表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/254

ヌシ図鑑

あけましておめでとうございます。


「で……こっちが資料関連だね。図書館の蔵書が一部こっちに移ったみたいだよ」

「アップデートでここまで出来るんだな」

「そうだね。セカンドライフプロジェクトって呼び名のゲームだけど、ここまで出来るのは感嘆に値するよ。飽きさせない作りって奴だね」


 と、言いながら案内図の一部をアルトは指差した。

 まあアップデートと銘打っているけれど、実際はアンロック形式だろうしな。

 仕様の同じゲームをずっとやらされる、と考えるとイベントが起こる度に変化があるのは当然の仕様とも言える。


「ここが主とか特殊な魚を展示するコーナーだね。絆くんが釣った主も展示されているよ」

「解体したはずなんだが……」

「そこはゲームの謎仕様だね。ブルーシャーク<盗賊の罪人>も載っているから確認してみると良いよ」


 まあ……一番気になる所だから見て行くか。

 なんて思いながら主エリアへと向かう。

 道中の展示物に次元ノ白鯨の展示物とかがあった。

 波での戦闘で戦ったボスってだけの印象だけど、全体図とか色々と細かく記されていて、かなりの作りこみを感じる。

 現実の鯨とかその辺りの資料とかも参考にしているんだろうなぁ。

 胃袋の中は~とか腸の長さは~みたいな所に現実の鯨に関する記載も一部混じっていたし。勘違いはさせない配慮はあった。


「あ、ここはペックル区画だね」

「……」


 水槽の中を無数のペックルが泳いでいる。

 ……水槽のいちばん深い所にある神殿みたいなオブジェの前でブレイブペックルが座禅を組んでいた。


「カモンブレイブペックル」


 いたずら心がうずいてブレイブペックルを召喚。


「ペーン」


 俺の足元にブレイブペックルが出現した。

 なのだが、水槽の中にもブレイブペックルがいた。


「……なんでブレイブペックルが二羽に増えているんだろうな」

「あっちは別の展示枠って事なんじゃないかい? 望遠鏡でペックルをそれぞれ照射してスイッチを押すとそれぞれのプロフィールが出るし」


 一羽一羽、設定があるとか手が込んでいるとしか言いようがない。


「ちなみにマイペックルを探す人もいるよ。来場者は探せば自分のペックルもここで見つけられるみたいだね」


 色々とあるんだな。

 この手の便利NPCってこだわりたくなるものだし、ほしくなる気持ちはわかる。


「……硝子と一緒に詳しく見て回りたい所だな」

「それはデートって意味かい?」

「死の商人と来る場所ではないと思ってな」

「そうだね。ゆっくりと見るならそれが良いかもね」


 流されてしまった。

 そうして足早に主エリアに到着する。

 ……でかい水槽が立ち並んだエリアだ。

 お? ルロロナで釣った主ニシンやオオナマズとかが当然の様に展示されている。

 

 ヌシニシン

 第一都市ルロロナの海を根城にしているニシンの主。

 無数の釣り人から餌を奪い取り、豊富な栄養を得て巨大化した歴戦の猛者。

 生息地 ルロロナ近海


 と記されていて、詳しい大きさが書かれていた。

 なるほど……長さをしっかりと測った訳じゃないけど、そう言った要素まであるのか。


 寄贈者 絆†エクシード


 ここに自身の名前が記されてニヤついてしまう。

 であると同時に疑問が浮かぶ。


「なあアルト」

「なんだい?」

「主って他のプレイヤーが釣り上げたら居なくなるの? 何か情報とか無い?」

「このヌシニシンに関しては君以外にも何人か釣ったって話を聞くね。ただ……君以降で聞くのに時間があったから条件の検証は出来てないよ」


 ふむ……再出現はあるのか。

 まあ当然だよな。

 なんて感じに主コーナーを見渡す。

 すると……大きなアユがあった。


 ヌシアユ

 第二都市ラ・イルフィの川を占拠する凶暴なアユの主。

 気性が荒く、大きな縄張りを牛耳る程の力を持った歴戦の貫録を備えた主。

 生息地 ラ・イルフィ


 おお! 第二都市の主はアユなのか。

 俺も釣りたかったなぁ。

 と言うかこの水族館に主を釣ったプレイヤーが来訪していた事は喜ばしい事だ。


 なんて思っていると……


 ヌシダークバス

 常闇ノ森の泉に生息するコイの主。

 長年、暗黒の泉の中で息を潜めて大きく育った闇の様なコイの主。

 生息地 常闇ノ森


 常闇ノ森にも釣り場があったのか!

