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司機神  作者: bb
第一幕
4/31

第一幕ー参

今回はお昼休みのお話です。

 時間は少しばかり進み、午前授業を終え昼休みとなる。

 生徒たちは、鞄から昼食を仲の良い友人たちと席やクラス、鞄に弁当を詰めていない生徒達は学食の席が埋まって前や購買部の食べ物が売り切れになって前に確保するために教室を出て移動開始する。

 午前の授業を終えた解放感から、どこも共通して生徒達の雑談でにぎわう声が聴こえてくる。

 しかし、その光景は人や妖、司機神などが混じりあっていて若干カオスとも呼べる光景である。

 特に人はある程度身長差があるだけのだが、妖や司機神は姿形が種族おいてがらりと変わるため、アヤメの様なほぼ人と同じ姿をしているものや、暦の様に半分人の姿をしているものもいるが、中には完全に人の姿はしておらず、完璧に人外の姿をしている生徒もいる。

 そういったもの中にも術として人の姿へと変化(へんげ)できるものも存在しているが、中には、本当に犬や猫など様々な姿をしている。

 それでも一緒の席に座って友人関係がなっているのも現代の共存化におけるたまものだろう。

「どうしたんだよ? 苦笑いなんて浮かべて?」

『やはり、未だにこの光景に慣れんな』

『……同意』

 洋輔の質問に対して紅蓮は苦笑いを浮かべ、桔梗も静かに頷き同意する。

 こんな感じに古来から存在する司機神や妖の反応はだいたいこんな感じの反応である。

 特に司機神は戦いの場に身を置くことが多かったので、こういった和やかかつ若干混沌とした風景には馴染みがない。

 これが近代の生まれ育った若者と昔から生きている年寄(?)の価値観の違いだ。

「そう? 小太郎は馴染んでいるけど?」

『あれは頭が柔らかいからな』

 弁当箱から、卵焼きを箸をつつきながら言うアヤメの言葉に対して紅蓮は教室であからさまに片方が完全に犬の姿をしているカップルを遠い目をして見つめながら答える。

 別段、小太郎の場合は頭が単に柔らかいというわけではなく雪風の頭が固いため、自然とああなっただけである。

 表には出さず、紅蓮、桔梗、雪風の三体よりかは現状を理解はしているが内心苦笑いを浮かべている。

 それ以前に、服装の構造上殆ど顔を覆い隠されているため、基本的に表情は伺えないが……

「そういえば、小太郎さんの素顔ってどんな感じなんだ?」

「二人とも小さいころから一緒なんだよね?」

 小太郎が話題が出たので、史郎と暦は普段から忍び装束から表情だけではなく素顔伺えない小太郎の素顔に対して尋ねるが洋輔もアヤメも黙り込み視線をそらす。

「もしかして知らないのか?」

「えっと、あれだな……アヤメ、お茶買ってきてくれ」

「りょっ……了解しました。主様」

 洋輔は唐突に話題をそらすようにアヤメにお茶を頼み、アヤメもそれを承諾して買いに行く。

 どうやら、二人とも一緒の食卓で食事をしているにも関わらず、知らないらしい。

「じゃあ、紅蓮たちは知らないのか? 洋輔たちよりも付き合い長いんだろ」

『まぁ、知っているが暗殺者の素顔をバラしたら意味ないだろ』

『……それと若様とアヤメが小太郎の素顔を覚えていないのは術でそうしているから。だらか、修行して強くなれば、そのうち見えるようになる』

 史郎は矛先を紅蓮と桔梗に向けるが、二体は知ってはいるが答えないというより、意思表示と二人が素顔を覚えていない理由をフォローする。

 一緒に食事をしているのに顔を覚えていないのは、術でそういう風にしているからである。

 別に洋輔やアヤメが薄情というわけではない!!

