転職クエスト(3)
クエスト最後のサモナーとなる人物、逆にワザとやっているんではないかと思われる様な女性よりも女性っぽい仕草のダークエルフの男、マカオの小屋の中へと招かれた2人は、お茶を出され、それを口にし話しをしていた。
「セヴンちゃんはサモナーになりたいんだ~、中々居ないからお仲間が増えるのは嬉しいわね~」
っと言いつつそっとセヴンの手の上に自分の手を乗せて来る。
「いや、絶対に仲間にはなりません!俺はちゃんとしたサモナーになりたいんですっ!」
背中に悪寒を感じ、瞬時に手をひっこめる。
「あら~、好みとはちょっと違うけど、1から色々と教えてあげてもよかったのに~」
「マカオ、冗談はそれくらいにしてやれ」
「あ~んガチムチンったらジェラっちゃった?も~あとでいっぱいご褒美あげるから許してちょうだ~い」
「おい坊主、マカオはほっといて良いからクエストの仕上げについては俺から話してやろう。まず俺の名前はガチム。このマカオの使い魔と言う事になる」
埒があかないと踏んで、ガチムがクエストの説明に入ってくれる。
「そして坊主は今まで色々な召喚されし者を見て来たと思うが、我々は召喚したサモナーの心の中に構築された存在を魔力を使って具現化した存在なんだ。もちろん召喚した存在を元の魔力として体内に戻す事も、再召喚する事も可能だ。そして我々と会話し、姿を良く見る事で坊主にはすでに具現化する為のコツの様な物が備わってる事だと思う。召喚された存在は色々とサモナーの意思が反映されて、個性的なのが多いからな。嫌でも色々と意識して覚えてしまう事だろう」
なるほどとガチムの語る言葉に少し納得してしまう。たしかに今まで見て来たサモナーたちの召喚していた存在は、色々アレでナニな訳だったが、強烈なインパクトをセヴンに与えて来た。そしてそのインパクトこそが召喚する存在を意識し、自らの中に新たな存在を構築する上でのコツと言われてしまえば納得せざるをえないのだ。それにしても趣味全開で性癖全開なのはどうかと思うのだが。
邪険にされて両手に顎を乗せ、頬を膨らませていたマカオは、ガチムの説明の後を続け始めた。
「だからもうセヴンちゃんは、既にサモナーとしての土台は出来てるってわけよ~ん。後はセヴンちゃんの趣味や趣向などを全部ぶっこんじゃった素敵なパートナーを儀式を使って呼び出すだけなのよ~ん」
「その儀式と言うのはどうやれば良いんですか?」
「そ・れ・わ・ね。自分の髪の毛と自分の下着を召喚の魔法陣に置いて、後は人に内緒にしている性癖を大声でカミングアウトしながら叫ぶのよ!」
(マジかっ!!?)
そう思いガチムのほうを見るセヴン。ガチムは両腕を組んだまま目を閉じじっと黙っている。
マカオの言う事は若干信憑性が薄く、先ほど言われた事も想像を絶する内容だった為、まだ幾分まともそうなガチムの様子を窺って見たのだが、黙っていると言う事は事実なのだと受け取る。
「それじゃ~早速なんだけど~、流石に家の中だとアレだから、外に出て早速やっちゃいなさいよ~。召喚の魔法陣は私が最初に書いてあげるからしっかりと覚えるのよ~ん」
そう言ってセヴンの手を取りグイグイと引っ張り外へと連れ出す。多少の抵抗を試みるのだが、意外と力が強く、容易には手を振りほどく事が出来ずになすがまま身を任せた。
湖のほとりに立ち、地面に魔力を使って魔法陣を構築していくマカオ。鼻歌を歌いながら気楽に書き上げて行く。そしてそれを見守るセヴン達。
「は~い出来上がり~。後はコレにセヴン君の魔力を込めて魔法陣の主導権をセヴン君に移譲するのよ~ん。そしてさっき言った事をこの魔法陣を使ってやって、自分の中のリビドーをぶちまけちゃって~ん!」
「は…はい…下着脱ぐのか…いやいや本当に必要な事なのか?」
「まだ疑ってるみたいね~ん。私が下着を脱ぐの手伝ってあげようかしら~?」
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!自分でやります!やりますって!」
全力で拒否して青ざめながら後ずさる。そしてそのまま木陰へと隠れてから周囲を入念に確認し、下着を脱ぐ。帰って来たセヴンの手には綿の布で出来たトランクス型の下着が丸めて握られていた。
「コレと…髪の毛か」
自分の下着を魔法陣の中心へと置き、手で髪の毛をプツンッと抜き下着の上にそっと置く。そして杖を手に地面に書かれた魔法陣へと魔力を込めると、魔法陣が淡く紫色に光り出す。
「さあ!準備は出来たわ~ん。最後に思いっきり大きな声でセヴン君の秘密を打ち明けるのよ~ん!」
周囲を見渡すと、バニアはなぜか目を閉じ、祈る様に手を合わせている。ガチムはただ両腕を組み何も語らず立っている。マカオに至っては好奇心の塊の様に目をキラキラと輝かせながら両手を猫の手の逆の様にして顔の横でブンブンと振っている。正直気持ち悪い。
「た、頼むから皆耳を塞いでおいてくれないかな?」
「ダメよぉ~んダメダメ!ほら!早く終わらせないと魔法陣消えちゃわよ~ん!」
「あああああぁぁぁあっ!もうどうにでもなれっ!!」
覚悟を決めて大きな声で自分の中にあるリビドーを魔法陣にぶつける。
「人に見られる事が気持ちいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃっ!!」
ズズズズズズズズ……シュゴーーーーーーーーーーーーーーンッ!!
