二人の日記
11月22日(水) 雨
夏芽は実に惜しい人間だ。
惜しい人間とは妙な表現と思うかもしれない。
今日の朝のことだ。彼女は毎朝僕より早く起きてコーヒーを淹れてくれる。実に気の利いた女性だと思う。それに彼女は僕がコーヒーと一緒にクッキーがあればそれだけで一日中ご機嫌になるということも知っている。
しかし、今日の朝はクッキーではなくポテトチップスがコーヒーとともに出てきた。
僕は夏芽を呼んで何故ポテトチップスを出したのか問いただした。もちろん努めて冷静にだ。怒鳴りつけたりなんかしていない。
それにもかかわらず夏芽は泣き出してしまった。言い訳もひたすらクッキーが無かった事を繰り返すだけでポテトチップスを選んだ理由を答えてくれない。
困った僕は小さい彼女の体を抱きしめて泣き止むまで待つしか無かった。
11がつ2にち すいようび あめ
きょうはクッキーがなかったの。
だから、なにか出さなきゃとおもってそれでいつもはかねださんがわたしにくれるおかしをもっていったの。
でも、かねださんにはなんでクッキーをもってこなかったんだっておこられちゃった。
わたし、なんだかかなしくなっちゃってないちゃったの。
ないてるわたしをみて、かねださんこまったかおをしてた。
そしたら、なんにもいわないでわたしのことなきやむまでぎゅっとだきしめてくれた。
あったかかったけどなんだかちょっとこわかったの。