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妄想のサモナー(召喚士)◆闇の女神に気に入られて◆  作者: 小林寺
まずは召喚士を目指そう
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ありきたりな始まり

 剣と魔法の世界アズガルド。

 どこにでもあるファンタジーな世界。

 その世界で冒険者として生きる事はごく当たり前の事でもあり、適齢を迎えた者は各種多様な夢を追い求め、自分の明るい未来に妄想を膨らませ、冒険者を目指す者は少なくない。


 そんなアズガルドのダークエルフの街[アビス]。

 闇の女神の加護の元、昼間なのに月明かりに照らされた夜の様な街の、冒険者ギルドに、今一人の若きダークエルフの銀髪の少年が訪れた。


 ギィィィィ…西部劇でよく見る様なスイングドアを開き中に入る。すると中に居た数名がこちらに意識を向ける。酒場の様な共有スペースに各々座る冒険者達、皆鋭い目つきのダークエルフばかりだ。その視線に何かムズかゆい物を感じながら銀髪の少年は奥へと進む。

 奥に進むと、アズガルド語で《ギルド受付》の文字が書かれたカウンターがあり、その横にはギルドの依頼が貼られているのだろう大きな掲示板がある。


「すっすっすいませんっ!」


 銀髪の少年は勇気を出してカウンターにいる自分より少し歳が上であろう愛嬌のある顔のボンキュッボンな女性に声をかける。


「はい、なんでしょうか?」


 銀髪の少年の緊張を気にもしない優しい笑顔で答えてくれる。


「ぼっ僕、冒険者になりたいのですがっ!」


「ギルドへの登録ですね?では、こちらにある石版に手を置いていただけますか?」


 そう言ってカウンターに置かれてある石版を五指揃えて指してくれる。


「はっふぁいっ!」


 銀髪の少年が震える手を何とか抑えつつ石版に手を置くと、先ほどまで何も無かった石版の上空に青い文字が浮かび上がる。ファンタジー仕様だ。



●ワイルド・セヴン(16歳)

 [種族]:ダークエルフ  [クラス]:村人

 [スキル]:なし

 [称号]:なし     



「年齢もOKですし、犯罪歴もありませんので、このまま登録の手続きに入ります」


 アズガルドでは年齢16歳を超えれば、特に犯罪歴が無ければ冒険者として登録することができる。

 少し補足をすると、エルフ族やダークエルフ族といった耳長族は、年齢が20歳になるまでは人間族と同じ速度で体は成長し、その後500歳を超えるまでは凄くゆっくりと容姿が変わっていく。うらやましいかぎりである。


「では、こちらの木札を持ち、街にある神殿の司祭様にお見せして、加護をいただいてきてください」


「いってきまふゅっ!」


 自分が緊張のあまりおかしな言葉使いになっている事に赤面しながら、手渡された木札をむしり取り冒険者ギルドを逃げる様に飛び出すセヴン。


(だぁ~めだぁ、緊張しすぎて手がヌルヌルする…。ヘラ様の神殿に行くんだったなぁ、そろそろ落ち着かないとなぁ)


 そう自分の緊張をほぐす様に落ち着かせながら次の目的地を確認する。






 アビスの街はダークエルフ達の故郷であり、このアズガルドにおいては西端に位置する、闇の女神ヘラが加護する森に囲まれたいくつもの小さな村々に囲まれた街だ。その街の北側に壁のような大きく切り立つ崖があり、そこに闇の女神ヘラの神殿がある。その前に女神の石像が立ち、空を指さしている。


「ヘラ様、今日から僕は冒険者になりますっ!」


 そう物言わぬ石像に挨拶し、セヴンは神殿の中へと足を進める。

 神殿の中は外よりも更に暗く、所々に置かれた燭台の明かりを目印に奥へと進むと真鍮製の女神像が祭られた祭壇へと辿り着く。その前には黒を基調とした司祭服に身を纏った500歳を軽く超えているであろう髭を生やした老人が居た。


