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ブルーシャーク『盗賊達の罪人』


 フィーバールアー!

 スキルの説明通りだけど、思ったよりも引き寄せ効果が高い!

 俺からすると滅茶苦茶ぶっ壊れ性能を宿したスキルだぞ!

 それから俺は無我夢中でフィーバールアーを海に投げ入れていた。

 何せ海面に入ると同時に魚が掛ると言う恐ろしい状態だ。

 しかも俺のフィッシングマスタリーがこの港で要求されるLvよりも高いお陰でかなり楽に釣りあげられる。

 ほぼ魚との戦闘を繰り返していた様なもんだ。

 やがて……ガクンと一際大きな手応えで竿がしなった。


「お? この手ごたえは……」


 グイグイと今までにない手応えに、間違いなく大物が掛ったのを俺は理解した。

 電動リールで巻き取りを仕掛けるのだが、ナマズと同等の抵抗を見せてくる。

 ギギギ……と船が僅かに傾く様な手応え、うんうん……このありえない程の引きの強さはたぶん主だろう。


「あ、釣りマスターがなんか大物引き当てたみたいで船で竿振ってる」

「がんばれー」


 港で休憩していた奴が俺を指差して応援を始める。

 いや、お前ら見てたのかよ。

 とりあえず軽く手を振って、魚とのバトルを繰り返す。


「釣りマスターの釣りを見てるとさ、結構大変そうだな……釣りって」

「だなー」


 呑気な会話を俺を指差しながらしないで貰えますかね?

 うお! 船底に潜ろうとしやがる。


「一本釣り!」


 グイッとスキルを使って引き揚げに掛るがしぶとく抵抗しやがる。


「はぁ!」


 バシャアアア! っと水面に大物らしき掛った魚を確認する。

 お? かなり大きなクロダイだ。

 そのままザバンと海面に落ちるだろうがこのままリールを巻いていけばいずれ釣れる!

 きっとあれが主だな!

 なんて思った直後の事――。

 ザバッ! っと大きなサメ……見た目は大きなブルーシャークが海中からいきなり現れて俺が戦っていた大きなクロダイに噛みついた!

 ガクンと釣竿が更にしなりリールがぐるぐると回り始める。


「え? な、おい!」


 思わず驚きの声を上げる事しか出来ないぞ。

 急いで巻きなおすのだけど、引く力が洒落にならない位上がった!

 さっきの比じゃない。


「な……な……」


 観戦していたギャラリーも驚きの表情を浮かべるしか出来ないだろ。

 なんで釣っている最中に他の魚と言うか魔物が乱入して来てるんだよ!


「サメワロタ!」

「スゲー! さすがは釣りマスター! あんな事が起こるんだな!」


 いや、そんな事言ってる暇はねえよ!

 ぐいぐいと、洒落にならない位、引きが強くて引き摺られる。

 やっば! 落ちる!

 手すりに足を引っ掛けて思い切り引っ張って体勢を整えて行く。

 大きなブルーシャークは釣られまいと右へ左へ海底へと暴れ回っていやがる。

 これは釣りと認識して良いのか?

 誰かに手伝ってもらいたい所だけど硝子達は現在、新大陸での夜を満喫している最中だ。

 ……しょうがない。


「カモンペックル!」

「ペーン!」


 クリスこと王冠をかぶったキングペックルを呼び出し、ターゲット指定を行う。


「行け! あのサメを弱らせろ!」

「行くペン!」


 ザブンとクリスが海に入り、高速回転しながら水面に飛びだして糸を斬らんとする大きなブルーシャークに突撃する。

 クリスの突撃で水竜巻が発生し、ブルーシャークがそこに捕らわれた。

 なんか派手な攻撃エフェクトが発生した様に見える。


「おおおおおお!」

「スゲー……滅茶苦茶派手だな! みんな見に来いよ!」


 なんか観戦している連中が騒ぎを聞きつけてぞろぞろと集まってきている?


「なんだあれ? ブルーシャーク?」

「釣りマスターが大きな魚を釣り上げようとした所を横取りしてそのまま第二ラウンドに入った感じ」

「で、ペックルがサポートしてると……」

「すげぇえええええ!」


 バシャ! っと大きなブルーシャークは水竜巻を消し飛ばし、そのまま海中に入って、再度水面に飛び出て抵抗を繰り返す。

 ええい! 大人しくしろ!

