エレクトロモーター
エレクトロモーター
アタッチメントパーツ モーターを使用する道具に雷属性の力を宿す。
「なんだコレ?」
「リール……電気ショック漁法」
「それってビリ漁の事を言っているのか?」
「……そう」
「何それ?」
「魚を電気ショックで痺れさせて釣り上げる日本じゃ原則的に禁止されている漁法だ」
「ああ、川でスタンガンでバチッてする奴?」
「まあ……それも該当するだろうな。邪道だから俺はやりたくないと思っているが……」
「魔物を釣るなら相応の準備が必要」
しぇりるの言葉にぐうの音も出ない。
確かに、今後魔物を釣るって事態になった際、既存の釣り具では限界が来ないとは言い切れない。
釣竿やリールにそう言った相手を想定した仕掛けを施さねばいけない状況も出てくるかもしれない。
そもそも……釣っている最中に魚に攻撃をしたのは昔からだしな。
「で、しぇりる。このパーツをどうしろと?」
「ロミナ、作ってもらえる」
「ああ、鍛冶で釣竿や電動リールの改造に使えと」
コクリとしぇりるが頷いた。
「中々釣りをする上でも大変なんですね」
「そうみたいなんだよなぁ……」
問題は経験値とかは釣りで得られる訳じゃないんだけどさ。
「それで絆さん、解体をするのですか?」
「うん。皆には一度見て貰ってからと思って待ってただけ」
皆と合流するまで朝起きてから相変わらず釣りをしていた。
釣果は上々……主が他に居るかもしれないから離れるに離れられないのが難点か。
「大分解体に関しては広まっているみたいですね。解体技能持ちはパーティーに一人は居るのが無難になりつつあるそうです」
「一応、街とかで解体専門で店を開いている人もいるみたいだよ」
「じゃあ専門家に任せた方が良い感じ?」
「なーに言ってんのお兄ちゃん。お兄ちゃんが、解体のトッププレイヤーだよ?」
そうかー? 釣り三昧でカルミラ島でも好き勝手釣りをしていた俺がトップとか怪しさ抜群だぞ。
「絆さんは解体武器を結構揃えていますし、経験も豊富な方なので私達はお店に任せる事はしませんよ」
「でござる」
「……そう」
「了解、まあ期待に答えられるようにこの辺りも強化していくよ」
今の所は硝子達が狩りをしてきた獲物を俺が解体してって事で良いのか?
魔物の場合はその場で捌かないとアイテム欄に入らないのもあるから微妙なラインだ。
大型の魔物ほど、その傾向が強い。
解体技能の難点だなぁ。
「じゃあ早速捌いて行きますか」
って事で俺は勇魚の太刀を取り出してブルーシャーク『盗賊達の罪人』の解体を行う。
……念のため、出来る限りの解体マスタリーを引き上げて行おう。
今まで結構解体をしていたお陰か解体マスタリーをⅦまで上げる事が出来た。下げるかはエネルギーとの兼ね合いだけど一時的に引き上げるのは悪い手じゃない。
解体をするとミニゲームみたいに斬るべき箇所が分かって、そこをなぞる様にやって行くんだよな。
結構これがゲーム的と言うかシステム的なアシストがあってサクサク進む。
まあ、大分馴れているから難易度が高くても特にミスなく解体が出来るようになった。
最初にニシンなんかを捌いた時と今は腕に違いが出るな。
ただ……うん。このブルーシャーク『盗賊達の罪人』はかなり解体難易度が高い。ロミナが鍛冶に失敗だと言った時と同じような難易度の高さが伺える。
勇魚の太刀やケルベロススローターじゃ大分、性能が負けて来ているのがわかる。
何度も刃を通さないと切れて行かない。
解体武器もそろそろ更新していかねばいけないか。
「おおー見る見るうちにあの大きなブルーシャークが捌かれて素材になって行くでござる」
「絆さんも中々やりますよね」
「解体マスタリーの上昇条件を満たしているからだよ」
なんて言いながら解体を終える。
おお、頭が派手に斬る事が出来たなぁ。
上手くすればトロフィーに加工できるみたいだけど、一応、素材優先なので断念する。
