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妄想のサモナー(召喚士)◆闇の女神に気に入られて◆  作者: 小林寺
まずは召喚士を目指そう
14/31

新たな装備と香り

 狩りを終え、アビスの街に戻って来た2人は、冒険者ギルドへと足を運んでいた。


「貴方達!また大変な事しなかった!?」


 ギルド受付に付くやいなや、大声で問い詰められる2人。


「別に何もしししてないよ?なぁ?バニー?」


「はい、[ブラックウィロー]を大量に引いて来ては殲滅してを繰り返してきただけですね」


「ソレが大変な事って言うのよっ!そのせい・・で[死霊の沼]の辺りが無茶苦茶になっちゃって新しい道が何本も出来ちゃってるらしいじゃないの!もぉ…ほどほどにしなさいよね!」


「「すみませんでした…」」


 多少は怒られた様だが、諦めと呆れからか、深くは追及されず、解放となった。そして冒険者データの更新である。右手を石版の上に置く。


「よ、40??はぁぁあぁぁ…それで転職クエスト始めたいのね?」


「うん、バニーは転職クエストまでもう少しかかるけど、俺は直ぐにでも転職して、強化したらバニーをエルフの国まで連れて行ってあげようかと思うんだ」


「そ、そんな急がなくても良いんですよ?」


「いえ、何時までも記憶が無いのは辛いでしょ?ここはセヴン君に甘えておきなさい。ね?」


「俺もダークエルフ以外の国を早く見てみたいしさ?一緒に頑張ろう?」


「ぅぅぅ…ありがどうございまず」


 涙を浮かべ感謝の意を表す。

 記憶が無いと言う事はとてつもなく不安な事なはずなのだが、あまりそのあたりには自ら触れて来ていない。そんな気丈に振舞う彼女だが、今まで必死に我慢して来た事は、少なくは無いはずなのである。その色々が涙になって目から溢れ出す。


「私みなさんに出会えて本当に良かったでず…グスグスッ」


 やさしい笑顔でその言葉を受け取るセヴンとナッツに涙は止まらない。



「さて、それでセヴン君。一応確認だけど、セヴン君はどの職業を目指しているの?今メイジだからそのまま上級魔導士ウィザード?それとも補助職の付与術士エンチャンター?それとも…」


「もちろん!召喚士サモナーですっ!」


「やっぱり…サモナー目指すのねぇ…折角魔導士としての素質、と言うか、なぜか強力な魔法を覚えちゃってるんだから、そのまま魔術を極めて行ったら?エンチャンターは流石に貴方には向いて無いとは思うんだけどね。それにサモナーは選んでる人少ないから情報も少ないし、召喚獣や使い魔と常一緒に戦闘するから、必然的にパーティ組む事が減り、孤独に陥りやすいわよ?目立ちたがりの寂しがり屋のセヴン君には向いて無いと思うんだけど?」


「え?何を言ってるんです?サモナーこそ孤高にして希少で、希少だからこそ目立つ・・・んじゃないですか!それにもうパートナーは居て寂しくないですし!」


 そう言いながら恥ずかしそうにバニアを見る。


 この世界のサモナーは、結構色々な世界でも共通する事なのだが、基本的に召喚獣や使い魔を使った戦闘をするスタイルの為、1人でありながらもパーティで戦闘をしているかの様な状態にする事が出来る。なので基本狩りでは単独だがそれは利点であり欠点でもあり、いくら強力なパートナーを召喚出来ると言っても、やはり同人数のパーティとは連携や総合的な力で劣ってくる。そうなれば高みを目指す冒険者達は、将来強力なモンスターの徘徊するダンジョンや狩場に行く時、冒険者同士組んだパーティでなければリスクが大きくなって来る。その時に今までボッチで俺TUEEE!!やって来た人間の周りに仲間は居るのか?っと言う話しで、ソコの壁にぶち当たり引退をする者が大半で、何とか強引に壁を乗り越えた者であっても、孤独な生涯を過ごすだけなのである。


「まぁ最初からセヴン君はそう言ってたしね、セヴン君ならまた一味違ったサモナーになるのかもね」


「私も記憶を取り戻して、転職をして、セヴン君の力になりたいです」


((えぇ娘やなぁ~))


「それじゃあ転職クエストを発行するわね。サモナーの転職クエストはね…」


 説明しよう!このアズガルドの召喚士と転職クエストとは、まず召喚士だが、既存のモンスターなどを呼び出す一般的な物とは少し毛色が違う。自らの中で創造した架空の召喚獣(獣型)、使い魔(人型)を使役する事が出来ると言う者である。

 そして転職クエストはダークエルフの国のいたる所に居る数名の召喚士の元を訪れ、その召喚獣や使い魔を見せてもらう事により、その色々な特性や姿や形を脳内に刻み込み、自分の中に架空の存在を構築する為の糧を得る事で、召喚と言う無から有を生み出す事を可能にさせるクエストなのである!ちなみにこのいたる所に居る召喚士とは、冒険者として引退した者で、現在はほぼ全て隠遁生活を送っている。