そう叫んだ後大地を揺らし、魔法陣が激しい光を天高く空に向けて放つ。とてつもなく大きな光で、まるで空と地上がつながっているかの様な幻想的な味わった事のない感覚である。
バチンッ!
「痛っ!」
セヴンが身に着けていた黒い幻想的なピアスがなぜか弾け飛んだ。
そしてその光が徐々に徐々にと治まるに連れて、魔法陣の上に人影が見え、そして現れたのは女性であった。
女性は肌は浅黒く耳が長く尖っている。そして例にも漏れず某異世界の峰○二子の様なグラマラス体型で、その体型を惜しげも無く見せびらかす様な、隠している場所がほとんど無いほどの露出度の高い黒のボンテージファッションをしている。
一見ダークエルフかと思われるが、彼女のこめかみの位置からは角が生えており、その角は後頭部を目指し反り返っている。そして顔ははっきりと見えず、頭に着けてある小さいティアラの様な物から下へと黒いベールが下りており口元だけが辛うじて見えている。
【ワイルド・セヴンは職業[メイジ]から職業[サモナー]へとクラスチェンジしました】
脳内にインフォメーションが流れ、体がレベルアップ時と同じ祝福の光に包まれる。
「あら~綺麗で刺激的な娘ね~ん」
「セヴン君凄いです!そして呼び出したこの女性も色々と凄いです!」
「こ、これが俺の使い魔?俺の理想??」
自分が呼び出した存在を未だに信じられない様な気持ちで見つめるセヴン。しかし長く見つめていると何か熱い物が体から湧いて来る様で、すぐさま目を逸らす。
「それにしてもセヴンちゃんは見られるのがお好きなのね~ん?今ズボンの下は丁度何も履いていないし~、私がじっくりと見てあげようかしら~ん?」
「だ、だずげでぐだじゃい」
ジリジリと近寄って来るマカオに恐怖し泣きながらガチムに助けを求める。
「マカオ!そろそろそれくらいにしてやれ!そして色々とちゃんと謝るんだぞ!」
「え~?もう終わり~?」
そう言いモジモジとしながら衝撃の事実を伝えるマカオ。
「も~ん、セヴンちゃんゴメンなさいね~ん。本当は下着も性癖を叫ぶのも必要無い事なのよ~ん。ただ髪の毛を置いて魔力を注ぐだけなの~ん」
「え?ええっ?どう言う事??」
「だから~、マカオジョーク!」
「いらんわっ!そんなもんっ!!!」
名投手も唸るほどの投球フォームで杖を投げつけマカオの気持ち悪い悲鳴が湖に響き渡る。
後で聞いた話しではあるが、ガチムは毎回同じ様な悪戯をするマカオに諦め、あえて何も言わない事にしていたらしい。そして召喚した女性型の使い魔は未だ何も喋らないのだが、マカオ曰くまだ意識がはっきりと定着して無いせいではないのか?との事であるが詳しくは解らないそうだ。
そして世間話しを少しし、日も落ち始めたので一応の礼を言い、街へと帰路につくセヴン達。
こうしてこの物語の主人公は念願の召喚士へとなる事が出来たのであった。
なんとかタイトル通りに主人公がサモナーになる事が出来ました!
本当に色々とおかしな物語だと思いますが、これからもご付き合い下さい。
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