盗賊罪鮫の牙、盗賊罪鮫のヒレ、盗賊罪鮫の胸びれ、盗賊罪鮫のサメ肌、盗賊罪鮫の切り身、盗賊罪鮫の筋肉、盗賊罪鮫の軟骨、盗賊罪鮫の心臓、盗賊罪鮫の胃袋……っと、盗賊罪鮫と言う品々が解体で入手できた。
レアリティが高いのか文字が光っている。
「よーし、終了っと」
「お兄ちゃん。ロミナちゃんの所に持って行って新しい装備を作って貰うのはどうかな?」
「良いとは思うが何を作って貰うんだ? 新大陸の武具も確認したいんだろ?」
「そこなんだよねー……正直出来る事が多過ぎるし、まだまだ手探りな感じだし、作って貰って店売りでより優秀なのがあったらなぁ……」
「ですね……」
「新しい装備を入手するまでのつなぎに使うのはどうなのでござるか?」
「それも手ですね。そもそもロミナさんなら変わった素材を持っていけば喜んで下さるかと思います」
確かに、ロミナは面白い素材を打つ事を喜んでいた。
作業的に見慣れた素材を叩くのとは別に楽しんでもらえるだろう。
「そもそも白鯨素材でもまだ武器を作って貰ってないし……」
「技能が追い付いてないってロミナさんが頑張ってらっしゃいますものね」
「立て続けに変わった素材を絆殿が持って来るのでござるよ」
「そう」
「わかってるけどさ……」
って所でコール音が響いた。
誰だ? そう思って確認するとアルトからの連絡だった。
「今、アルトから連絡が来たな」
「そのようですね」
「じゃ、出る」
許可を押してアルトと連絡を取る。
「ああ絆くん。新大陸に向かって早々悪いのだけど、ちょっとお願いしたい案件がある。出来れば来てくれないかい?」
「まだ新大陸の港で釣りをしていただけだから良いが、何かあったのか?」
「僕だけでどうにか出来る案件でもあるとは思うのだけど、こう言った事は絆くんにも話した方が良いと思う事でね」
「で、なんだ?」
「カルミラ島の領主だからこそ発生するクエスト……かな? それとアップデートによる更なる拡張要素とか色々と発見があった感じだよ」
「わかった。じゃあみんなで行く」
「いや、絆くんだけで良いよ。せっかくの新大陸じゃないか。どうせ絆くんの事だし、港でずっと釣りをしていたんだろ?」
「正解です」
「そう」
「うん。お兄ちゃん。港で釣れる魚のコンプリートを狙ってるよ」
「相変わらずでござるよ」
外野が肯定してきた。
良いじゃないか! それが俺のプレイスタイルなんだから!
「絆さんだけで良いのですか?」
「一応ね。硝子くんたちはむしろ新大陸の調査をお願いしたい。もちろん、こちらの用事が終わったら絆くんとはすぐに合流して貰って良い」
「二手に別れろって事か……」
「元より二手だったでござる」
闇影、うるさい。俺だってみんなに合わせて狩りはしたい。
けれど色々と検証したい事もあるんだからしょうがないだろ。
「んじゃ、とりあえずアルトとロミナに報告がてら俺がカルミラ島に一旦戻る事にするか」
「絆さんがそれでよろしいのでしたら……」
まあ、どうにかして硝子達と楽しくゲームをする方法をそろそろ考えて行かねばいけないのも事実だ。
別行動で漁師をし続けるのも良いけどさ。
何か無いかの模索も俺はすべきなんだろう。未開の釣り場が俺を求めているんだ。
「じゃ、ミカカゲ国で良さそうな狩り場とか釣り場が見つかったら教えてくれ、俺は色々と釣り場も探索をしているから」
カルミラ島での出来事から船での戦闘ならペックルさえ呼べばどうにかなる場合も多い。
強過ぎる魔物なんかに遭遇したら逃げれば良いし。
幸い、しぇりるが改造したペックルを使った海賊船はかなり足が早いからミカカゲに来るまでの航路で苦戦する様な相手は遭遇していない。
何より……カルミラ島には一瞬で帰れる。
「わかりました。毎日報告はしますから絆さんも返事をしてくださいね」
「当然。よさそうな装備品が出来たら報告するよ」
「それじゃよろしく頼むよ。絆くん」
って事で本格的に俺だけカルミラ島にとんぼ返りをする羽目になったのだった。
ああ、船は俺が預かる事になったぞ。