「おっしゃ!サクッとクエスト終わらせて、俺は理想の女性像を具現化するんだっ!俺の言いなりになる理想の女性!最高じゃないかっ!!」


「セヴン君…結構な闇を持ってるのね…」


 ついつい本音が出てしまった少年の熱き想いを聞き、ジト目で見つめる女性陣。2人共一般的に言えば最上級に近い見た目と容姿をしたエルフとダークエルフの女性ではあるのだが、やはり脳内の理想と言う物はそれを上回る物である事が大半である。理想は理想、現実は現実なのである。


「ま、まぁ冗談はこれくらいにして、どこから行けば良いんですか?」


「そうね、まずは南東にある庵に行けば最初の召喚士が居ると思うわ。そうそう、あとコレを持って行って見せると転職クエストだと認識してもらって、次の場所もその場所の召喚士が教えてくれる手筈となってるわ」


 そう言って、召喚士の名前が5名書かれた羊皮紙の巻物を手渡される。どうやらコレに名前のある人物を訪ねて周るのだろう。


「おし!それじゃあクエスト開始の前に色々準備して、明日からにしようか」


「はい!頑張りましょう!」


 ナッツに挨拶を済ませ、冒険者ギルドを後にする。






「おっちゃん邪魔するよぉ」


 次に訪れたのは街に1つの武器防具屋。今日の狩りでかなりの収入と数本の光る枝を手に入れる事が出来たので、装備の新調に来たのである。ちなみに光る枝は3本と、倒した数にしては少ないと感じるかもしれないが、元々レアドロップ品なので確実に出る訳でも無く、前回初めて倒した時にいきなり出た事が稀なのである。


「おう坊主、今日はベッピンさんも連れてどうした?」


「いや、この娘に新しい弓を作ってもらおうかと思ってね」


 そう言って道具袋から光る枝を出し手渡す。


「ぼっ、坊主!また手に入れたのかっ!?」


「ん?まだあるぞ?ほれほれ」


 道具袋から次々と光る枝を出し、計3本をカウンターの上に無造作に放る。その様子を見て目が今にも零れ落ちそうなくらい見開いて驚いているドワーフの店主。


「お、お前何者なんだよ…」


「何者も何も、将来この街から誕生した凄腕の冒険者として名が知れ渡るんじゃない?」


「悪名か?」


「うんうん、そうそうって違うわっ!」


「セヴン君悪い人だったのですか?」


「だから違うわっ!!」


 何時もの様に軽い世間話に花を添えて、弓を製作する為に店主は奥へと消えて行った。

 数日前に立ち寄ったばかりなので目新しい装備は見当たらなかったのだが、バニアの装備用に動きやすそうなハードレザーアーマー1着とエルフに似合う緑色のマント、同じくハードレザーで出来た小手とブーツを2人分購入する事にした。


「おう、新しい装備は決まった様だな」


 タイミング良く店主が奥から新しい弓を手に戻って来た。今までの弓よりは少し大きく、色は薄いグレーで、硬さとしなやかさを備えた良い弓だ。ファンタジー機能を発揮させて製作された物ではあるのだろうが、この短時間でとても作れる物なのかは些か疑問ではあるのだが。


「それで物は相談なんじゃがな、残りの光る枝と不要になった古い装備をこちらが買い取ると言う事で、新しい装備と弓の製作費をチャラにしてやる、と言うのはどうじゃ?」


「俺の臭いだけでは飽き足らず、バニーの臭いも嗅ぐつもりなのかっ!?」


「ワシにはそんな趣味や性癖は無いわっ!!」


「綺麗に洗った石鹸の臭いとか良い香りがしますものね。でもそちらの装備は洗ってませんでしたか」


「だから違うんじゃっ…………タブン」


 前回の事から若干自信が無くなって来ている店主の言動に、セヴンは疑いの目を強めながらもその条件を呑み、2人共新しい装備を身に纏い武器防具屋を後にした。



「それじゃあバニー今日はこの辺りで別れようか。また明日神殿前で同じ時間に集合で良いかな?明日は一日俺に突き合せちゃう形になるかもだけどさ」


「はい、私は大丈夫ですよ。それにもう私はセヴン君に守ってもらうって勝手に決めちゃいましたから」


 頭からボフンッと煙が出そうな台詞を真っ赤になりながら言って来るバニアに、現実の女性も良いもんだなと思いつつ同じく赤面しながら手を振り別れ、お互いの宿へと帰って行った。


 そしてこのムズ痒い関係をどう料理してくれようかと考える作者であった。


この後数時間後に15話目も投稿予定です。お楽しみに。

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