女神の悪戯
少し長いです。
アビスの街へと帰り着いたセヴンとバニアは冒険者ギルドへと報告しに行く事にした。
今考えてみると今回の転職クエストを受けた当初は、サモナー達が全員隠遁した生活を送っている事に疑問を持ち、やはりサモナーと言う職業は孤独な物なのだと考えていたのだが。クエストで知り合った歴代の引退したサモナー達を見る限り、全員が全員ただ一般人に混じって生活が出来ない社会不適合者の様に感じてしまうのは気のせいだろうか…キャラが濃すぎる、性癖が濃すぎるのも考え物である。
冒険者ギルドに到着し、カウンターに居るナッツの元へと向かう。
「こんばんワイルド!ナッツさん、無事クエスト達成で念願のサモナーになる事が出来ました!」
「こ、こんばんワイルド…良かったわねセヴン君、なんか矢継早にポンポンとレベル上がって、あっと言う間に転職しちゃったわねぇ。本当に規格外だけど心から祝福するわ、おめでとうセヴン君」
「ありがとうナッツさん!」
「それでソッチに居るのがセヴン君が呼び出した存在かしら?なんと言うか…凄い恰好ね…。セヴン君の趣味かしら?ううんううん、良いわやっぱ止しとく」
セヴンの呼び出した存在の開放的過ぎる姿と、その零れ落ちそうな双丘を見て、何かを言いたげだったが、何事にも動じないスルースキルをMAXに発動させていた。
「バニアちゃん、女は胸の大きさだけじゃないのよ!頑張って!」
「は、はい!私も頑張ります!」
何を頑張るのか今一解らないのだが、なぜかナッツはバニアの肩をポンポンと叩き励まし、バニアはバニアで両手で頑張るのポーズを取っていた。
そして確認の為に何時もの石版へと手を置き、ステータスを表示させる。
●ワイルド・セヴン(16歳)
[種 族]:ダークエルフ [クラス]:サモナー(new)
[レベル]:40
[アビリティ]:召喚、帰還、創造レベル1
[スキル]:ダークボール(闇)ウィンドウォーク(風)ポイズンミスト(闇)ウィンドカッター(風)ダークボルテックス(闇)ロアー(闇)ダークプリズン(闇)カームヒール(風)ジャドーバインド(闇)チックタック(闇)?????(new)?????(new)?????(new)
[称 号]:冒険者ランク3、見られる者、異常快楽者、女神の玩具、幸運、ワールドレコード、?????(new)
「なんか不鮮明なスキルや称号があるけど…まったくあんたは不思議な子ね。でもしっかりとクラスと冒険者ランクは変更されているわね。それで今後はどうするの?」
「そうだね、バニーが良ければ精神的な消耗が激しいので明日1日休息を取って、明後日にはこの街を出てバニーの故郷のエルフの国へと向かうつもりかな」
「そんな、私の都合よりセヴン君の体調の方が心配です。しっかりと休んでからでお願いします」
「良かったわねバニアちゃん、遂に故郷に帰れるのね。でも寂しくなるわね、いきなり弟と妹が居なくなるって思うとね…」
いつも笑顔で見守ってくれているナッツの顔が悲しさで歪んでいる。
そしてソレを見たセヴンとバニアはお互いを見合わせ、同時にナッツへと向き直り胸をドンッと叩いて同時に喋る。
「また戻って来るよお姉ちゃん!」
そしてセヴン達はナッツに見送られ、しばらく来る事は無いであろうアビスの街の冒険者ギルドに、何かこみ上げて来る物を感じながら別れを告げた。
冒険者ギルドを去った後、女神ヘラの言った言葉「ちゃんとサモナーになる事ができたら…」と言うのをステータス確認した際に思い出したセヴンは、バニアと別れ召喚した存在と一緒に神殿へと来ていた。
「ヘラ様、こんばんワイルド!今から向かいますね!」
いつもの様に入口の石像に挨拶をする。
『***、*******』
誰かの小さな声がガサガサと聞こえた気がしたが、聞き取る事が出来なかった。周囲を見渡し気のせいかと考え、そのまま中へと進む。
ほどなくして礼拝堂までたどり着いたセヴン。しかし今は司祭は席を外している様だ。司祭が不在でも報告として祈る事くらいは出来るであろうと、真鍮製の女神像の前へと進み膝を付き頭を垂れる。
(ヘラ様、俺もやっとサモナーに転職する事が出来ました。今日はそのご報告に来ました)
『は~い、良く頑張りましたぁ』
何時もの様に周りから体に浸み込んで来る様な声では無く、直接脳に語り掛けられている様な感覚の声に一瞬戸惑いつつ、心で念じて会話を続ける。
(何か今日は何時もと感じが違いますね?)
