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司機神  作者: bb
第一幕
8/31

第一幕ー質

 ―――同時刻、焔家屋敷内稽古場

 紅蓮と桔梗が小太郎のもとに学内での提示報告を行っている間、洋輔とアヤメは、焔家内にある稽古場にて実戦の稽古を行っていた。

 稽古の相手は全員、焔家に仕えている土門家のアヤメの兄弟たちである。

 実戦訓練と言っても実際に戦うのは司機神であるが、今朝方、洋輔が朝練としてジョギングをしていたようにそれを操る側にも霊力を増強のために鍛える必要もある。彼ら自身も生身で実戦の稽古をすることで、より司機神の動きをイメージしやすくなる。

「はぁ!」

「若様! 弾いてください!」

「わかっている」

 筋肉質で大柄のアヤメの兄が投げた木造の手裏剣やクナイをアヤメの指示に従い竹刀で弾く。

「たぁ!」

 アヤメが一瞬で距離を詰めて、木製のクナイを筋肉質で大柄の兄にぶつけようとするが……

「させない!」

 小柄で身軽そうなアヤメの兄が彼女に向けて、飛び蹴りをかます。

 それをアヤメは間一髪で後ろに跳んでかわす。

「なんの!」

 続けざまに小柄な兄弟は木製の小太刀で連続で振り続けるが、アヤメは後ろに跳びながら、それを避け続けながら後退する。

「大丈夫か? アヤメ」

「えぇ、大丈夫です」

 洋輔の言葉に対して、アヤメは笑顔で答えて再び稽古用に木製の武器を構え、大柄な兄が投げた木製の手裏剣を全て弾き落とす。

「それにしても、基本的に後方支援担当言っても、簡単にはいかないか」

「えぇ、そこは兄さん達。年の功と言えるものですね」

 洋輔は小柄な兄の木製の小太刀を受け止めながら、アヤメも大柄の兄が放つ、木製のクナイや手裏剣を同じくクナイと手裏剣を投げて相殺しながら、感心する。

 この二人、普段洋輔達が戦っている時は、後方支援に徹しているが、洋輔やアヤメが全線に出れるようになるまでは、前線に駆り出されていた時期もある。

 もっとも、その時使用していた彼らのアヤメが使用している桔梗ではなく土門家の別の司機神である。

 それらは、紅蓮と桔梗がいないため、現在手出しを一切していないが、彼との契約はいも続けている。

「とはいえ、このまま押し切られるわけにはいかないよな!」

「はい!」

 洋輔は小柄な兄の小太刀を弾き、力いっぱい蹴り上げ、そのままアヤメが襟をつかみ、大柄な兄の方へと投げ出す。

「なんの!?」

 投げ飛ばされてきた小柄な兄を大柄な兄はしっかりと受け止める。

「はぁ!」

 一瞬で兄達の頭上まで飛び上がり、アヤメは木製の手裏剣を降らせる。

 両手を小柄な兄で塞がれているため、手持ちの武器で相殺させることができず、横に跳んで避ける。

「だぁ!」

 とんだ先で洋輔が勢いよく飛び出し、竹刀で突いてくる。

 それを見た、大柄な兄はとっさの判断で、小柄な兄を投げて、その体で洋輔の突きを受ける。

 竹刀による突きは彼の腹部にクリーンヒットし、膝をつかせる。

「まずは一人か」

 洋輔はそう言って視線をもう一人の小柄な兄の方へと視線を移し、体を方向転換させる。

「甘い!」

「なっ!」

 だがその瞬間、大柄な兄は洋輔の足を掴み、立ち上がる。

 そして、そのまま洋輔を勢いよく上に向けて投げる。

「しまった! (いち)(にい)さんの無駄に鍛えた筋肉の壁を忘れてた!」

 アヤメは小柄な兄を踏み台にして、洋輔の方へ飛び上がり、彼をキャッチする。

 その瞬間、大柄な兄は実の妹に自身の鍛えた体を無駄と言われて地味にショックだったのか若干涙目になっていた。

 実際、現在バックアップ担当なので鍛え体を披露する場面なんてそうそう滅多にない。

 つまりある意味、無駄である。

「読みはこちら勝ちだ!」

 小柄な兄は落ち込んでいる大柄な兄を踏み台にして、洋輔をキャッチしたアヤメの背中を蹴る。

 空中での攻撃かつ、両手がふさがった状態のアヤメは避けることができず、そのまま洋輔ごと床に叩きつける。

 床へと叩きつけられ、洋輔を下にして二人とも目を回して気絶する。

「なんか、あからさまにやり過ぎたか?」

「うん、まぁ、外傷はないし、骨も折れていないから大丈夫じゃないか?」

 大柄な兄と小柄な兄は気絶した洋輔とアヤメの外傷確認を行いがら、顔を青くしながらお互いに問いかけあう。

『いや、ダメだろ』

『……訓練とは言え、やり過ぎ』

「紅蓮に桔梗!」

「一体にいつから?」

 いつの間にかやって来た紅蓮と桔梗に冷静にツッコまれた二人は顔を更に青ざめる。

 何せ、訓練とは言え自ら仕えている家の次期党首を思いっきりノシてしまったからだ。

 桔梗の言うとおり流石に幾らなんでもやり過ぎである。

 雪風のような主をたてるためにわざと負けるとい前時代かつ、本人のためにならないようことは、この二体は言わない。それとは別で現状バックアップという立ち位置から、外傷なしとは言え前線の二人を気絶せてしまうのはまずい。

『いつからかと言えば、強いて言うなら、お前らが若様を放り投げてアヤメごと蹴り落としたところからだ』

 二人の問いに紅蓮は腕を組みながら、冷静に答える。

 どうやら、ちょうどつい先ほど、小太郎への報告を終えてここに来たようだ。

『覚悟しろよ』

『……二人ともお説教!』

 その後、この二人は紅蓮と桔梗から夕飯までこってり説教をくらった。

 その後ろで、二人の司機神もいたが立場上、紅蓮の方が上なため何も言わずに自らの主を見守姿勢を取っている。


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