。書く必要も無く自分の妄想を発信できるのだから。

 そのデータ量はとんでもないことになったことだろう。人間の妄想をなめてはいけない。特に日本人はぶっ飛んでる。

 おそらく加速度的に増えるデータを前に、後世に残すデータの取捨選択を迫られたに違いない。

 同人系は期間を決められた一時的なデータとして後世に残さず削除された可能性は高い。

 そうでなければ、アキバに同人誌がないわけないだろう。

 落ち込むを通り越して涙が出てきた。

 あの作品の続きはもう読めない。

 俺の生きる意味は……無くなってしまったのか?

 いつしか俺は頭を抱えてしゃがみこんでいた。



「ヒデキ……? 顔色悪いよ? 大丈夫?」

「あ、あぁ、大丈夫だ。タチアナ、すまん、大丈夫だ」

「そ?ならいいけど……もう宿に戻って休もうか?」


 立ち上がりながら答える。

 心配してくれるタチアナに、ちょっと癒された。

 歴史資料館を出る方向で歩きながら、頭はフル回転している。


 生きる希望は結構ガリガリ削れたが、俺にはタチアナがいる。

 周りを取り巻く環境はベリーハードでも、初期の人間関係はベリーイージー。

 高校の時に妄想した異世界転生だとハーレムが基本だが、俺は何人もの女性を手玉に取れるほど器用ではない。

 小さい時から一緒に育ったタチアナは、もはや家族過ぎて恋愛感情の沸かせ方がよく分からない位身近な存在だが、まぁ妹だし、コイツを守ることが当面の俺の生きる意味だ。


 もちろん漫画同人誌は探し続けるがな!

 そんなに漫画同人誌が大事かって呆れられそうだが、すまん、大事だ。

 だいじって言うか、おおごとだよ!そらそうよ!


 カレーに例えよう。想像してごらん。

 ここにカレー(漫画)が凄く好きで、毎日1回はカレー(漫画)食べ(読ん)ている少年が居る。

 この種類(作家)カレー(漫画)が好きで、あの(出版社)カレー(雑誌)は高いけど美味し(面白)い、もはや人生の一部がカレー(漫画)と言っていい。自分でカレー(漫画)作る(書く)のも好きだし、1日5杯6杯(5冊6冊)食べる(読む)こともある。

 そんな彼に「今日からカレー(漫画)禁止ね」と言ったらどうなる?

 誰かから血が出る未来が見えるだろ?


 今俺は誰かから血が出そうなのを我慢しているところなのだよ。

 考えててカレーが凄く食べたくなった。


 ……何とかなった気がする。

 自分の心の整理が出来た気分になったからだろうか。


 妖精さんとさよならして宿に戻った。

 ……この時、今日の会話をずっと妖精に聞かれていた事を、俺はすっかり忘れていた。

 後々影響が出てくるが、今気づく事はなかった。



***



 次の日……今日、実は俺の誕生日。タチアナが朝から祝ってくれた。

 わぁいダンゴ虫のスープだぁ(白目)

 15歳になった。立派な成人だ。酒も飲める。


「ヒデキ、まだ落ち込んでるの?アタシに言ってごらんよ。何か分かるかもしれないよ」

「えぇ……タチアナに言ってもわからないだろう。読みたい本が無くなったんだぞ」

「何言ってるのよ。せいぜい一つの町で見つからないくらいで。大体この町は図書館も無いでしょ、本に執着の無い町じゃないの? 本の沢山ある町に行けば本なんてすぐ見つかるでしょう?」

