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武器と船

 翌朝。

 俺は宿屋の自室で巨大ニシンを解体していた。

 初心者用解体ナイフでは大きさに問題があり、捌き辛いがゆっくりと解体していく。

 マグロ包丁でもあれば良いんだが、生憎とそんな物は持っていない。

 まずは鱗を峰で一枚一枚剥がして行き、鱗を全部剥がし終わったら腹下に刃の先端を差し込みサーっと尾の方まで一気に引き裂いて開いていった。

 最終的に取れた材料は――


 低級王者の鱗、低級王者の髭、低級王者の牙、低級王者の心臓、低級王者の瞳、低級王者の太骨、最高級ニシンの肉、最高級ニシンの卵。


 こんな感じだ。

 このニシン、メスだったんだな……なんてアホな事は言わない。

 解体マスタリーもⅡなので多少は補正を掛けてくれる影響、幸いにも全て捌けた。ちなみにこの後、紡の知り合いに武器と防具を作ってもらう約束をしている。

 ぬしから取れた素材があるので、もしかしたら良い武器が作ってもらえるかもしれない。


   †


勇魚(いさな)ノ太刀というのが作れるね」


 そう言ったのは紡の知り合いの鍛冶師だった。

 前線で使われている武器の半分を作っていると噂が立つ程の腕前で、今人気上昇中。

 種族は晶人。

 胸に付いた赤い宝石が煌いて、かっこいい。

 ちなみに女性だ。どうでもいいが、そこは男として気になる所。


「それにしてもこんな材料どこから手に入れたんだい? 職業柄色んな材料を見てきたけどこんな材料は始めてだよ」

「えっと海で釣ったんです」

「ああ、昨日第一で騒がれていたのは君か!」


 どんな風に騒がれていたのでしょうかね。

 ともあれぬしの材料から強そうな解体武器が手に入る。

 俺はキラキラした目で見つめていると鍛冶師の女性は照れ臭そうに金槌を握る。


「武器作成!」


 そう叫ぶと金槌が神々しく光る。

 その光は使うランクの高そうな携帯溶鉱炉などにも伝染して、材料を溶鉱炉に入れる。するとドロドロになった溶け出た光る液体が金敷に広がり、カンカンと金槌を強く叩いた。

 実際に鍛冶がどんな手順なのかは知らないが、見ていて面白い。

 鍛冶師も面白そうだな。まあ今は釣りと解体だけで精一杯だが。

 それからどれ位か経った頃、勇魚ノ太刀は完成した。


「……結構デカイな」


 太刀というだけあってかなり大きい。

 某狩猟ゲーにでも出て来そうな。そんな大きさだ。

 これで解体系の武器だと言うのだから二度目の驚きだ。


「おや? +が付いている。10本に1本位しか起こらないのだが、君は運が良いね」


 渡されたのは勇魚ノ太刀+1、思ったよりも軽い。

 きっと解体マスタリーの補正があるからだろう。


「そういえば思い出した。勇魚は鯨の事だったはずだ」

「へぇ……」


 鯨用の武器かは知らないが、あんなに大きな生物を切る為の刃物なのか。

 切り札として持って置こう。

 そんな感じで他、鉄ノ牛刀、アイアンガラスキ、アイアンペティナイフ、の三つも作ってもらった。

 上から獣系、鳥系、植物系の三つだ。


「ありがとうございましたー!」

「いや、こちらも珍しい武器を作れて楽しかった。君さえ良ければ面白い材料を見つけた時は私の所に来て欲しい」

「良いんですか? 俺は前線組では無いですよ」

「ははは、客は選ばないさ。無論、人によっては作らない事もあるがね」

「なるほど」


 なんというのかアルトとは別の方向でロールプレイ入った人だ。

 俺も少しロールプレイした方が良いんだろうか。隠居した釣り師みたいな感じでさ。


「私はロミナ。ローマ字でrominaだ」

「俺は絆、妹と文字違いで絆†エクシードで繋がるからいつでも連絡ください。まだ材料はそんなに稼げてないけど、その内優先的に売るんで」

「それは助かる。解体スキル持ちは少ないからね」

「そんなに少ないんですか?」

「断言できる。少ないよ。特定武器で必ずドロップするなら良いんだが、ドロップ率はあまり高くないし、熟練度上昇速度も最低だと聞いたよ。更にお世辞にも強いとは言えない火力だからね」

