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司機神  作者: bb
第一幕
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第一幕ー弐

今回は朝食と登校までのお話です。

 朝練を終えた洋介は学校の制服に着替え、居間で白いご飯に漬物、味噌汁という準和食の朝食を食べながら、テレビでニュースを見ていた。

 その隣には同じく制服に着替えたアヤメがしっかりと陣取って座っていた。

 他にも洋介の両親や、小太郎と雪風もいるが、とくに誰に何も言わない。

 どうやら、この家ではここが彼女の定位置のようだ。

 もっとも、言葉では何も言わないが、雪風は態度で納得いっていないのを表情をしている。

「アヤメ、ご飯おかわり」

「はい」

 洋輔が茶碗を差し出すとアヤメは立ち上り電子ジャーから、ご飯を茶碗に移す。

 先ほどまでの奇行が嘘と思うほどのほほえましい光景である。

 普段もこれくらい普段おとなしかったら、誰も何も言わないであろう。

『昨晩、23時半すぎ、東京にある堕ち人第5刑務所から、武蔵坊(むさしぼう)弁慶(べんけい)が脱獄しました』

「……またか」

 テレビでニュースキャスターの言葉を聞いてこの場にいた全員が苦い顔をする。

 武蔵坊弁慶と言えば、源義経に最後まで仕えた強い怪力を持つ僧兵であり、立ち往生や泣き所、999本まで集めたなど様々な逸話を持っている。

 義経の死後、主君を裏切った義経の兄の頼朝とその一族である鎌倉幕府への怨みから、堕ち人となり、戦国の世に移る前に誕生した古くから存在している珍しいタイプの堕ち人である。

 もっとも鎌倉幕府が滅んだ現在は、頼朝の一族から義経を救わなかった世の中と周囲の人間達へと復讐の対象を移しているというのが社会的な認識である。

 各時代、人のころからあった怪力を堕ち人になったことで、さらに強化され、やりあった陰陽師達は苦戦さて来たが、最終的には敗れ去り、幾度となく封印されてきた。

 だが、もともと僧兵、つまりは僧侶であったため、持ち前の霊力と知識で封印を破り復活を繰り返し、各地で暴れまわっている。

 そうした経緯から、毎回封印される場所はバラバラであり、小太郎が仕える前の当時の焔家の当主や土門家のものも、戦闘し一度封印したこともある。

堕ち人刑務所という専門施設が堕ち人専門の施設が造られた現在は、封印された堕ち人はそこに収容される。

 それ故に時代超え、地域を変えて毎度、封印からの復活と脱獄を繰り返し、現代においては半ば八つ当たりを繰り返す弁慶はとても迷惑な存在と認識されている。

『これに対して、政府は武蔵坊弁慶に対して討滅許可を下しました』

 討滅許可というのは、陰陽師が堕ち人を封印ではなくその言葉通り「倒し、滅せよという形で対処せよ」という実質命令である。

 比較的に平和になり、妖との共存が進んだ現在では、これが出ていない限りは基本的に堕ち人や妖の討滅は禁じられている。

 そのため、現在は討滅許可が出ない場合は法を犯した妖と堕ち人は、専用の施設に収容されることになっている。

 こうした法律と施設ができるまでは、力が弱く倒すことが困難ではない妖や堕ち人達も罪の大小も問わず、封印されず討滅されてきていた。当然、中には冤罪の可能性だった妖や堕ち人達もたいだろう。そうした側面を含めた意味でも作られた制度である。

 前述通りに弁慶はそれとは逆で力が強すぎて、倒し切ることができず、封印という形で対処されてきていた者達もいうる。今回は封印からの復活と脱獄にかなりの力を使っていて、力を回復させきるのに時間を要するからこそ、倒し切ることが可能だと判断されたから下されたのである。

 いわば、期間の決められた討滅許可となり、弁慶が力を完全に回復させてしまったら、倒しきるのはほぼ不可能だと判断されこの許可は取り消しとなり、再度の封印処置となってしまう。無理に討滅しようとして、陰陽師側や周囲に甚大な被害を出してしまうのを抑えるためである。

 とは言え、同時に弁慶のような力の強い堕ち人の中には、長い年月活かし続け、あまつさえ蓄えた力で封印を破り脱獄をされてしまうということがあるので、問題の先延ばしにもなってしまっている。

「前に弁慶を封じたのって、どこの家だっけ?」

「確か、水……」

「あさぎの実家の水島家になります」

「あさぎの家か」

 テレビの画面を見ながら、洋介が尋ねると同じくテレビを見ながら、洋介の父親が答えようとするとアヤメが割って入って答える。

割って入られた洋介の父親は予想がついていたのか、少々苦笑いを浮かべる。

 やはり、これに関しても雪風は『不敬な』と呟き、不服そうな顔浮かべるが、主である小太郎を始め周囲の面々は予想の範囲内のため、特に気にすることもなく漬物を口に運ぶ。

 そのまま、テレビの画面はニュース速報から、天教予報へ切り替わる。

 水島家とは、洋介の焔家と古くから、交流のある家で五行においては焔家の火に対して有効な水を専門に取り扱っている。

 ちなみに、あさぎというのは、水島家の跡取り娘で洋介の一つ下の年齢にあたる。

「しかし、若様、アヤメ。弁慶のことを気にかけるのは、わかりますが時間の方は大丈夫なのですか?」

 小太郎が時計を見ながら尋ねると、二人も時計に視線を移して、目を丸くする。

 時計の針は7時50分を指し示していた。

 洋輔とアヤメの通う学校から徒歩で約20分位になり、HRの始まる時間は8時半ちょうどなとなる。

 まだ、時間はあるが、そろそろ学校へ向かわなければHRに間に合わず完全に遅刻になる。

「アヤメ、そろそろ学校人向かうぞ」

「はい、主様」

 二人は立ち上がると鞄を持つと玄関へと少々早めに歩き出す。

 それに合わせて紅蓮と桔梗も再び浮き上がり、互いの主のペースに合わせて移動する。

 小太郎は二人をマイペースな笑顔で見送りながら、こっそり追いかけようとする雪風をつかむ。しかも、箸で!!