「若き同朋の子よ、ヘラ様の祝福を受けに参ったのか?」


 そう声をかけられ、すでに緊張もほぐれていたセヴンは、冒険者ギルドの受付から渡された木札を手渡す。


「冒険者になる為に、ギルドから神殿に来る様言われました」


「左様か、ではまずは剣の加護を受けるか、魔法の加護を受けるか、どちらか選ぶがよい」


 この世界では冒険者となる場合、剣に生きるか、魔法に生きるか最初に決める事で、その後の職業クラスに大きく影響をもたらすのだ。どちらを選んだ所で全く片方が使えなくなる事は無いが、才能の伸びは大幅に違ってくるし、どちらかしか選べないので、その後に何のクラスになりたいかも視野に入れつつ、慎重に選ばなければならない。


 だがセヴンには将来的になりたいクラスがあり、すでに心に決めていた。今はほとんど聞く事が無い希少なクラス、この世界にはまだ両手の指で数えて足りるであろう数しかいないクラスである。己の願望と希少性に引かれ、目指すべき道の第一歩を踏み出す。


「はい!魔法の加護をいただきたく!」


「それでは膝を地に着け、首を垂れ、目を閉じ、女神ヘラ様に祈りなさい」


 静かに言われた通りの姿勢を取るセヴンに、ゆっくりと手をかざし、呪文を唱える司祭。


【女神ヘラよ、この者に知恵と勇気と魔法の力を与えたまえ】


 パァァァッと眩しい程の光が天井からセヴンに差し、体を包む。何か温かく柔らかい物で包まれた感触がそこにはあった。


「これにて祝福の儀は終わった、祝福をくださった女神様に恥じぬ様、精進しなさい。」


「ありがとうございました!」


「では、この木札を持ち、もう一度冒険者ギルドへと向かうがよい」


 指先に魔力を集め、何か文字をセヴンが持って来た木札に書き、手渡してくれた。大きく腰を曲げ再度挨拶をし、セヴンは冒険者ギルドへと戻る事にした。






 ギィィィィ…西部劇でよく見る様なスイングドアを再度開き、冒険者ギルドの中へと進む。今度は中に居た人達も軽くこちらを見るだけで、すぐに各々さっきまでしていたであろう会話や行動に戻る。奥へと進むと、先ほど話した受付のボンキュッボンなお姉さんが声をかけてくる。


「あ、セヴン君お帰りなさい」


 緊張していたであろう少年の心を癒す為、優しく自ら声をかけてくれるお姉さん。出る所は服がはち切れそうなほどに出て、引っ込む所はしっかりと引っ込んだ、某国民的漫画の峰○二子を思い出すスタイルの女性だが、アズガルドのダークエルフは眉目秀麗、容姿端麗であり、それほど珍しい事ではない。セヴンの生まれ育った小さなダークエルフの村でも、周りの女性は量産型峰○二子な体系の者ばかりであった為、若き少年にありがちな妄想は浮かんでこない。要するに見慣れているのである。しかし、このお姉さんの雰囲気や心配りにセヴンは恋とは違う安心感を抱く。


「流石ギルド職員ですね、名前覚えてくれたんですね」


「あら?少しは緊張が取れた様ね、良かった」


「流石に…ねっ!」


「それじゃぁもらって来た木札を返してもらってっと…また石版に手をお願いできる?」


 言われた通り木札を返し、最初と同じ様に石版に手を置く。



●ワイルド・セヴン(16歳)

 [種族]:ダークエルフ  [クラス]:メイジ(new)

 [レベル]:1      

 [スキル]:ダークボール(闇)(new)

 [称号]:冒険者ランク1(new)


【称号:[冒険者]を手に入れた】



 クラスが変わり、スキルと称号が増え、自分がついに冒険者になった事を確認する。


「では改めまして、アビスの街冒険者ギルド受付のミックス・ナッツです、よろしくね、セヴン君」


「こちらこそ、ワイルド・セヴンです、よろしくです!」


 こうしてダークエルフの少年のセヴンの冒険者としての生活は、よくあるファンタジー世界のお話しのオープニングと同じく始まるのであった。


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