「なるほど……」

「だから手に入った解体スキルのドロップ品はなんでも買い取るよ。幸いにも私は金銭的には困っていないからね。連絡を待っている」

「分かりました」

「では、また会おう」


 そう行って移動アイテム。一個1000セリンもするアイテムで飛んでいった。

 前線の鍛冶師は儲かっている様だ。

 さて俺も道は違うが一歩進むとしよう。

 そう息巻いて街からフィールドへモンスター狩りに行こうと思った瞬間、一つの露店に視線が向く。既にメインの商売人や製造スキル持ちは第二都市に移住を始めたそうなのだが、まだまだ第一都市で商売している人も多い。

 そんな中、露店商人の一人が売っている商品が俺の心を揺さぶった。


 ――船。


 人が二人位しか乗れない小さな手漕ぎボート程度の大きさの、船だ。

 売っているのは蒼い宝石が胸に輝く晶人の少女だ。ボーっと空を眺めている。

 第一印象はアルトと比べると覇気がない。

 装備はここ等の製造職が付ける一般的な安めの衣服。好みなのか、オーバーオールだ。田舎臭いという理由で着ている人は少ない。俺は好きでも嫌いでもないが。

 そんな事よりも船に視線を集中させる。

 これがあれば、海でもっと釣りができるのではなろうか。

 ずばり、欲しい。


「……なに?」


 ボーっとしていた少女が一言、ボソっと呟く。

 なんていうか、商売下手そうだな。


「これ、何セリンだ?」

「……4万」

「4万か! 良かった、10万とか言われたらどうしようかと思ったよ」


 今まで船が売っている所は見た事がない。

 下手をすればそれ位するかもしれないと不安だった。しかし4万セリンなら多少出費は嵩むけど、買えない額じゃない。


「じゃあ、4万セリン渡すな」


 交換ウィンドウに4万セリン入力する。すると置かれていたアイテムが姿を消し、相手の項目に木の船+3と表示された。


「+3なのか。結構良い物じゃないか」

「……一応材料は選んだから」

「あ、品質について気付いているのか」

「一部の製造スキル持ちは気付いてる」


 まあそうだろうな。

 単に釣りで魚を釣るだけの俺ですら気付いているんだから、気付いていて当たり前か。


「でも、4万をホイって出せるって、あなた、金持ち?」

「そうでもないさ。ちょっとしたあぶく金でね」


 空き缶商法の賜物ですよ。

 十分稼がせてもらったので、使う時には使う。


「……金持ちは皆そう言う。貧乏人は文句付けて来る。お約束」

「なんかあったのか?」

「別に……船が高いって言われただけ」

「高いのか?」

「材料と経費でそれ位」

「じゃあ文句言われる筋合いはないな。気にするだけ無駄だ」

「ん……」


 船というと木工系かな? どんなスキルがあるのか詳しく知らないが、そんな所だろう。


「オールも付けておいたから使うと良い」

「おう、ありがとう。船を新調する時はまた買うな」

「ん……」


 掴み所のない船職人だった。

 ともあれ船を手に入れた。

 街を出てモンスターを狩る予定だったが、俺は反転してまたもや海へ向かった。



検索サイトで鯨包丁と調べると剣士専用装備が(笑)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >そう行って移動アイテム。一個1000セリンもするアイテムで飛んでいった。 は、 ・そう言って移動アイテム(一個1000セリンもする)で飛んでいった。 か ・そう言って、一個1000…
[一言] はした金 ⇒あぶく銭 意味的にこちらですよね
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