 クリスはペシペシとブルーシャークに飛びついてバシバシと攻撃を続けてくれている。

 何か無いか……あった! しぇりるの用意したバリスタ近くまで格闘を繰り返しながら片手で……片手で持つのも無理か!


「カモンペックル!」

「ペーン!」


 ペックルを再度適当に呼び寄せる。今度は……兜装備のペックルか。


「バリスタ準備!」


 ステータスでアイコン指示を送り、ペックルに援護射撃を指示する。


「了解ペン!」


 兜装備のペックルがバリスタの矢を拾い上げてブルーシャークに向かってバシュっと射出した。

 ドスっとエフェクト発生!

 よし! 徐々に大きなブルーシャークが弱ってきたぞ。


「頑張れ!」

「大物にはあんな風に攻撃して良いのか……」

「アレって参考にして良いのか?」

「良いんじゃねえか? つーか……閃きもしなかったぜ」


 応援の声がなんか複雑な気持ちにしてくれる。


「とにかく……これでトドメだ! 一本釣り!」


 大分弱って来たのを確認し、俺はトドメとばかりに一本釣りを使って大きなブルーシャークを甲板に引き上げる。

 ビチビチと大きなブルーシャークが甲板に乗っかり跳ねまわって暴れていたが、やがて観念したのか大人しくなった。


「ペーン!」


 二匹のペックルがブルーシャークの尾にロープを縛り付け、船の後方にあるフックに引っかけて吊りあげた。

 アングリとばかりにブルーシャークが巨大サメ映画で見る様な体勢で吊るされている。


「おおおー!」

「釣りマスターの勝利!」

「見てて面白い勝負してんな!」

「さすが釣りマスター。白鯨を釣り上げた幼女」


 パチパチと拍手が起こっているけれど、港で起こる勝負じゃねえ……。

 つーか……なんでブルーシャークが釣れてんだよ。

 それと誰が幼女だ! ネカマと呼べ!

 って所で針を外す……あ、いつの間にか釣り針に戻っていた。

 ステータスを確認するとフィーバールアーのクールタイムが表示されている。

 ……どうやらクールタイムは一日程必要っぽい。

 入れ食いになるルアーを呼び出すスキルでしばらくの間は釣り具も強化される隠し効果があるって……所か。

 少なくともサメ釣りに適した仕掛けはしていなかったので間違いは無いはず。

 この辺りはゲーム故にあんまり参考にすべきじゃないかもしれない。

 とにかく……釣った物は釣った物な訳で、魚拓を撮ろう。

 カシャッと手でカメラのポーズにしてスクリーンショットを撮る。


「ペーン!」


 ペックル達が勝利とばかりに胸を張って自己主張をしている。

 勝利ポーズって所か……。


「でかいなー……」


 釣りあげて確認したのだけどブルーシャークにしてはかなり大きい。

 ちなみにブルーシャークはアオザメではなく、魔物としてのブルーシャークなので別種だ。

 で……そのブルーシャークからして別種の魔物かと思ったが魚名としてもブルーシャークだ。


 ブルーシャーク『盗賊達の罪人』


 妙な二つ名が付いている!

 盗賊達の罪人って……魚を横から掻っ攫おうとしていたからか?

 そのブルーシャークなのだけど……全長5メートル程あった。

 8メートル行っていたらかの有名なサメ映画に匹敵する化け物なんだが、そこは残念と見るかどうするか。

 ……この港でなんでこんなの釣れるんだろうな。沖で釣れたらまだ納得出来たんだが……。

 宿代をケチって船に戻っている船持ちの連中がしきりにこっちを指差している。

 とりあえず硝子達にでも報告でもするか。

 チャットで呼び出して硝子、闇影、しぇりる、紡を指定して一斉チャットを行う。

 プルル……とやや古い演出でチャットが繋がった。

 ……闇影は繋がらないな。


「あ、絆さん。こんな時間にどうしたんですか?」

「ちょっと話がしたくてさ、闇影はどうしたんだ?」

「もう寝てます」


 そうか。寝るの早いなアイツ。


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