 それでもアヤメの場合は洋輔以外の異性に対してあまり興味がないので正直、若干怪しいが……

「ん? 暗殺者? 忍者ないの?」

「あれ? 小太郎を紹介するときに言ってなかったけ?」

「いやいや、初耳だよ?」

「お目付け役としか聞いてない!」

 紅蓮の言った言葉に対して驚く史郎と暦に対して洋輔は首をかしげる。

 二人とも焔家に上がった時に小太郎に関しては、そういう説明を受けていない。外気に二人とも素顔と違い流石に洋輔と小太郎の間に主従関係が確立してることは、きちんと理解している。

 だが、戦いに身おいて異な一般人二人に対してそんなことを言って大丈夫なのだろうか?

『ちなみに忍びというなら、アヤメと桔梗の方がそういった方面は得意だぞ』

『……小太郎と雪風は姿を消せるだけ、得意なのは弓矢での狙撃』

 外見的にどう見て忍び装束を着ているために、イメージ的に見るからに忍者にしか見えないが、小太郎も雪風もそんな技は冒頭で見せた姿を見なくする技だけであり、彼らコンビが得意とするのはあくまで弓矢による狙撃である。

 素顔を認識させていないのもこの技を応用したものだろう。

 そういった忍者的な技はアヤメや桔梗というよりも土門家ほうが得意としており、実際武器も忍者的なものである。

 なので小太郎や雪風と違い桔梗に関しては割と外見通りな技と武器を使用する。

「これって、俺達みたいな一般人が知っていいのか?」

「まぁ、問題ないんじゃない? 少なくてもうちに仕える前から陰陽師や妖の間では有名だったし、それに昔の話だしな」

 結構、暗殺者と聞くとダークでダーティでその正体を知ったり、後ろに立ったりしたら、消されるようなイメージがあるので顔を青くする史郎と暦対して、洋輔は軽く流す。

 紅蓮の言いかたが悪く現行の暗殺者に聞こえているが、現在の彼はあくまで紅蓮家に仕えている洋輔のお目付役である。

少なくとも今の彼から消されるようなことはないだろう。多分……

「にしてもアヤメ、お茶を買いに行っているのは遅くない?」

「あー、それはな」

 暗殺者の話題を変えるためにお茶を買いに行ったまま、未だに帰ってこないアヤメについて暦がたずねると洋輔はどこからともなくハリセンを取り出す。

 ちなみに洋輔たちの教室から階段はすぐ近くに存在しており、お茶おいてある自販機も階段から降りたすぐそこにある。

 そのため、さほど時間はかからないし、別段ガラの悪い生徒がたむろっているわけでもなければ、例えたむろっていてそれらがアヤメに絡んできても彼女の実力ならば、ガラの悪い学生程度ならば簡単に対処できてしまう。