 くっ……俺の移動範囲の狭さがここで明るみになっている。

 激しく負けた様な気がしてきた。

 そんな感じで第二都市周辺で見つかった釣り場の主なんかが数匹、展示されている。

 思ったよりも釣りに興じているプレイヤーも多いんだな。非常に参考になる。


 ただ……アルトから教えてもらった地図と水場を照らし合わせると釣られていないと思われる主なんかもぼんやりと予測できそうだった。

 まだ第二都市近隣でも釣られていない主がいるはずだ。

 もちろん、第一都市でもな。

 カルミラ島でもあるかもしれない。二匹釣ってるけど。

 ちなみに白鯨の寄贈者は俺の名前が付いていたぞ。


「おーい。絆くーん」

「な、なんだ?」

「随分と夢中になっていたね。硝子くん達との冒険と魚のコンプリートだったらコンプリートに走るのかな?」


 言われて考える。

 うーん……ここは強欲に行きたい。


「そんなの両方に決まってるだろ? 釣りをしながら冒険するんだ」

「ま、それが良いだろうね。ここはいわば参考にすべき場所だし、君が釣った主は他の寄贈者よりも多いんだ。きっとほかのプレイヤーたちは血眼になって釣りに専念してるだろうね」


 ちなみに……と、アルトは指差す先を見る。


 ブルーシャーク<盗賊の罪人>

 獲物の横取りを好んで行う卑劣な、二つ名を宿したブルーシャーク。ペックル達も手を焼いていた海のギャング。

 生息地 ???


 ああ……やっぱり主だったのな。

 ただ、なんかコーナーが違うぞ?

 主じゃないのか?


「絆くんの報告を聞いて色々と話を聞いた所だとね。アップデート後に釣ろうとした魚を大きな魚が食べて別の魚との攻防が継続される出来事が増えているそうだよ。釣り人の間でフィッシングコンボって言われているみたい。発生すると大物がヒットするんだってさ」

「やっぱりそうなのか」


 実はここ一週間で海で釣りをしていると稀に発生した。

 最初はビンチョウマグロだったのにフウライカジキに掠め取られて釣りが継続したんだ。

 しぇりるとロミナによってパワーアップしたリールの電気ショックで問題なく釣りあげられたけれど、大物だったのは間違いない。

 ……主ではなかった様だ。


「真偽はどうかわからないけれど二連鎖して主が引っかかったって自慢しているプレイヤーがいたらしい。この中に居るのか分からないけどね。絆くんの釣ったブルーシャークもその一部だろう。二つ名付きと任命すると良いかもしれないね」

「また厄介な要素が混ざってきたな」

「そうだね。ただ……二つ名付きのブルーシャークを登録した絆くんに支給されるコインは多いんじゃないかな?」

「そうなのか?」

「生憎と寄贈で得られたコインの報告数が少なくてね……釣り人は居るにはいるけど、全体数だとまだ少ないんだ」


 カルミラ島での波を見て、始めたプレイヤーもそこそこいるらしいけどね、とアルトは続ける。


「ま、そんな訳で、色々と参考に出来る施設になっているから、有効活用してほしいね」

「ああ、ありがたく使わせてもらおう。釣り具のセッティングなんかも紹介されているみたいだし」


 と言う訳で俺は淡水魚に関して色々と目を通す事が多かったのだった。

 やっぱり俺は海での釣りが多過ぎる。

 川釣りなんかも視野に入れるべきだなと感じた。

 フライフィッシングとかの道具も揃えるとしよう。


「絆くんはこの後どうする予定だい? こっちの目処は大分出来ているけれど」

「前にも言ったろ? 硝子達とそろそろ合流する予定だ」


 一週間近く別行動はしていたけれど、その日の終わりにしっかりと連絡はしている。

 硝子達もミカカゲで、色々と調査している段階だ。


「それより簡単なクエスト達成用の養殖環境の整備はどうなんだ?」

「こっちは絆くんのお陰で順調だね。目処はほぼ出来上がったよ」


 カルミラ島のアップデートで魚の養殖要素も解禁されている。

 初期投資はそこそこ掛ったけれど、ニシンやイワシ、サンマ辺りの養殖が軌道に乗ったそうだ。

 最低限、週間毎に起こる納品クエストを賄える環境は整った。

 漁に出なくても賄えるにまで至ったぞ。


 後は……細工は上々。

 一週間の時間を無駄に過ごした訳じゃない事を硝子達に伝えねばならない。


 って感じで俺は島主クエスト関連を終え、確認をしてから硝子達と合流する事にした。

 既に打ち合わせを終えており、ミカガゲの港で合流する手はずとなっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