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ディメンションウェーブ第三波-討伐-

 シークレットウェーブクエスト発生!

 クエスト名『次元ノ白鯨を釣りあげろ!』


 俺はリールを巻き取りながら眉を寄せる。


「な、なんでござるか!? 絆殿!」


 船が引っ張られて斜めに寄っている。

 原因は俺だ。


「紡! 舵をしっかり持って運転しろ!」

「絆さん! 一体何を引っかけたんですか!?」

「どうやら次元ノ白鯨が引っかかっているらしい……」

「はい? あの絆さんのルアーと垂らした糸で、深い所にいる次元ノ白鯨に?」

「どう見てもおかしいでござる!」

「気持ちはわかるが気にするな!」


 ゲームではありがちな現象だ。

 モンスターをハンティングするゲームに登場する、カエルを餌にするとデカイ足の付いた魚が釣れたりするもんな。


「これだけ引っ張られるって事は嘘じゃないんじゃない? 確か巨大イカを釣った時も引っ張られていたし」


 紡が若干楽しげに舵を強く持って言い切る。

 しかしなんだこの引き!?


『おい、島主パーティーが何かやってんぞ?』

『釣り? こんな時に、何考えてんだアイツ』

『バカを通り越してキチガイだろ』


 うるせー! こっちは釣りがしたくてゲームに参加してんだよ!

 波発生中のフィールド限定で良い魚が釣れるかもしれないだろ。

 何事も実験だ!

 その結果、シークレットウェーブクエストなんて出てんだから。

 とか言い訳しても、信じ無さそう。

 今は結果を出すしかない!


「うおおおおおお! 俺の釣り経験を舐めるなよぉおおおおお」


 今までの釣り経験、竿の性能、モーターリールの力……そして振り込んだ技能と熟練度……その全てを総動員して釣りあげてくれるわぁあああああああああああ!

 モーターリールにこれでもかとエネルギーを振り込みながら思い切り引きあげる。

 すると魚影が徐々に大きくなって行き、俺達が格闘していた相手が何者であるのか、周りで嘲りながら雑魚と戦っていた連中が口を開ける。


「一本釣りだぁああああああああああああ!」


 ついでにスキルをぶちかましてトドメとばかりに竿を振り上げた。

 そして……ザバァっと音を立てて、次元ノ白鯨が海面から釣りあげられる。


「「「何ィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!?」」」


 巨大な水柱を上げながら次元ノ白鯨は海面に叩きつけられ、目を回しているエフィクトを出しながら腹を見せる。

 少しばかり遅れてしぇりる達が海面に顔を出した。


『い、今来た情報を報告すのじゃ。海中で暴れ回っていた次元ノ白鯨が突如顔を海底に向けたかと思うと凄い速度で海面に引っ張られて行ったそうじゃ』

「ボスが釣られた」

「釣ってた」

「島主パーティーが釣ってた」

「おかしい」

『何? 島主パーティーが釣りをしていた? それに引き寄せられて釣りあげられた?』


 唖然とした空気が辺りを漂う。

 俺は船首に立ち、ドヤ顔をしてみた。


『と、ともかく! 今が攻撃のチャンスじゃ!』


 指揮をしている人の声に、ハッと我に返った連中が攻撃を再開した。

 気絶している所為か、次元ノ白鯨の奴……攻撃の効きがとてもいい。

 一気に回復した分を越えて、大ダメージをみんなで与える事に成功。


 やがて我に返った次元ノ白鯨は動きまわって攻撃を再開、海面でしばらく同様の攻撃を繰り返したかと思うと、また潜って行く。

 HPが一定以下になると海中に潜るスタイルだな。


 今度は潜る連中の他に釣竿を垂らすプレイヤーが現れた。


「なんだよこれ……」


 が、ブツンとすぐに糸が切られて悔しがっている。

 俺以外にも釣り人が居た事に素直な喜びを覚える。

 今度、声でも掛けようかな。


「絆殿が仲間を見つけた目をしているでござる!」

「釣り仲間がそんなに欲しいんですか!?」

「欲しいに決まっているじゃないか! 今度あのプレイヤー達と一緒に一ヵ月くらい地底湖で釣りをするんだ……」


 こう、釣り祭的な意味で。


「誰得でござるか!」


 もちろん俺得だ。

 ちなみに後の話だけど断られた。

 しかも勘弁してほしいとまで言われたぞ。

 ただ、俺の釣りスタイルはそこから噂になって次元ノ白鯨を釣り上げるのに足る努力をしているのだと納得された。


 っと、また俺の釣竿に引っ掛かった!

