転職クエスト(2)
15話目と同時に登場キャラの名前を変更してあります。
ゾマの庵を逃げる様に後にしたセヴン達は次の目的地の洞窟を目指していた。ゾマ達の居た庵から東へ向けて森の中を数キロ歩いたあたりで、小さい山が見えて来て、その山はどんどんと近くなってゴツゴツとした岩肌が見えて来た。
「なんかそろそろ洞窟がありそうな雰囲気だな。今度のサモナーも変に曲がってなければ良いんだけどな」
「私には理解出来なかったのですが、あの老人も幸せそうだったのでよろしかったのでは?」
「いや、うん。深く考えるのは良そう。幸せならそれが一番だよな」
「はい、幸せが一番です」
「お?話ししてたら見えて来たな」
ゴロゴロとした岩肌にポッカリと穴が開いており、試練の洞窟よりも数段小さい、人が1人立ってどうにか入れるくらいの小さな洞窟の入り口を発見した。
そのまま躊躇無く中へ侵入してみると、中は思ったよりも広く、大きな空洞が出来ていて、穴倉と言う言葉がふさわしい形状をしている。湧き水が溜まったのか小さな泉もあり、ちょっとしたガーデニングをしている庭までもあり、そして穴倉の奥には木で作られた立派な小屋が建っていた。隔離された住空間と言った所か。
「ごめんくださ~い。ターリロさんはおられますか~?」
戸の前で声をかける、すると小屋の中からトタトタトタと足音が聞こえてきて、ギィッっと戸が開かれた。
「はいはい~どちらさまにゃ?」
小屋の戸を開いて出て来たのは身長100センチ有るか無いかくらいしかない幼女。その服装は紺色を基調とした白のレースがふんだんにあしらわれたゴシック調のドレス。そしてなんと言っても幼女の頭にはネコ耳が生えていた。
「今度はこっちのタイプか~~いっ!!」
「いきなりどうしたのにゃ?お客様なのかにゃ?」
「あの、すみません動揺している様ですが、転職クエストでこちらのターリロ様に会いに来たのです」
「転職クエストなのかにゃ?めずらしいにゃ。ご主人様は奥に居るにゃ、ついて来るにゃ」
ネコ耳少女に連れられて中に入ると木材で出来たテーブルとイスがあり、そこに痩せたダークエルフの老人が座っていた。そしてその傍らには同じような服装の獣耳が頭に付いた幼女が立っている。テーブルからなんとか顔が出ているほど小っちゃい。
「ご主人様にお客様なのにゃ、転職クエストを受けに来たみたいなのにゃ」
「それはそれは珍しい、サモナーになりたい奇特な者がまだ居たとはな。ワシの名前はターリロ、もう引退して随分経ったが元冒険者だ」
ネコ耳幼女はトテトテトテとターリロの元へと走って行く。そしてターリロは傍まで来たネコ耳幼女の頭をナデナデする。耳がピコピコと動いてる所を見ると喜んでいるようだ。
「よしよし、出迎えありがとうなタマコ。ポチコ、お客様にお茶を出して差し上げてくれ」
「かしこまりましたワン」
((コッチは犬か~))
ポチコと呼ばれたイヌ耳幼女はトコトコトコとどこかへ向かって行った。未だターリロはタマコの頭をワシャシャと撫でており、時折タマコが「ウニャ」「ウニャニャ」と喜びの声を上げ、それを「えーのんか?えーのんか?」と尋ねながらもその行為は終わりを迎えない。このままだと埒があかないので話しを切り出す。
「ターリロさん、こちらの幼女達はやっぱりターリロさんの召喚した者なのですか?2体居るみたいですが…」
「そうだとも、タマコもポチコもワシの大事な娘達だ。サモナーはな、自分の魔力の容量が多くなればなるほど2体、3体と同時に呼び出す事が出来る様になるのだよ。君の努力次第ではハーレムも夢ではないぞ?」
そう言って笑顔を見せるターリロは自分では2体までが限界だったと語った。そしてそこにお茶を持ったポチコが現れお茶を配ってくれる。だがしかし何かにつまずいたのか、目の前に置かれようとしていたお茶の入ったコップがセヴンの膝へとこぼれお茶が散る。