 急いで家を出たとは言え、HRまではまだ時間はあるため、玄関先の通学路には、洋輔とアヤメと同じ制服を着た生徒が歩いて登校する姿が見られる。

 投稿する生徒に中には当然普通の人間もいるが、一つ目や背中に烏の羽を生やしたり、ほぼ人間に見られない特徴を持つ生徒もいる。

 彼は皆、アヤメと同じく妖に部類される生徒ではあるが、誰もかれもが陰陽師に仕えているわけではない。

 中に普通(?)のどこの家にも仕えておらず、共存化進んだ現在、会社に勤めている親を持つ妖もいる。

「おーい、史郎」

「およはう、暦」

 洋輔とアヤメは、そんな中から見覚えのある一組の男女を発見して、声をかける。

「よう、お二人さん、今日も一緒に登校か」

「おはよう。相変わらず、おあついわね」

  声をかけられた、男女は彼らの方へ振り返り、そんな軽口を二人にあいさつを交えながら言う。

 確かに昨晩から今朝にかけては暑かった。別の意味で……

 こちらの史郎と暦、二人とも洋輔とアヤメの中学校からの友達である。

史郎は、眼鏡をかけたごく普通の少年であるが、暦は薄い紫色の髪におかっぱ頭に、体系としてはこの年齢の少女としては平均的であるが、唯一人間と違うところとしては、下半身が蜘蛛の姿をしてることである。

彼女は土蜘蛛というその名通り、蜘蛛の妖である。土蜘蛛とは、さまざまな変化妖怪や子蜘蛛を従えたり、普通の蜘蛛と同じく糸を吐き出すことができ、人間を捕食する妖である。

もっとも共存が進んだ今現在、彼女たちのような古来では人間を捕食してきた妖も一般的に暮らしいる限りはそういった傾向は見られなくなっている。

また、彼女はアヤメとは違い司機神をつれていないことから、暦の一族は戦いからはすでに手を引いて普通(?)に現代社会を生きている一族で、彼女の父親も会社勤めのシステムエンジニアである。

司機神を連れていないという点では、史郎も同じであり、彼は陰陽師ではなくごく普通の一般人ということになる。

「今日も一緒に登校かって、それはお前らもだろ」

『お熱いのはどちらかという二人の方だろ』

『……今日もラブラブ』

 二人の軽口に洋輔、紅蓮、桔梗がそう返すと史郎と暦は顔を真っ赤にする。

 この二人の関係性は、わかりやすく言えば、恋人同士。ようはリア充なのだ。

 そんな訳で、二人とも毎日、登下校をいっしょにしている。

 ちなみに、ツッコミに参加していなかったアヤメというただ単に史郎と暦から言われたことが嬉しくてにやけていた。

「にしても、お前らこの時間にこのあたりいるのって珍しくないか?」

「そうそう、いつもならとっくに教室にいるのに?」

「今朝のニュースでな。仕事がらみの厄介なのが脱獄したってのが、流れてな」

「だから、封印を打ち破るのに力を使っているとはいえ、危険なので二人とも夜間の外出は控えてよ」

 史郎と暦の質問に対して洋輔とアヤメは忠告をしながら、簡単に今朝出たニュースのことを簡単に説明した。

 ちなみに、二人の言った通り、洋輔とアヤメはいやが近いといっても遅刻しないように余裕をもっていつもなら、教室に到着している。

 そのため、まだ余裕があるとはいえ、この時間に家の近くに彼らがいるのは、非常に珍しいことである。

「えぇー、夜間の外出を控えろって……」

「今夜はデートの予定だったのに……」

 二人ともその忠告に対して、不満を漏らす。

 そんな「リア充、爆発しろ」と言いたくなる理由を言う友人2人に対して洋輔とアヤメは笑顔を向けて札を取り出す。

「紅蓮!」

「桔梗、Go!!」

『おう』

『……了解』

 それと同時に紅蓮の周りに小さな火球が浮かび上がり、桔梗も手に小さな手裏剣を構える。

 二体は、それらが史郎と暦にすれすれで当たらないように放つ。

「で、返事は?」

「オッ、OK」

「了解しました。デートは次の機会にいたします」

 洋輔の言葉に対して二人とも脅しもとい警告に対して敬礼をしながら従った。

 多少、やり過ぎのような気もするが、危険だと忠告しているのに危機感のないことをいっていたり、ことの危険度を考えれば、ある意味で当然の対応なのかもしれない。

 ちなみに先ほど、二人が出した札は陰陽師や妖が自身使役している司機神の能力を解放させるために使用するものである。

 この札がなくとも多少なりとも司機神自身での能力を使用はできるが、こちらのプロセスをしたときの方が、格段に能力が向上している。

 その後は雑談をしながら、歩いているうちに学校の校門を通過していた。

 4人の通う学校は、私立鵺(ぬえの)(しま)高等学校といい、全員ここの2年生にあたる。

 生徒達は洋輔とアヤメの様な司機神を連れている陰陽科と史郎と暦の様に司機神を連れておれず、特に戦う手段を持たない普通科の2種類に大きく分けられているが、陰陽科の生徒達は専門授業あるといだけで、基本的に受ける授業も居室もおなじである。

 ちなみに創立者兼現理事長は、学校の名前にも入っているが、サルの頭に狸の胴体、虎の手足、尾は蛇でトラツグミ鳴き声でも知られている鵺の一族のである。


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