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妄想のサモナー(召喚士)◆闇の女神に気に入られて◆  作者: 小林寺
まずは召喚士を目指そう
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昇級試験(3)

「見えて来た、アレが試練の洞窟だぜ」


 道中特に何も無く、しいて上げればリーガルが二日酔いらしく、途中で何度か2人を残して草むらの影へ隠れてグロ注意だったくらいである。その二日酔いもバニアのヒールによって完治した。おぉファンタジー!

 そして今、目の前の岩肌にはポッカリと大きな穴が開いており、ここが冒険者ランク2へ進む為の昇格試験会場[試練の洞窟]である事をリーガルの言葉で認識する。


入口まで進むと、挑戦者を待ち構える様な大きな入口は両端に呪文も彫られた柱が建っており、その柱から薄く青い膜の様な者が張られている。これが結界なのだろう。3人がお互いの顔を見合わせ、覚悟を決め中に入る。


「よしっ!そんじゃま入るぞ!」


「オッケー、いっちょやったりますかっ!」


「が、がんばりましゅっ!あっ、ましゅっ!」


 またもや猛烈に噛んだバニアは顔を赤く染めた。


「バニアさん良く噛むなぁ…早口言葉とかで練習してみたらいいんじゃない?」


「ハ、ハズカシイ…早口言葉ですか?」


「たとえばそうだなぁ、赤まきがみ、あおまぎがび、きガッッ!!」


【エレメントヒール!】


「坊やも全然言えてねえじゃねえか…」


 口から赤い液体を垂らし出たセヴンに即座に回復魔法をかけるバニアは、ヒーラーとしての状況判断能力が高そうだ。ともかくそんなこんなで中へと歩を進めた。


 中に入ると思ったほどにデコボコしておらず自然そのままと言う感じではなく、人の手が入ってしっかりと舗装されており、10メートル間隔くらいで結構な光量の光石が天井に埋め込まれていて、中は十分な視界を確保されている。松明など不要のようだ。


「さあここからは俺は後ろで待機してるからな、後は気にせず2人で進んでくれ。後方確認なんかも俺はしないからな?しっかり後ろも気にしろよ?」


「了解!それじゃあ俺が今回は俺が前に出るから、後ろはバニアさん頼んだ」


「はい!頑張ります!」


 しっかりと言葉が紡げた事を安堵した表情を浮かべるバニア。普通なら戦士系の者が前衛、魔法使いは後衛が基本なのだろうが、どこか頼りないバニアを前衛を任す事は危険と判断し、セヴンが前を進む形になった。

 周囲を警戒しつつ奥へと進む。ほどなくして進行方向から異臭が漂ってきて、何かを引きずる音が聞こえて来る。


「出たかな?バニアさん注意してね」


「はい」


 現れたのは両手をダランと垂らし、首は本来曲がらないであろうほど横に傾け、足を引きずる様に歩いて来る人型アンデッドモンスター[グール]である。


「まずはコイツからっ!」


【ウィンドカッター!】


 風の刃の円盤が[グール]の頭部目がけて走る。


 ズシュッ!コロンッドサッ…


 あっけなく頭部を破壊し、胴体は力なく倒れモンスターは崩れ去る様に消えて行く。


「あれっ?なんかあっけないな?」


「一撃なんてセヴン君すごいです!」


 あまりにもあっけないモンスターに、そんなに凄い事でもなさそうな顔をするセヴンに称賛を送るバニア、その後ろからは腕を組み少し驚いた表情をし何か言いたげにこちらを見ているリーガル。だが何も言わず、試験官として無言を貫く様だ。


「何か拍子抜けしちゃったけど先へ進もうか」


 この洞窟のモンスターは通常レベル20を迎えたメイジのウィンドカッターならば、良いとこ2発、悪くて3発といった程度なのだが、装備が何段も上であるセヴンにとっては一撃で倒せて当たり前。

雑魚とは違うのだよ雑魚とは!

 その後遭遇する各種お馴染みアンデッドモンスター、動く骨の[スケルトン]、半透明の体を持つ[ゴースト]、紫色に淡く光球体[ウィスプ]などを、これまた一撃で倒しながら先へと進む。

 現時点では接戦などは無い為割愛させていただきます。



 バニアの出番は殆ど無く、迷路と言った迷路でもない洞窟を更に深く進んでいくと、眼前に一段と明るい部屋が見えて来る。中は結構な大きさの広間であり、その広間の奥にはこの部屋の明かりの原因とも言える光る泉があり、その泉に続く様にまだ洞窟が続いているのだが、ここから先は天井も壁も舗装されておらず、ここが終点だと言う事を示している。

 光る泉はどこか神秘的なイメージを持ち、よく見れば光の粒子を飛ばしている。


「おうっ!コレが[女神の涙]だ」


 先ほどまで一切の言葉を口にしなかったリーガルがやっと解放されたと言った表情で声をかける。


「この泉の水を汲めば、もう試験は終わりの様なもんだ。それにしても装備のお陰っちゃお終いだけど、坊やお前これじゃ試練になんねえぞ」


 苦笑いしながらもここまで簡単に来れた事を褒めるリーガル。


「なんかモンスターも雑魚ばっかだし、大した事なかったな。本当に拍子抜けだよ」


「私なんか、ほとんど何もしないで試練クリアしてしまって…」


 そうぼやきながら、2人は持参した瓶に泉の水を入れ栓をする。


「いやいや、本当はもう少し時間かかったり苦戦したりするもんだぞ?だから携帯食も持って来いって言った訳だし、坊やが特別なだけだぜこんなの」


「あ、バナナ食べます?」


((持って来たんかいっ!!))


 バナナを幸せそうな顔でハムハムと食べているバニアに何か癒されながら、和やかな空気がそこにあった。


「よしっ!そんじゃま、ここまでの様子じゃ余裕だろうが、家に帰るまでが遠足だからな?気を引き締めて街まで帰るぞ」


 食べたバナナの皮を紙で包み、鞄に入れて立ち去ろうと動き出すと、突然周囲に不穏な気配が充満する。3人の目の前に、小さい豆粒ほどの黒い球体が現れる。そして突如現れたその球体は徐々に大きく膨らんで行き、3人を飲み込むほどの大きさにまで膨れ上がる。

 

 ガチャッ…ガチャッ…ガチャッ…


 金属を擦り合わす様な音を立てながら、球体から現れたのはロングソードを手にした全身甲冑フルプレートアーマーで、全身が黒く、所々血の色にも似た赤の装飾が施されている。そして唯一中身が見えそうな目の部分には、淡く光双眼のような物が見える。

 そのフルプレートアーマーが全身を黒い球体から現すと、黒い球体は収束し、最後には消えていった。


「あのぉ…どなたでしょうか?」


 突然現れたフルプレートアーマーに恐る恐る声をかけてみるセヴン。しかし後ろでは2人の顔がみるみる青ざめて滝のような汗が噴き出していた。


「ばっ馬鹿っ!!ソレの頭上を見てみろっ!!」


 その叫び声を聴き後ろを振り返ってみると、2人の表情が凄い事になっている事に首を傾げながら、セヴンはもう一度フルプレートメイルに目を向けて、少し視線をずらし頭上を確認する。

 [アビスナイト]その文字は現在のレベルでは到底敵わないモンスターを表す真っ赤な色で表示されていた。


『ガァァァァァァァァァァァッ!』


「ほでゅあぁぁぁあああああぁぁあっぁぁあぁっ!!!」


 言葉にならない声が洞窟内に響き渡る。


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