 またも俺は次元ノ白鯨を釣り上げ、絶好の攻撃チャンスが到来する。

 これだけ攻撃のチャンスとパターンを組めたら後は半ば作業化するのにそこまで時間は掛らなかった。

 合計3回目の釣り上げをする頃には次元ノ白鯨のHPはゼロになり……。


「―――――!?」


 声にならない叫びをあげながら次元ノ白鯨は絶命した。

 白い閃光が辺りを通り抜け晴れやかな空と白い雲……最初の波を経験した時と同じ事が起こっていた。

 どうやら波はこれにて終了のようだ。


 キラキラと海が輝いている。

 おや?

 次元ノ白鯨の近くでドボンと良い音を共に派手な水しぶきが立ち、其処には船が一隻。


「いってー……ここは? アレ、体内バトルをしていたんだが……」

「後少しで心臓に届くはずだったんだが……」


 首を傾げている。

 たぶん、お前等の方が正攻法だったんだろうな。

 急所を攻撃すると背中の穴から噴出されて前線に復帰とかする感じで。


「ウィナー!」


 しぇりるがエイハブスピアを船首で掲げて勝利の声を上げている。


「「「よ、よっしゃー!」」」


 若干どもった声が聞こえてきたぞ。


「おつー」

「おつかれー」

「お疲れ様ー」

「乙」

「おつカレー」


 ――ディメンションウェーブ第三波討伐!


 システムウィンドウが表示されて描かれている。


「ふー……勝った勝ったー今回は結構良い成績出せるんじゃないか?」

「ですね」

「拙者達の無双だったでござる」

「当然の事……」

「やったね!」


 みんなでポーズを取った後、リザルト画面を確認する。

 お? おお? おおおおおおおお?

 まずは疑問の解決から入ろう。


「なんでここまでの数字が出てるんだ? 単純に雑魚の駆逐とかボスへのダメージの貢献は闇影やしぇりる程は無いはずだが……」

「ペックルに攻撃させるのも絆さんの成績に加算されるって事なんじゃないでしょうか?」

「なるほど」


 そう、与ダメージの順位で俺はなんと! 1位を獲得していたのだ。

 何かしらのバグが起こっていたとか言われたら俺自身も嫌だったので、納得の理由が欲しかった。

 なるほどなるほど、ペックル達は俺の手足の様に動いて、無数の攻撃をしてくれていたもんな。


「よっしゃー!」


 おそらく俺の人生の中でもっとも輝かしい活躍をした瞬間ではないだろうか?

 撮影モードでリザルト画面を何度も撮影した。


「おお! 絆殿! 凄いでござるな!」

「お兄ちゃん。他の項目も確認した方が良いよ。何処も名前が載ってる」

「受ダメージキングにはなっていないからな!」

「何時の事を引き摺っているでござるか」

「そもそも、私達の名前が大抵の部分に載っていますよ」

「そう……」


 確かに、俺達の名前は良い意味で載る項目の大半に記載されていた。

 そして輝かしい事に、今回の波までの総合で俺は1位を獲得したのが判明している。

 良いな……今までこう言った順位があるゲームで1位なんて殆ど取った事が無い。

 まあ、二度目の波を強制不参加させられた分のツケは返して貰った気はする。

 とりあえず俺が取った1位は五つ。


 総合順位

 合計ダメージ

 生活

 物資支援

 種族


 この五つだ。

 総合は言うまでもない。

 良い意味での順位での1位だろう。

 所持金等は生活にカテゴライズされると見た。

 合計ダメージは先ほどのやり取りだろう。ペックル達のお陰だ。


 次点はしぇりると硝子、そして闇影と紡だ。

 まあ、島で他のプレイヤーよりも早くやりこみをしていたのだから自然と火力が出たのは言うまでもない。

 雑魚はほぼ一撃で仕留めて居た訳だし。


 次に生活だが……硝子やしぇりる、ロミナやアルトがベスト10以内にノミネートしている。

 波までの間にどれだけ生活をしたかに関わるのだとは思うのだが……まあ、島の開拓なんてやっていたら間違いなく増える項目か。

 釣りとかもここに関わる……普段の俺が狙う順位欄だ。

 闇影が名前に入っていないのは最後に呼んだからだろう。


 物資支援はもちろん、アルトやロミナが名前に入っている。

 俺が一位なのはカルミラを解放してプレイヤーの拠点を確保したから……だな。

 カルミラに来たプレイヤー全員に支援をしている様な物として評価に入ったのだろう。

 しかも次元ノ白鯨を釣り上げるなんてのも間違いなく支援に入ると思われる。

 もちろん種族順位も俺は1位だぞ。


 この全てで1位を取ったお陰で総合一位になったのは間違いない。

 ともかく、これでダメージキングなんて不名誉な称号は完全に消す事が出来ただろう。


「ペックルマスターの無双で終わったか」

「そりゃあ……あんだけ乱射すればな」

「今回だけで何セリン使ったんだ?」

「アレだけやりゃあ誰でも一位取れるだろ」


 まあな。俺もそう思う。

 しかし、外野の声は気にしない。

 というかペックルマスターって俺の渾名か?

 く……新たな不名誉な称号が付いてしまったじゃないか。


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