「こういうことだ」

 洋輔は取り出したハリセンをすぐ後ろに投げると壁に当たる前にパンと音立てて床に落ちる。

 それと同時にカメラを持ったアヤメが額を押さえながら姿を合わす。

 そんなアヤメを見て洋輔は呆れた顔し「はぁ」と小さなため息をついて、ハリセンを拾い上げた。

「お前なぁ、また術で姿を隠してしていたんだ?」

「えっと、あの……お茶をお持ちしました」

 洋輔の質問に答えずに満面の笑みでお茶を差し出す。

 どうやら、お茶を差し出したあたりからすると、買ってきてすぐに戻ってきてから、洋輔達が話している間、すっと術で姿を隠していたらしい。

 洋輔もその間アヤメが姿を隠していたのに気が付いていたようだ。

「あててやろうか? どうせ、また盗撮だろ」

 洋輔の声色には怒りを感じないが、あきれ果て感じであったがハリセンで頭を二度軽くたたく。

 ハリセンの頭を叩かれるアヤメの顔はとても幸せそうな満面の笑みだった。

 ダメだ! この娘! 早く何とかしないと……

 というか、「また盗撮だろ」というあたり彼女は洋輔を何度も盗撮をしていることになる。

「はぁ、昼休みも時間も少ないんだから早く席に戻るぞ」

 洋輔はカメラを取り上げることもなくお茶を拾い上げると席に戻る。

 それに続けてアヤメの自分の席へと戻っていった。

「ん? カメラは没収しないのか?」

「今更だし諦めた」

 史郎の質問に対して洋輔は遠い目をしながらお弁当のおかずを箸でつまみながら答える。

 いや、そこは諦めたらだめだろう。

 これでも一応、中学校卒業まではカメラを取り上げる、あらかじめメモリカードを抜き取るなど、抵抗を試みていたが結局、とうに懲りる様子は一向に見られることはなかった。

 そのため、彼女のPCのハードディスク内部は洋輔の盗撮写真に埋め尽くされている。

 このことに関して洋輔が諦めもとい黙認をし続けることに対して小太郎は頭を痛めている。

 無論、撮り続けているアヤメにも、根負けして諦めている若君にも……

「にしても、アヤメはあれだけ叩かれてよく愛想が尽きないね?」

「当然、主様は私の全てだからね。愛想が尽きるなんて未来永劫ありえない!!」

 暦の問いに対して「何を愚問」と言わんばかりの笑みと聞いているこっちが恥ずかしいセリフで答える。

 これだけ聞いて見ているとさっきまでの行動が嘘と思えるくらいに恋する乙女に見える。

「洋輔、アヤメの奴、これだけのこと言ってるんだし、もう少し大事に扱ってもいいなじゃないか?」

「まぁ、確かに悪い気はしないさ」

 史郎は少しばかりからかってやろうと思いながら声をかけるが、洋輔はそっけなく返した。

 そんな洋輔の態度を見て史郎はからかおうと面白くなそうな顔をする。

 アヤメが人前でこういった聞いているこっちが恥ずかしくなること言うのは、昔からあったため、その都度(つど)に洋輔は友人たちにいじられ続けてきた。そのため、「悪い気はしない」と言ってつれない態度をとっているが、実際のところ年頃の男子なため、美少女にあんなこと言われて嬉しくないわけがない。だが、昔からそのことでいじられてきたので基本、人前では表情に出さないようにしている。大事なことなのでもう一度言うが、実際のところは嬉しいのだ。彼とて年頃の男子なのだから!!

「はぁ、そういえば、次の授業ってなんだっけ?」

「陰陽科は実技だよ。実技」

 史郎は洋輔のノリの悪さから、ため息をつき話題切り替えて次の授業について尋ねると洋輔はペットボトルのふたを開けなかながらどこかかったるそうに答えた。

 それ続けて、「ちなみに普通科は数学の小テストね」とアヤメが付け加えると史郎も暦もげんなりとした顔を浮かべる。

 まぁ、普通に考えればテストと名のつくものを聞いて喜ぶ学生はそうそう滅多にいない。

 居たとしたら、そいつはよっぽどの変わり者だ!!

 世の中には、テストと言っても新しい乗り物の試運転や、新商品の試食といった聞いていて、わくわくするようなイメージのあるテストもあるが、学校で学生が受ける授業のテストは、そういったイメージとはほど遠い。

 どちらかといえば、面倒で大変でその単語を聞くと精神的にも疲弊して、気が滅入り、表情が一気にゲンナリとなるものだ。そうまさに今の史郎と暦のように!

 その後、一同は残り少ない休み時間を洋輔はかったるそうペットボトルを口につけ、史郎と暦は小テストの予習のためにいそいそと昼食の残りを口に運ぶが、そんな三人の中、アヤメのみが上機嫌ににこやかの表情を浮かべている。

 この光景をはたから見ると彼女が大物に見えるが、別段、そんなことはない!!

 単に彼女が上機嫌なのは洋輔の側にいるから、理由としては本当にそれだけなのだから!!

というか、それ以外の理由は特になく他の学生もそれを知っているので、誰もアヤメのことを大物だとは思っていない。


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