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泡攻撃

『ボスが出現したのじゃ! 余裕のある者達は挙って攻撃をするのじゃ!』

「「「おー!」」」

「行く!」


 しぇりるがやる気を見せて舵を切る。

 船が素早く移動して次元ノ白鯨へと急接近。


「闇、舵をお願い」

「おわ! しぇりる殿!?」


 闇影に船の舵を任せたしぇりるが船の武装、大砲やバリスタへと近づき、ペックル達に混ざって攻撃を始めた。

 そして徐に、バリスタとも異なる銛を射出する捕鯨砲に手を掛けて引き金を引く。

 捕鯨砲に装填されていた銛が伸びて行き、次元ノ白鯨に突き刺さる。


 おー……結構、良い感じにダメージ入っているんじゃないか?

 ゴリゴリと次元ノ白鯨のHPバーが減って行く。

 反撃とばかりに次元ノ白鯨が宝石の光線を飛ばして来る。


「任せろペン!」


 攻撃に反応してブレイブペックルが船から飛び出して盾を構えて攻撃を受け止めた。


「俺達も続くぞー!」

「おお!」


 他のプレイヤーも次元ノ白鯨目掛けて、各々船の武装で攻撃し、素潜り部隊も飛び付いて各々の武器で攻撃を始めた。

 俺は相変わらずペックル達と協力してバリスタや大砲で狙撃をしている。


「絆殿、拙者も攻撃に行きたいでござる」


 闇影が目をキラキラさせている。

 まあこういう戦いをするのがゲームの醍醐味だ。

 巨大ボスとの戦いをのんびり見ているなんて嫌だろう。


「はいはい」


 しょうがないのでペックルの笛を取り出し、操作を受け持つ。

 この船は舵での操作も出来るが、笛での操作も出来る。

 闇影が舵から手を放し、次元ノ白鯨目掛けて魔法の詠唱を始める。


「ドレインでござる!」


 相変わらずだな。


「サークルドレインでござるー!」


 で、増援で現れた雑魚の一掃も闇影が行ってくれた。

 笛の操作の限界もあって、俺が舵を握り、次元ノ白鯨が放って来る攻撃を避けるように意識する。

 結構大変だな……。

 何故かしぇりるは嬉々として次元ノ白鯨目掛けて攻撃を繰り返しているし……。

 というか、雑魚の方は無視して次元ノ白鯨の方しか見てない!


 やがて次元ノ白鯨は海中に潜って行く。

 また海面にある船目掛けて突撃でもして来るのだろう。

 と言う所で硝子と紡が船に戻ってきた。

 器用にもペックルに捕まってだ。


「ただいま、お兄ちゃん」

「ただいま戻りました。随分と巨大なボスですね」

「まあな。さっきからしぇりるが興奮してボスを嬉々として攻撃しているぞ」

「珍しいですね」


 ボーっとしている事が多いしぇりるがここまでやる気を見せるのは、確かに珍しい様な気がしなくもない。

 そういや前に、エイハブスピアに関して話していたっけ。

 白鯨とか呟いていたし、何かしら関心がある相手って事なんだろう。

 って考えてみればエイハブスピアは次元ノ白鯨に効果が高そうではある。

 で、次元ノ白鯨の攻撃に備えていると……ぶくぶくと海面が泡立ち始めた。


「うわ! これ、進行妨害攻撃だぞ!」


 泡の上を航行しようとしてクルクルと船が回転している船が俺達の近くにいる。


「うわあああ! 俺達の船が、し、沈む!」


 小型のボートに関しては耐久の限界を迎えたらしくぶくぶくと沈み始めていた。

 地味に厄介な攻撃してんな。

 やがて……海中にある影がドンドンと俺達の船目掛けて近づいて来る。

 これって登場時にやらかした海面からの突撃じゃないか?


