なまむぎなまはげなまたまご
色々と自分で気が付いた問題点や矛盾点をさかのぼって修正しました。
アビスの街には朝日が出る事はない。常に薄暗く、街の頭上にある満月のような物が1日かけて満ち欠けする事により、大体の時間を表し、闇の女神ヘラの加護下にある事を示している。名を[アビスの瞳]と呼ぶ。
その[アビスの瞳]が1周し、また光が少し強くなって来た頃、冒険者になってからの常宿からセヴンは出て行く。
新たに手に入れた装備と力を試す為、少年は街の外にある危険な森へと出かけるのである。
「ふぁぁぁ~っ、まずは適当に常時討伐クエストのゴブ掃除でもするかな」
冒険者ギルドで発行されているクエストの中には、常時指定されたモンスターのドロップ品を持ち帰る事により、報酬を貰えるクエストがある。個人で金策が出来る様になるレベルやランクの高い冒険者ではない、まだまだ駆け出しの冒険者にとっては日銭を稼ぐのに丁度良い。冒険者ギルドのある拠点となる様な場所で、増えすぎたモンスターが減ると言う事も、安全面で良い事なのでお互いの為なのである。
街から離れ、ほどなく進むと、茂みの中から気配がする。
ヒョコッと顔を出したのは緑色の肌をした醜いモンスターだった。そう[ゴブリン]である。今まで何度も倒した事のある亜人種のモンスターで、ドワーフよりやや小さいくらいの身長をしており、あまり食べてないのか痩せていて、手には棍棒が握られている。
「お?居た居た、まずは早速1匹いただきますか!」
探していた獲物を発見し、新しい杖に魔力を込めようとした時、こちらに気が付いた[ゴブリン]は逃げる様に踵を返し、茂みの中に引っ込んでしまった。
「逃がすかよぉ!」
すぐさま追いかけよう駆け出した時、茂みの中からワラワラと緑色が湧いて来た。どうやら仲間を呼んだらしく集団でのお出ましのようだ。
「ぬわぁっ!ちょっ!多いって!」
パーティを組んだ戦闘なら集団相手でも戦い方があるだろうが、冒険者になって以来ボッチで狩りをしているセヴンにとっては集団で来られると、逃げるか寄って集ってボコられた挙句転がるかどちらかだろう。その数6匹。その後ろから一回り大きな体をした[ゴブリンチーフ]が2匹、さらに兜を被った[ゴブリンリーダー]1匹まで出て来る。
「ふぉっ!?多い上にリーダーまで居るってどうなの?【幸運】さん仕事してますかっ!?」
【ウィンドウォーク】
答える者は居る訳ないのだが、文句を言いたくなる状況に怒りを隠せない。補助魔法で足を速くし、すぐさま逃げ出そうと走り出す。少ししてから後方を確認すると、ヤァヤァヤァヤァッと人外語を叫びながら追って来る集団。
そしてこの不条理な状況と【幸運】の称号に怒りが込み上げて来ていたセヴンは突然振り向き杖を集団に向ける。
「まだ効果はわかんないけどムカついたからコレでも喰らえっ!」
【ダークプリズン!】
ひとまずただ逃げるのも癪に障ったので、破れかぶれに覚えたての魔法を振り向きざまぶち込んでみる。
[ゴブリン]達の集団の足元に大きな魔法陣が浮かび上がり、その後集団を包む様に半透明の黒いドーム状の物が現れ、集団を閉じ込める。
「おぉ?なんじゃこりゃ?」
そのドームの中からは出られないであろう事を確認し、おそるおそる近づき杖で触ってみると、プニプニした手触りでとても頑丈そうには見えないのだが、閉じ込める事に成功しているようだ。
『ヤァヤァヤァヤァッ?』
『ヤァヤァ?』
『ヤァヤァヤァヤァヤァヤァヤァヤァヤァッ!?』
閉じ込められた[ゴブリン]達は混乱してお互いを見合ったり、怒りをムキ出しに地団太踏んでいる者まで居る。その様子を見て子供が泣いて逃げ出すくらいの悪い笑みを浮かべるセヴン。
「ヌヒョヒョヒョヒョッ、こりゃ良いや。ほんじゃまっこのまま実験台になってもらいましょかねっ!」
【ウィンドカッター】
風が舞い上がり円盤の形を形成しドームを通り抜け、手前にいた[ゴブリンチーフ]に襲い掛かり、一撃で粉砕する。
「ほうほう?外からは中へ通るんだ?アレ?しかもさっきのチーフだったよな?一撃??まっんじゃもひとつぅっ!」
【ロアー】
昨日までは[ゴブリンチーフ]に魔法をぶち込んだ所で5~6発は倒すのに必要だったのだが、1発で倒せた事は、新しい魔法の力もそうだが、新調した杖の効果も大きい。魔力が大幅に上がった事で、魔法を少しくらい連発した所でお座りタイムしなくて良いのだ。
新たに唱えた魔法は[ゴブリン]に当たり、元々悪い顔色を更に悪くし、ドーム内の反対方向に向かって駆け出し、そのままドームの壁を掻き毟り必死に逃げ出そうと暴れだした。
「コレはアレか?恐怖を与えて逃げ出させるとかなのか?まっ大体そんなもんだろう、お次は…」
【ポイズンミスト】
ドーム内の地面から紫色の煙が湧き出しドーム内に充満し消える。すると中に居る全てのモンスターが苦しみもがきだし、パタパタと[ゴブリン]が順番に倒れて行く。まだ辛うじて立っているのはリーダー1匹とチーフ1匹。しかしその2匹も体から紫色の泡がポコポコと吹き出し、持続的にダメージを受けている様だ。そして遂にチーフもその場に倒れこむ。
「この魔法は名前の感じで毒の霧って事だな、しかも結構エグイ威力だな。お?チーフも倒れた?こりゃ毒の持続時間もなかなかだな。ほんじゃ最後の仕上げにっ!」
【ダークボルテックス!】
今度はドーム内に黒い巨大な渦巻きが発生し真っ暗になる。ジワジワと黒い渦が晴れて行くと共にドームがパチンッと音を立てて消え去る。ドームが消えた事により身構えるが、襲って来る者は無く、ドームがあった場所にはいたる所にアデナとドロップアイテムが散乱していた。
「ウマーーーーーッ!ってかスゴーーーーーッ!」
昨日までなら考えられない様な効率の良い狩りに歓喜の声をあげる。
通常同レベル帯の冒険者達が2人でなんとか、3人以上で安定して狩れるような集団をあっと言う間にたいらげてしまったのである。しかもパーティを組むと経験値は分散されて入るし、ドロップアイテムはのちに分ける事を考えると独り占めしたのは大きい。
そそくさとアデナとアイテムを拾い集め次の獲物を探す為、その場を後にする。
その後も大き目の[ゴブリン]の集団に突っ込んでは、囲んではボフンッ!囲んではボフンッ!っと毒と黒い渦巻きをまき散らし、鬼気迫る表情で[ゴブリン]の集団を探し追いかける姿は、正にアレであった。
「ゴブリンはいねぇがぁぁ~?」
ノリと勢いだけで書いています。感想頂けたら喜びすぎてオナラが出ます。