「いや、アキバは昔から同人……おいタチアナ、もう一回言ってくれ」

「本に執着の無い町?」

「その前!」

「この町に図書館が無い?」

「それだ!」


 図書館。

 西洋の話になるが、町を作るうえで必要なものが3つある。

 広場と、教会と、図書館だ。

 町を作るシミュレーションゲームでも年齢を問わず知能を上げる優秀な施設。それが図書館。

 この街には資料館はあったが図書館はなかった。確かにその通りだ。

 なぜ秋葉原から同人誌が無くなったのかはわからないが、事実は事実だ。


 次の目的地が決まった。


 神保町と永田町だ。

 急に元気が出てきた。


「ねぇ、図書館が無いのはいいけど、大丈夫? 変な顔してるよ?」

「顔が変なのは元からだ、ほっとけ。俺は神保町に寄ってから永田町に行く」

「ナガタチョーが何か分からないけど、行くところコロコロ変えるなんて優柔不断ね。でもま、元気になったならそれでいっか」


***


 夕方、町のレストランでこの世界初めての酒を飲む。

 アキバのレストランと言う事で萌え的な所を期待していないわけじゃなかったけど、思いっきり場末の酒場だった。

 凄いだろ、これでもそれなりに高い所選んだんだぜ。

 この喧噪、分かりやすく言うと、飲み放題2時間2000円くらいのランクの居酒屋だ。

 逆に分かりにくいか。


「ヒデキは最近虫嫌いみたいだから、虫じゃない料理を頼んであるよ」

「でかしたぞ!でも、そのな、ダンゴ虫はほどほどなら、うん、いいぞ」

「なんで上から目線なのよ」

「いやその、タチアナの料理なら美味しいから好きだ」

「あっそう」


 最近タチアナの態度がだんだん冷たくなってる気がする。

 でも口元は全然冷たくない。すっげ嬉しそう。

 リアルでツンデレって疲れるって思ったけど、こういうのなら良いな。

 根っこは純情な感じで。


 話がそれた。目の前の飯に集中しよう。

 こういうのさ、異世界の酒的な感じで、極端に美味いか不味いかのどっちかだと思ったんだけど、普通の焼酎でした。

 や、美味いよ?

 材料を聞いたら芋だった。虫じゃない。セーフ。

 もう俺虫恐怖症になってるんじゃないか?食べ物に交じってないか常に心配だぞ。

 入院した方が良いかもしれないが、中二病と診断されるのが怖いので病院に行けない。


「……だからヒデキはもうちょっと私を大切にすべきなのよ!」

「あぁ、そうだな」

「聞いてる? もう大人になったんだからちゃんとしてよね!」

「…あぁ、そうだな」

「明日はどうするの?トーキョーに行くって言ってたけど歩きなの?」

「……あぁ、そうだな」

「ねぇ私の事好き」

「あぁ、そうだな」

「まじめに答えてよう」


 タチアナはお酒を飲んでないはずのにテンションが高くて面倒くさい。

 雰囲気に酔ったのか、眠たいのをテンション上げて我慢していたのか、ふぅ、と一息ついてテーブルに肘をついたとたんに寝てしまった。

 気になったのでタチアナのコップの匂いを嗅いだら焼酎の匂いがした。



 こいつマジかよ。




 タチアナとの会話が途切れた事で、周りの酔客の話し声が聞こえてくる。

 こういうの聞くとたまに面白い話が出てくるんだよね。


「宇宙人? 居るぞ。太陽から来るんだ」

「マジかよすげえな宇宙」

「でもUFOが空に浮かんでるだけで地上には降りてこないんだ。」

「マジかよビビリだな宇宙」


 ……まさかだが、文明が衰退したのって宇宙人との戦争のせいじゃないよな。

 文明の進歩を見張っている天元突破なアニメを思い出してしまったぞ。大丈夫かコレ。

 まぁ酒場の与太話だ。

 ビビリな宇宙人なんてガセは置いておこう。

 明日はトーキョーへ行くんだ。

 そして永田町だ。


 再びグラスを傾けて、明日からの予定を思案する。

 あぁ、焼酎うめえ。



***



 レストランで清算して宿に戻る。タチアナは俺の背中で揺られている。

 この年になっておんぶである。

 途中でタチアナが、ぼそっとつぶやく。


「ヒデキィ…置いていかないでね」

「起きてるのか?」

「ヒデキィ…」

「寝ぼけてるのか…いやこの流れはアレか」


 排水溝の近くに行ってタチアナをおんぶから降ろす。

 そのまま背中をさすって


「はいオロロロしてー」

「オロロロー」


 うむ。やはりな。

 背中が汚れずに済んだ。

 口の周りを拭いて水を飲ませる。


「ヒデキー」

「なんだよ酔っ払い」

「きぼぢわどぅい」

「そりゃそうだな」

「だっこ」

「はいはい」


 抱っこはしんどいので、おんぶする。

 さ、帰ろう。

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