「硝子、舵を任せた! ブレイブペックル!」

「あ、絆さん!」


 舵を硝子に任せ俺は船の縁から海中目掛けてブレイブペックルに指示を出す。


「任せろペン!」


 ブレイブペックルが俺の指示に従い、海中に飛び込んで船底へと回り込んだ。

 そしてガツンと何かがぶつかった音と共に次元ノ白鯨が俺達の船の脇から斜めに飛び出した。

 どうやらブレイブペックルにぶつかって進路が変わって飛び出したって事のようだ。


「チャンス」


 しぇりるが、俺達の船の近くに着水した次元ノ白鯨目掛けて捕鯨砲を放った直後、船から飛び出して次元ノ白鯨に飛び付き、背中に乗る。

 そしてエイハブスピアを振りかざして突き立てた。


「ボマーランサー」


 先端が爆発する銛の一撃に次元ノ白鯨は声を上げる。

 おお……なんとも凄いな。

 というか、しぇりるが物凄く楽しそう。


 まあ、武器が武器だから相性は良いのかもしれない。

 その理屈だと俺の勇魚ノ太刀も特効になるはずだが……それは倒して解体する際にでも確かめれば良いか。

 あんな巨体に飛び付いて武器を振りまわすほどの運動神経を俺は持ち合わせていない。

 ゲームだからと言って、俺のプレイヤースキルは高くは無いのだから。


「しぇりる殿、映画の登場人物になり切った様な顔をしているでござるな」


 なりきりのスペシャリスト(笑)である闇影が察する。

 確かに……何か因縁があると言うよりも、戦いたかったモンスターが居て喜んでるって感じだ。


 しかし……動きが良いな、しぇりる。

 事、海が関わる所だと硝子や紡並みに動きが良いのがわかる。

 船とマシンナリーの製造職だから俺と同類だと思っていたのに。


 さて、俺もやる事をやって行こう。

 狙いを絞ってバリスタや大砲、捕鯨砲を発射させる。

 もちろん、ペックル達への指揮は俺が担当している。


 ただ……なんだろう。

 昔、紡や奏姉さんと一緒にプレイしたゲームで似た様な事をした様な覚えがある気がする。

 アレは砂の上を走る船だったけど、鯨みたいに大きなモンスターを倒した感じだった。

 なんて言うか、アレに似てる。


 次元ノ白鯨の背中でツルハシとか振るったら何か採掘出来そう。

 発想は力だよな。

 今まで、その発想力で俺達は登って来た訳だし。

 とは言え、今は目の前のボスに意識を向けるべきか。


 次元ノ白鯨は大人しくしているはずもなく、割と過激に突撃や複数ある宝石の部分から熱線を放つ。

 挙句津波を起こしたりと、攻撃のバリエーションは多岐に渡る。

 俺達の船の機動力は波に参加している船の中で最も良い物で、次元ノ白鯨の攻撃をその機動力とブレイブペックルの強固な守りで抑え込んでいる。

 しかもバリスタ等の装備は潤沢、投網や機雷まで用意してある分、しぇりるが用意した品々が大いに役立っている。


「しぇりるさん楽しそうですね」

「だなー」


 次元ノ白鯨の上に引っ付いて『エイハーブ! モビーディーック!』って叫びながら技を放ちまくっている。


「しぇりる殿は白鯨のエイハブ船長になりきっているのでござるな。大元は小説でござるよ。拙者、読んだ覚えがあるでござる」

「確かエイハブって白鯨に負けた人物だとかしぇりるが言っていたな」

「そうでござるな……語り手が唯一の生存者で、他の船員は全員死んだと言っても間違いは無いでござる」


 改めて聞くと縁起の悪い武器って意味がわかるな。

 捕鯨に興味があったのか、好きな物語だったから実際に挑めてやる気を見せているのか。

 たぶん、後者だろう。

 まさかしぇりるはその血縁者って訳ではあるまい。

 血縁者だとしたら外人だろうし、あんなに嬉々として戦ったりしないだろう。

 後に本人から直接聞いた所だと、好きな物語だったからだとか零していた。


「ちなみに映画だとエイハブ船長が勝ったハッピーエンドのバリエーションもあるでござる」

「へー」


 割とどうでも良い。

 どちらかと言えば闇影がどうしてそんなに詳しいのかの方が気になる。


 と言うか、こんなに雑談して居られるのは、出て来るモンスターや攻撃に対して余裕があるからに他ならない。

 闇影のサークルドレインで次元ノサハギンとかの雑魚が余裕で沈んで行く。


「紅天大車輪!」


 紡がしぇりるに続いて次元ノ白鯨に飛び乗り、技を放ち始める。

 結構良い感じにダメージは入っているんじゃないか?


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― 新着の感想 ―
[一言] 見覚えのある戦闘風景だなー。 盾を読んでるとニヤッとできるこの流れ好きです。
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