「うわっちゃっ!」
「ごめんなさいだワン!ごめんなさいだワン!」
何度も何度も謝りながら小さい手で必死に膝を拭いてくれ、おまけに上目使いで潤んだ瞳を向けて来る。(コレはコレでありなのか?)っと心に何かが浮かんできた時、視線を感じそちらに顔を向ける。
「やらんぞっ!やらんっ!」
ターリロが色々と意味の解らない事を問い詰めて来たりしたが、自分の趣味とは違うとはっきりと否定し、人用な情報だけを手に入れ次の場所を目指す事にした。帰り際もターリロは両手で獣耳達の頭をそれぞれ撫でながら、幸せそうな顔で見送ってくれた。
「なんかサモナーの皆さんって幸せそうな方が多いのですね」
「そうだな、ある意味変人ばかりではあると思うけど、それなりに現状は幸せそうだな」
そんな感想を口にしつつ次の目的地へと急ぐ2人であった。
大体の流れは解って来たと思うので、ここからはダイジェスト版でお送りしよう。
次に向かった場所に居たのはコン・ザマと名乗る男で、召喚していたのはビッグマムと言うどこか牧歌的な雰囲気のふくよかな女性型だった。コン・ザマはビッグマムにべったりでなぜか赤ちゃんのような喋り方だったのが印象的だった。
そして次の場所にはフェチシリと言う名前の男で、傍にはオシリーナと言う腰から下が大きな桃をイメージする様な女性がおり、フェチシリはバニアの後ろ姿を見て「まだまだだな」とつぶやいていたが、セヴンはこれぐらいが丁度良いと思っていた。
そんなこんなで4人目までのサモナーの元を訪れた2人は、ある意味肉体的よりも精神的に色々と消耗していたが、最後の1人と言う事もあり、なんとか気力を振り絞り、教えられた湖の近くにある小屋へとやって来ていた。
「何と言うかサモナーって…」
「独特な方々が多いのですね。面白いです。」
「バニーは平気なのか…俺はただの趣味の品評会の様な、独りよがりを見せられてる様な、そんな気分がしてそろそろ色々とヤバイかも…」
「あら、でもこちらに居ると言われる方で最後ですので、頑張りましょう!」
「そうだな、ある意味次がどんなサモナーだったとしても、もう色々慣れちゃったからな!どんと来いだっ!!」
そう一先ず自分の気持ちに整理を付けて、小屋の戸を叩く。すると中から出て来たのはガッチリとした体形と浅黒く焼けた肌を持った30代くらいの短髪に髭面の屈強そうな男が現れ、少し驚きたたらを踏んでしまう。とてもサモナーには見えない。
「おう、どうした?こんな所に何か用か?」
ドスの利いた低い声で尋ねられ、自分たちが来た理由を話す。
「こっ、こちらにサモナーの方がおられると聞いて、転職クエストで参りました」
「そうか、転職クエストか。おい!お客さんだぞ!」
そう屈強そうな男が小屋の中に声をかけると、灰色のローブを纏った端整な顔をしたダークエルフの男が出て来た。まだまだ現役でやって行けそうな見た目年齢であるが、こっちがサモナーの様だ。
(今度はマトモ?ウソだっ!信じないぞっ!)
今まで出会って来たサモナーとは違い、屈強そうな男性型を使役している?のを見て、内心そんな事を考えてしまう。今までが異常すぎたのか?そう思った時、男は口を開いた。
「あら~いらっしゃい~、どうぞどうぞ中に入ってちょうだ~い」
そう言いながら屈強そうな男の二の腕にしなを作りながら掴まるダークエルフの男。
「そう来たかっ!!」
心の声が遂に漏れ出てしまったのは仕方の無い事だと思われる。
色々とアレでアレな感じがしますが、よろしくお願いします。
この小説のジャンルを本気でファンタジーかコメディーかで悩んでいます…。
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