『それはそうよぉ?だって後ろから直接話しかけてるんですものぉ』
「えっ!?」
女神の言葉に驚きつい声が出てしまう。そして後ろを振り向くと、そこには自分が召喚した存在の女性の姿しか無い。そう、この場所にはその女性しか存在していないのだ。
「は~いセヴン君。私よわたし、ヘラちゃんですよぉ~」
「えっ、えっ、ええええええええぇぇぇぇ??」
目の前に居る自分が召喚した女性が、今の今まで一言も言葉を発しなかったはずなのに、確かに喋っているのである。そして女神の名前を口にしているのである。
「やっと直接お話しが出来るねぇセヴン君。上に居ても暇だから、直接遊びに来ちゃったぁ、えへへへ」
「ど、どゆ事っすか?俺が呼び出した使い魔がヘラ様で、ヘラ様が俺の呼び出した使い魔??」
「少し落ち着きなさいよぉ、それまったく意味同じよぉ?前回言ったと思うけどぉ地上に来る為には色々と覚悟や準備が必要で大変だったのよぉ?もっと喜んでよねぇ」
頭をポリポリと掻きながらヤレヤレといった感じだ。
「えっと、1から説明するとねぇ…」
女神ヘラ曰く、今までセヴンの行動を見ていて興味が湧いたヘラは、自分の現状がとてつもなく暇な事に嫌気が差し、最初はセヴンを使って色々と遊ぼうとしていたらしい。だがしかし見れば見るほど興味が湧いて来て、直接自分も関与してやろうと色々と策を練ったそうだ。
まずは地上に出る為の触媒となる物を部下の[アビスナイト]に持たせてセヴンに接触させる。そう、ピアスの形状にして身に着けさせた黒い石[ダークマター]である。
そして自分の身辺整理をし、ほとんどハンコを押すだけの事務仕事みたいな自分の役割を部下に押し付け、長期休暇と言う形を取り。セヴン本人がサモナーとして召喚が出来る様になる事を待っていた。
そして最後に無事転職してサモナーとなったセヴンが召喚の儀を行う時に、自分の入れ物となるこの姿を召喚させ、自分の意識を触媒を通じて送り込み、見事地上へと降臨する事が出来たと言う事らしいのである。
「…っとまぁこんな所かなぁ?」
「は、はぁ…、い、色々と大変んだったんですね…」
「も~ホント根回しとか大変だったのよぉ?でもいっか♪やっとセヴン君と直接会えたしぃ♪」
そう言ってセヴンの腕にしがみついて来た。かなりの大きさを誇る双丘がムニムニと押し付けられて、際どいコスチュームから今にもジャジャ○ルじゃない、ピッコ○でも無かった、ポロリしそうだ。
「お、ぱ、い、お、ぱ、い…ハッ!そこまで気に入ってくれてあざっす!」
「えへへへっ、それじゃぁ最後の仕上げと行きましょう」
妖艶な女神がそう言うと、2人の体が眩しい光に包まれる。そしてセヴンの体から何か色々な物が吸い出される感覚を受け、しばらくして光が治まって行くと共に虚脱感に襲われる。
「ハァハァハァ…何が起こったんです?」
「ちょっとまってねぇ、今出すからねぇ」
●ワイルド・セヴン(16歳)
[種 族]:ダークエルフ [クラス]:サモナー
[レベル]:40
[アビリティ]:召喚、帰還、創造レベル1、念話
[スキル]:ウィンドウォーク(風)カームヒール(風)ウィンドカッター(風)クリエイトサモン(創)(new)ブーステッド(創)(new)オーバーソウル(創)(new)
[称 号]:冒険者ランク3、見られる者、異常快楽者、女神の玩具、幸運、ワールドレコード、契約者(new)
「あれ?何かスキルが減ってる?でも不鮮明だった所が見える様になってる」
「説明は後ねぇ、それじゃちょっと手を貸してねぇ」
セヴンの手を取り、自分の胸へと押し当てる女神。柔らかい感触が手から伝わって来ると共に、脳内にステータス画面が表示される。
●ヘラルー
[種 族]:使い魔 [クラス]:使徒
[レベル]:1
[アビリティ]:魅了、念話
[スキル]:ダークボール(闇)ポイズンミスト(闇)ダークボルテックス(闇)ロアー(闇)ダークプリズン(闇)ジャドーバインド(闇)チックタック(闇)
「ヘラルーですか?それに俺のスキルが使える?」
「そっ、そのままヘラの名前じゃ色々と不味いからねぇ、この体の時はヘラルーと名乗る事にしたのぉ、よろしくねっ!それからそれから~、セヴン君が今まで使えてた私の属性の魔法は全てこの体に回収させてもらったのよぉ」
さっき受けた虚脱感の正体はコレだった様だ。だがまだまだ不明な事が多い、説明してもらおう。
「それからこの体なんだけどぉ、一応私の本当の姿と似せては作ってあるけどぉ、能力はまだ出来立てホヤホヤだから低いわねぇ。それと一応地上に降りて来たペナルティとして色々制約があって、本来の力の100分の1くらいの力しか出せないわぁ。でも安心してねぇ、レベルが上がると能力も上がるし、今でもそこいらの冒険者よりは遥かに上の力は備えてあるわぁ」
「なるほどなるほど、って、あれ?スキルの更新とかこれからどうしたら良いんです?ヘラさまが直接?」
「さっきも言った様に制約があるから直接その場でってのは無理ねぇ。今まで通り神殿に来てもらってぇ、ココで私が上のサーバーとリンクしないとスキルの追加は難しいみたいなのぉ。でも一般の冒険者達は部下に任せて来たからぁ、適当にやってくれるでしょぉ」
自分以外の事は全て部下と呼ばれる存在に丸投げして来た様である。職務怠慢な気がするが、それだけこの遊びに全力なのだとも言えよう。神官が礼拝堂に戻って来た事もあり、この場所でこのまま話し続ける事も無いだろうと、セヴンとヘラ改めヘラルーは宿屋へと帰って行った。
ちょっとした伏線を回収したら、なんか説明ばかりになってしまいました。
ご意見やご感想お待ちしております!