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水平線の可能性

 いつもの橋の前でアイテム欄を表示させた俺は、木の船+3を浮かべた。

 そして転覆しない様にゆっくりと乗る。

 おお、現実でボートに乗った事があるが、違和感がない。

 ともあれオールを使って漕ぎ始める。


「……中々進まないな」


 おそらくこれにもスキルがあるのだろう。

 乗船スキルか、それともオールスキルか。

 ともかく俺は大海原に繰り出すぜ。


 ――1時間経過。


 スキルなしの影響か、まだ陸が見える。

 いや、あまり離れすぎても危ない。そろそろ釣りを始めよう。


「ん? なんだ、あれは」


 陸とは間逆の空から一つ、黒い影が向かってくる。

 良く見てみると鳥だ。

 鋭いくちばしを持った鷹みたいな鳥。鷹より若干大きい。


 ……モンスターじゃね?


 俺は勇魚ノ太刀を取り出す。

 が。

 ガクンと船が揺れて、落ちそうになる。


「くそっ! 重過ぎるのか!?」


 おそらくは船に重量判定でもあるに違いない。

 直に勇魚ノ太刀を仕舞ってアイアンガラスキ、鳥型モンスターと相性が良いという解体武器を手に持つ。

 よし! 今度は沈まない。


「今だ。食らえっ!」


 アイアンガラスキを大きな鳥、キラーウイングに振るが当らずにカラぶった。

 船の上という事もあるが、戦闘には慣れていない。

 その隙を突いてキラーウイングは特徴であるくちばしで突いてきた。


「くっ!」


 50ダメージを受けた。

 ステータス画面を眺めるとエネルギーが50減っている。

 全てのステータスがエネルギー計算されるとは聞いていたが、こういう事か。

 システムに納得しつつ向けた先にいるキラーウイングは更に攻撃を仕掛けようとしている。

 くそ、形振り構っていられない。

 俺はもう一度アイアンガラスキを振る。


 ――ザシュッ!


 そんな効果音と共にキラーウイングに命中。HPが三分の一減った。

 これでも鉄を使った前線組でも使われている高価な武器なんだが……それとも、キラーウイングが強いのか? どっちでも良い。今はこいつを倒す事だけを考えよう。


「てい!」


 俺はもう一度手に持った武器に力を込めて振った。




 殴り合いの結果550ダメージ。獲得エネルギー量は300だった。

 見事にマイナスだ。

 自分で自分に言い訳するなら、船の上では足が引っ張られる。

 地上だったら、もっと上手くやれたと思う。

 ともあれ俺は周囲にあの鳥がいない事を確認して釣竿を取り出す。

 餌は事前に買ってある。

 今回はなんと小海老だ。

 ミミズより上位の餌で、一個単価で結構高い。

 船購入記念といった所か。

 優越感に浸りながら、糸を海に垂らす。

 いつも通り集中の先を竿の先端に向けてひたすら待つ。


 ――タイを獲得。


 おお! ついにタイだ。

 初めてスズキを釣った時も感動したが、引きが結構重かった。

 これもフィッシングマスタリーⅢのおかげだな。

 直に餌を付け直し、釣りを再開する。

 ぐいっと強い引きがやってくる。

 巨大ニシンと比べると何段階も劣るが、今は慣れない船上。こっちは逆に力が入らない。

 しかし負ける訳にはいかないと今までの基本を忠実に力を込める。


 ――クロマグロを獲得。


「よっしゃ! ついにマグロだ」


 これは船を買った甲斐があったな。

 高鳴るテンションを胸にマグロをアイテム欄に入れようと近づける。

 うわっ! 一瞬船が沈みそうになった。

 直にアイテム欄に被せて無理矢理押し込む。

 そんな感じで俺は充実感にも似た感動を抱きながら、もう一度糸を垂らしたのだった。


   †


 あれから一週間経った。

 俺は当初の目的をすっかり忘れ、釣りに勤しんだ。

 いや……海釣り、思ったより楽しくて。

 時に陸地が見えなくなるまで進み、モンスターに囲まれ命からがら脱出したり、アクアホエールというシャチっぽいモンスターに殺され掛けたり、ブルーシャークという名のモンスターに船を破壊されかけたり、ブレイブバードという大型鳥モンスターに追われながらも釣りを続けた。


 最終的には最初のクロマグロが釣れる場所が一番安全だという事実が判明したというのがアレだが……ともあれ、舵スキルと船上戦闘スキルが項目に増えた。

 どちらも船で行動する事で重要となってくるスキルだ。

 舵スキルは船をコントロールする効果があって、オールでも効果がある。

 船上戦闘スキルは答えるまでもなく、船の上で発生するマイナス補正を解消する。効果を見る限り、ランクアップを繰り返せば船の上で追加補正も付くらしい。


「だけど、もっと向こうに行きたいな……」


 アルトの話では、もうそろそろ第三都市への道が見付かってボスとの戦闘になるんじゃないか、と噂されているらしい。

 その話を聞くと、俺何やっているんだろう……とか若干自問自答したくなるが、俺は海を見て思う。


 ――この海の先に何があるのか見てみたい。


 絶対何かある。でなきゃ、こんなに海にモンスターがいる訳がない。

 だが、能力的にまだ無理だ。

 下手に無理してエネルギーを失うのは一番ダメだし、シャチやサメは俺より強い。

 今は堅実にエネルギーとマナを稼いで強くなるのが先決だろう。

 一応は元素変換を使ってマグロやタイからエネルギーを増やしてはいるのだが、やはり時給換算にして、どんなに多く見積もっても1000が限界。


 もっと漁生活をしていたいが、俺は更なるステップアップの為、陸での戦いを決意したのだった。

 どうでも良い補足だが、マグロとタイのアイテムがかなり良い値で売れた。

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